白神山地のブナに学ぶ「たおやかさ」
6月 青森の弘前駅から雑踏の中、レンタカーを走らせて
世界遺産の森 白神山地へと向かう
ブナの新緑を車窓いっぱいに受け止めて
自分のボルテージが上がっていくのがわかる
市街地を抜けると、フロントガラス一面に
ブナのBaby leavesのピュアでやわらかい黄緑色が
圧倒的なエネルギーで押し寄せてくる
体の中にキンと一本透き通った空気を感じる
ハンドルを握りながら
その生き生きとした生命力に、なぜか目頭が熱くなる…
そう、こういう時かぎって泣けてくるのは何故なのだろう?
南の広葉樹たちが年々葉を厚く、色濃くしていくのに比べて
ブナたちは毎年葉を落として生まれ変わるから
毎年赤ちゃんの葉っぱが
生き生きとした色をつけるのだという
そしてこの白神山地の森は
南の森の「力強さ」と違って
全てを受け容れてくれるような
どこか「受容」という言葉がぴったりの
やわらかく優しい感じを受ける
時には積雪が10㍍前後になるこの豪雪地帯で
なぜブナはその雪に耐えて1万年もの間 命のバトンを繋ぎ
1万7千haもの広大な森へと生長させることができたのか?
それは、重さで幹や枝が折れてしまう殆どの樹木と違い
ブナは樹皮の中に水分を蓄え
雪の重さに抗うのではなく、幹や枝をたわませることによって
雪が及ぼすあらゆる圧力を、しなり強さでかわし生き抜いてきたという
そう、「抗う」のではなく
「受け容れてそれを力に換える」たおやかさを備えていたから
ここ白神山地のブナ達は
そうして1万年という気の遠くなるような歳月でさえ
命を紡ぐことができたのだ
対立の先には疲弊が待っているけれど
受容の先には自分にも優しくなれる
やわらかいエネルギーが包んでくれる
何か問題が起きた時
「抵抗」するよりもむしろ
いったんは「受容」してしまった方が
楽に乗り越えられることもあるのかもしれない
翌日は「津軽富士」と銘打つ岩木山を周って
西津軽の鯵ヶ沢を経て
日本海側の十二湖へと向かった
十二湖の中でも特に青池は
ブルーのインクを混ぜたかのように
紛れもない「真っ青」だった!
折れた木々が湖底まで見えるほど
どこまでもどこまでも透明で神秘的なブルー!
時間と共に、光の角度によってその色を微妙に変化させる
青色が際立つのは、加えて岩盤の色が白いこと
周りがブナ林で、綺麗な水が終始流れ出てきていることなどが
そのミステリアス・ブルーを形成しているらしい
ここ白神山地のブナの「受容という知恵」や
水本来の「青」をそのまま表している青池
こうした手付かずの「ピュアな」自然に触れていると
たおやかでいて、力強く
脚色なく、本来の色を表現する
自分の命への真っ直ぐさに心を打たれる
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