四万十の風
何故かずっと気になっていた四万十川に会いに行ってきた
会いに行ったと言って過言ではないだろう
想像以上だった
感動と興奮、そして恐怖
まっすぐにのびる沈下橋
足を踏み入れるたび
おへその下がキュンキュンする
前に進む自分の歩調と
右から左にかつて見たこともない水量が
かつて見たこともない幅で流れ続け
ノー味噌の理解が追い付かない
ゆっくり前進しているのに体が右から押し流される
しびれる
落ちても誰にも気づかれない
嵐の去った後のやや澄みかけた翡翠色の水
前からの車を橋のギリギリに立ってよける緊張感
背負ったリュックが車のサイドミラーに当たったら
穏やかに見えない川に吸い込まれる恐怖
アドレナリンが止まらない
映像ではないリアルな四万十川は
橋の上に立った者しか味わえない
ただ優雅に流れる美しい川なんかじゃない
山、空、川、鳥、魚
ちっぽけな人の命
息をしている実感
山の香りの神聖さ
何かいると思うのは自然なことだ
肌で感じる自然の驚異と美しさ
行ったものしか共感できない
どんな優秀なカメラにも
この雄大さは収められない
またすぐに戻ってくる
そう口にするのは自然なことで
何度でも会いに行きたくなる
初めて出会った川だ
身体の中の穢れをすべて流し去ってくれた四万十川
この余韻はいつまでもつのか
都会の闇に戻るのが怖い