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愛を実現するマシーン

「犬は愛を実現するマシーン」とウェルベックは言っていたがまさにその通りだと思う。願わくばいっそあの子の好きな犬種になって盲目的に愛を注ぐマシーンになってしまいたいものだと思う。そうすれば会ったら尻尾を振り、四六時中そばにいたいと吠えたてても何も気に病むこともないだろう。
これは相手を想っての事ではなく至極自己中心的な願いにすぎない。僕はあまり人を好きになれないし、人との距離を詰められない人種である。人の言動が必要以上に気になるし自分も例外ではない。そのため針の短いハリネズミのように人と距離を縮めるには他人の針が気になり、また自分の針が刺さらないかも心配してしまう。もちろん友達も少ない。
当然盲目的に異性を好きになれるはずもなく、愛情表現も遠慮してしまう。彼女との何気ない会話も、ラインひとつも素直に受け取ることができない。嫌われないかと怯えてしまうし、言葉の裏の裏まで考えてしまう。じゃんけんだったら元の手まで2周して戻ってくるくらいに。
その度犬になりたいなと思う。彼女の「散歩」の言葉で条件反射で何も気にせず喜び、ただ自分の都合で愛情表現をする。相手がどんなに醜悪で性格が悪くとも。それがなんと幸せなことかと羨ましい。
生まれ変われるなら犬になりたいと毎晩思っている。しかし犬になったところで所詮自分はケージの中で一生できることのない飼い主を望む、シンデレラドッグになる姿しか想像できない。


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