お似合いの

 幸せそうだった。あまり口数の多くはない彼と穏やかで可愛らしい彼女は、微笑ましくて羨ましい夫婦だった。
 私は何も知らなかった。結婚してすぐに彼女が余命宣告をされて、引っ越したのも闘病の為だったこと。新婚生活はほとんどなかったこと。久しぶりに会ったときにはもう、闘病の最中だったこと。
 風の便りで彼女の死を知った。元々ふたりとそこまで親しくしていた訳でもなく、何もしなかった。
 偶然、指輪をしたままの彼と行きあった。隣には誰もいなかった。

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