温室育ちで、ごめんあそばせ。
ある、お嬢の言葉。
『箱入り娘?温室育ち?
そう言われたって仕方がございません。
あまりにも澄んだ空気の中で、
育ってしまったものですから。
てっきり、
大きく立派な豪邸や、品のよいお食事、
お膳立て抜かりない教育..そうしたものが、
綺麗な空気を作ると思っていました。
ちょっと、違っていたようでございます。
私は苦手なんです、汚いものが。
私は苦手なんです、汚いウソが。
汚いもので、永遠汚し合っている様が。
平気で汚いボールを人にお投げになって
それが心から面白いと思えているようで
ございまして。
何ともまぁお下品なことでございます。
全て、澄んだ空気で育ったせいなんです。
綺麗にするのが大好きで、
いつも綺麗なことで笑っていて、
綺麗な涙を流すことが出来る
自分の綺麗さに気づかないで
コツコツ地道に綺麗を磨いている
この人の嘘は、嘘の跡が綺麗なんです
そんな人が生きていて、その人の吐く息が
この土地の空気を作っているもんですから、
ここの空気は澄んでいるんです。
お陰で苦労します、よその空気が重苦しい。
毎日驚きです、汚れた空気の中、
どうして生きていけるのか、全く不思議でしょうがない。
ごめんなさいね、温室育ちで。
知らず知らず、こう育ってしまったんです。
なにも教えてもらったわけじゃないんです。
あまりにも空気が綺麗なもので、
それが当たり前の中育ってしまったんです。
この世に生を受けたその瞬間から、
この空気の中、育ってきたものですから。
温室育ちで、ごめんあそばせ。』