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脱皮のこと



ある、ヒョウモントカゲモドキが
話す。



「オレの脱皮を不思議そうに見てるけど、
オレからしたら、お前らが不思議だ。
汚ねぇ面のままで、よく平気でいられるよな。

毎日お風呂に入ってるだって?
ははは、そんなんじゃ取れねぇよ。
笑わせてくれる。
あぁ、何て汚いし臭いんだ。おぇ。


オレは、脱皮する。
もう習性としてやってる。
習性としてだぜ?神々しいだろう。
そうしないとやっていけない領域。
お前には無理だろうな。

俺はこうやって、いつも新鮮なんだ。
あり得ないほど綺麗。


いつまでも古い皮はいらない。
食べちゃう。養分にしちゃう。
オレが丹精込めて作った皮だからな、
うまいんだ。

そしてまた、
それを食べてる時の俺の皮は
またいづれ、俺に食べられる。
食べれるようにせっせと準備してんだ。
丹精込めてな。


俺はいつも綺麗でいたい。
お前らみたいな不潔は、まっぴらごめんだ。

空気の澱んでる場所じゃ、
のびのび呼吸も出来やしねぇ。


そう言えば、俺の飼い主、
何かいつも遅くまで勉強してる。
研究の仕事をしているらしい。


あいつさ、髪ボサボサ気味だし
身なりも普通で面白くないんだけどさ

あいつは、まだ綺麗な方だぜ、
皆知らないけど。」



飼い主は、まさかこんなことを
言われているとは知らず、今日もただ黙々と、
研究の続きをやっている。





「そろそろ、脱皮の時間だ。」



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