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読書日記3『話術』徳川夢心

読書日記第3冊は徳川夢声著『話術』(新潮文庫)です。著者の徳川夢声さんは、いわゆる知る人ぞ知るという人物でしょうか。肩書は「活動写真弁師」ですが、残された業績はこれに限りません。今回は稀代の漫談家が名著の一端を紹介します。

雄弁術
昨今、「上手なプレゼンの仕方」や「話し方の上達法」などをテーマとした書籍は爆発的に増えました。本が売れない時代にも、このようなハウツー本に手を伸ばす人は一定数いるようです。にしても実際にこういう本は売れています。かつてよりも人前で話す機会が増えたのか、はたまた日本人が己の話す力に不足を感じ始めたのか。
著書から察するに、おそらく後者でしょう。日本人は外国人と関われば関わるほど自分の話す力に自信を持てなくなるようです。たしかにかつても雄弁家はいました。が、そういう人は現代でも稀でしょう。
この著書は、そんな私たちの「上手に話したい」という欲求を満たす架け橋になり得る内容です。

話の場面分け
私も教師というある程度の(いやむしろ高レベルな)話術を要求される仕事をしています。ゆえに、人一倍上手に話したいという欲求を持っているつもりです。
著者はまず、話術の手ほどきをする前に「話すこと」の本質を抉り、分類を経てから解説を始めます。その分類は以下の通りです。

キャプチャ

                          (著書より引用)
これだけでも著者の「話術」に対する拘りの強さが伺えます。
この図が示された後、分類ごとの解説に入ります。

おすすめポイント
巷で売られているハウツー本とは、はっきり申してレベルが違います。会話の内容は時代とともに刻々と変化していますが、この本の内容は現代にも通じる普遍性を感じます。
私が本文のなかで最も気に入ったポイントは、著者が長々と「話術」について解説した最後になって、大切なことは「人の話をよく聞くこと」と締めくくっている点です。いくら調子よく喋れる人でも、人の話を聞けないのではいけない。当たり前のことですが、こういう欠かせないポイントを最後に抑えてくれる著者の心遣いに嬉しくなりました。

こんな人におすすめ
・人前で話すのが苦手な人
・自分で自分を話し上手だと思う人
・話し好きな人
・仕事や学校で「話す力」を求められる人
・「話し言葉」に興味がある人

今は人と直接話す機会が減っていますが、この危機を脱した後に必ず「話したい欲求」が爆発すると思います。そのときに気持ちよく人と話せるように、ここで「話術」を向上させてみませんか。

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