バリ島に魅せられて
南緯8度 神々が宿るこの島は
女性を妖艶にしていく
会話もかき消すほどの激しいスコールが
1日に数度 熱帯の森を叩く
風がオープンエアのレストランの
シャンパングラスを揺らす
成すすべもなく通り過ぎるのを静かに待っている
何もしない時間というものが
こんなにも長いのか…
スコールのあとの森は
木々が生き生きと生命力を輝かせ
じっとりとした湿気が肌に纏わりつく
アユン川を臨むアマンダリのラウンジで
珈琲の香りを楽しみながら
暮れなずむ時に溶け込んでいると
サヴォナの森に蛍が迷い込んだように
渓谷の向かいの家々に
一つまた一つとあかりが灯り始める
渓谷からはフォレストミストが立ち昇り
どこからともなく
ガムランの音色が聴こえてくる
スダップマランが香り立ち
優雅なひと時に包まれる
ゆっくりゆっくりと時が流れ
五感が研ぎ澄まされてゆくのを感じる
冷えたシャンパンを肌が欲しがっている