田中子樹

袋に書いてある「どちら側からも切れます」がどちら側からも切れない人間です。

田中子樹

袋に書いてある「どちら側からも切れます」がどちら側からも切れない人間です。

マガジン

  • 【小説】白球を天高くかざせ乙女たち! 九家学院高校女子野球部

    【カクヨムにて好評連載中】https://kakuyomu.jp/works/16818093083030881140 主人公、志良堂太陽は、九家学院高校に通う男子生徒。この学校は昨年まで女子校で、今年から共学になったばかりの女尊男卑の世界……。太陽は中学時代に野球をしていたが、高校ではまだどの部活にも所属していない。  太陽は中学時代から憧れていた天花寺月に突然話しかけられ、野球部のコーチを頼まれる。天花寺月は九家学院の四天王の一人で、学校内で非常に高い人気を誇っていた。太陽は彼女の頼みを断れず、野球部のコーチを引き受けることに。  しかし、太陽が入った野球部は女子野球部で、部員はわずか二人。 さらに、部室を共有しているヤンキーの桜木茉地も登場し、部活動は波乱の予感が漂う。  太陽は憧れの天花寺月と共に女子野球部を立て直せるか……少年、少女の絆が描かれるラブコメ青春ストーリー。

最近の記事

第4球 自主練習

「マジか!?」 「マジです」  中条古都先生がグラウンドの前で固まっている。  よしっ、想定通り、彼女の視線は四天王のふたりへロックオンされている。 「──へっ」 「はい?」  あ、先生、口から涎が……。 「えへっ、えへへっ」  頭の中がどこかに飛んでしまっている。 「絵のモデルで放課後に残ってもらった美少女がふたり、勢い余ってあんなことやこんなことまで……ぐふっ、ぐふふふっ」  先生、心の声がダダ洩れですよ? ってか、この先生と天花寺さんや桜木さんだけにさせる

    • 第3球 九家学院の女王

       源水那さまの去り際の言葉が頭から離れず、昨夜はなかなか眠れなかった。その影響で今日は一日ずっと授業中に睡魔と戦う羽目になってしまった。  可愛いって、どういう意味なんだろう。まさか、こんなどこにでも転がっているような見てくれに対してではないだろうし、ちょっと鈍感系なキャラに見えたのだろうか? どんなに考えても答えが見つからない。  とりあえず、野球部のコーチを頼まれていることだし、放課後、野球部へ顔を出すことにした。まあ、コーチとは言っても、マネージャー的な役割もしなき

      • 第2球 俊足の麗人

        「約束が違うじゃないか!」 「では、もう1回勝負しましょう」  それ本当に言ってるの天花寺さん? っと心の中でツッコんでおく。もう野球部にかかわらないって相手は条件を飲んだのに野球部に入部しろだなんて……。でも、気持ちはわからないでもない。あの投球は磨けばおそらくとんでもなく凄いことになる。 「……じゃあ、そこの小動物とアタイが勝負するのはどうだい?」 「ええ、構いません!」  ちょっ、天花寺さん?  僕の意思はいずこへ?  すこし考えた末、桜木茉地が出した答えは、先

        • 第1球 不良少女

          「上等だ! 勝負でアタイが勝ったら、舎弟になってもらう」 「ええ、こちらが勝ったら、二度と野球部にかかわらないでください」  2年の桜木茉地へバットを突き出す天花寺さん。  あわわわっ。すごい展開になってきた。  勝負は、3対3の野球のルールで行う。ピッチャーとファースト、ショートのみで、キャッチャーは置かない。バッターは壁を背にし、壁にストライクゾーンを描く。ストライクゾーンの際どいコースの場合はロージンの粉の跡で判定するそうだ。内野の頭を超えたらツーベースヒットとな

        第4球 自主練習

        マガジン

        • 【小説】白球を天高くかざせ乙女たち! 九家学院高校女子野球部
          5本

        記事

          プロローグ

          「おねがい! 志良堂くん」 「あ……えーと、その」  どどどどどうしよう?  中学校からずっと憧れていた女の子が僕をじっと見つめている。  僕、志良堂太陽(しらどう てだ)の序列は「雑草」。  草食系男子にもなれないカースト最下層なため、女子と話すのは小学校の遠足以来だ。  そんな僕が、九家学院四天王のひとり、天花寺 月(てんげいじ つき)さんに話しかけられるなんて、もしこれが夢なら心臓に悪いから早く目を覚ましたい。 「志良堂くんって、八景シニアだったよね?」 「う、

          プロローグ