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一人の時間が欲しかった…はずなのに

「今日、実家に泊まるから、ゆっくりしてね」

妻のその一言で、久しぶりのフリータイムが確定した。

普段なら、仕事を終えて帰宅したらすぐに「パパ見て!」「パパ遊ぼ!」と娘たちに囲まれる。お風呂の準備をして、ご飯を食べさせて、寝かしつけるまでが一日のルーティンだ。にぎやかで幸せな時間だけど、正直、一人の時間が欲しくなることもある。

だから今日は、完全なる自由。

「よし、せっかくだから普段行けない店に行こう」

ラーメン、焼肉、寿司…いろいろ迷った末に、前から気になっていた洋食屋に決めた。いつもは子どもがいると落ち着いて食べられないハンバーグとワインを注文する。

「あぁ…うまい…」

子どもと一緒だと、どうしてもファミレスや回転寿司が多くなるし、食事中も「こぼさないで!」「静かに食べようね!」と気を張り続ける。今日はそんな気遣いも不要で、ゆっくりと食事を楽しめた。

その後、久しぶりに寄った本屋では、じっくりとミステリー小説を選んで購入。普段なら、絵本コーナーで子どもたちの本を探す時間のほうが長いけれど、今日は完全に自分のための時間だ。

帰宅してからは、録画しておいたドラマを一気見。イヤホンをつけずに、大きめの音量で映画を観るのも久しぶりだ。

「これだよ、求めていた時間は…」

そう思いながらソファに身を沈める。

しかし、夜が深まるにつれ、静かすぎる部屋がやけに広く感じる。いつもなら聞こえるはずの「パパー!」という声も、娘たちの足音もない。

「あれ…ちょっと寂しいかも」

寝る前、ふと娘の枕を手に取る。ほのかにシャンプーの匂いが残っていて、なんだか安心する。

「明日、帰ってきたらいっぱい遊ぼう」

そう思いながら、娘の枕を抱きしめて眠りについた。

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