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パトカーの石地蔵

先に紹介した反社のカシラに助(すけ)てもらう話と同時期のこと。

先輩巡査長がパトカーの助手席でお地蔵さんになった話。

ある勤務日、巡査部長の私と年上の先輩巡査長で警らという羽目に。

先輩、人は良いが実務はサッパリの人。趣味は色々なテレカ(テレホンカードという電話をかける際に利用できたもの)の収集を語らせたら自分の収集したものをみせるやらで話は尽きない。しかし、もめごと・喧嘩等が苦手。

日頃は駐在所でのんびりとやってる。

その日は地域当直員が不足なのか、先輩の守りが自分に回ってきた。この人と二人乗車で深夜パト、ここまででだいたいお察し

案の定、午前3時を回った頃、110番入電、スナックで客同士のけんか

無線で直行と告げ、パトカーを現場近くに止める。

ここまで運転及び無線対応も自分一人でこなす。先輩助手席に乗って固まっている。

えらいのと組まされたと思いつつ、パトカー降りて、現場スナックに向かう。

当然後ろからついて来ていると過信したのが大間違い。

知らずにスナックのドアを開け室内見たら、すでに収まっている様子、ところが制服見たら変わるんだな態度が、「誰がポリ呼びやがった?」と酔いの勢いでいきり立つアホがいる。

まあまあとなだめにかかる。

喧嘩の相手方と思われる方もアホに負けまいと余計にいきり立つ次第。

一人で二つのアホグループ同時に相手できる訳がない。

わあわあと収まりつかず、見かねたスナック店主が外に出てパトカーに行き、石地蔵に来るように大声で呼びかける

先輩石地蔵になり切り、不動の姿勢。

店主も困り果てた時、遅れてきたパトカーが到着。

どうにかこうにかアホグループ二つを引き離して事情聴取、この時もお偉い刑事当直様の御出座はなし、グダグダながらスナック店主も破損したものあるが被害申告せず、現場解決と報告。

パトカーに戻ると石地蔵まだそのまま、アハハ!こんなのとよく仕事したもんだ。

ひと言、気合を入れてやりました。すると消え入るような声で「すみません・・・」と悲しそうな顔で言いました。それ見てこの人にも妻子あり、腹が立つより可哀そうに思えてきたという話。

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