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無重力時計



「実年齢より若く見える」
よく聞くそんな言葉とは
少し違う風に、私はその人の歳を見ている

その人らしい歳と言ったらいいのか


例えば、
ある40代の子育て中のママ
私にはこの人が高校生に見える
見かけが若く見えるって話じゃない
凛とした高校生
高校生ながら会社を立ち上げちゃうような
やり手の女の子
堂々とした佇まいで子供達に囲まれ座ってる


ある60代の子も孫もいる女性
私には10代くらいの少女に見える
子供っぽいって言ってるんじゃない
もう何十年も前から知ってるが
何だかずっと変わらない
嫌いなものは嫌い!ちょっぴり頑固な少女
アイロンのかけ方の丁寧さ
ねぎの切り方の細やかさにも
その頑固っぷりが現れる


ある30代の独身女性
この人は20歳前くらいだろうか
嘘が大嫌いでとっても反抗的
テーマソングは尾崎豊の「卒業」でどうだろう
一つ一つに納得できる説明が必要で
結構厄介な奴だ



その人その人に時計がある
その人の時計が、その人の音色を奏でてる
私はそれを聞いている

長針も短針も秒針も、
皆踊ってて動きだってめちゃくちゃ
地球周りに動くだなんて
規則正しいことやっちゃいない
数字だって何書いてるか分かりやしない
自由過ぎる時計なんだ


一方で
実年齢がどうであろうと
もうほとんど骨だけの
侘しい姿に見える人がいる

この人の時計の音だけは聞きたくない
この時計の音は
あの、のびのびとした踊れる人々を
その虚しい時計の中に閉じ込める

長針も短針も秒針も、死んでいる
同じ単調なリズムで
人を切り刻むために
永遠と腐敗の音を刻んでいる


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