見出し画像

鑑識係員の初仕事

※画像はいらすとや様から

自ら隊兼管機を約3年で満期出所、中堅署の交番に赴任、地域一年経過する頃、刑事志望ということで刑事課長に鑑識が空いているから入らないか、鑑識から刑事になるパターンもよくあるとの甘言を弄され、二つ返事で鑑識係へ。

リクルートしてくれたこの課長もよく聞けば鑑識出身、刑事や他部門の古だぬき爺達に刑事をやったこともないのが課長になりやがって、調書一つもとれん奴が「粉でもふっとけ」(鑑識課員の出自を蔑んでよく使われたフレーズで指紋を検出する作業、アルミニウム粉末を刷毛につけ検出すること、作業以外できん奴という侮蔑語)と陰口をたたかれていたのを記憶している。


他の組織は知らないが警察組織では出自がやめるまでついて回る。

人は差別するもの、蔑むもの。


自分より下がいないと落ち着かない生き物なんですよ。

話を戻すと右も左もわからない鑑識係員、特にそれまで捜査の方には興味があったものの鑑識は全く関心もなかったため、資料整理、写真の現像、焼付(昭和の鑑識は所轄署で白黒写真は暗室にこもり、薬液を作り、温度調整を行い現像、焼き付け等を鑑識係員がやって当然でした、カラー写真は本部に送付、本部鑑識課写真係が現像焼付実施)、被疑者指紋の採取要領(黒インクを使用して)等、緻密な作業ばかり、これに加えてデスク仕事(統計関係)もあり、説明を聞いただけで職人仕事ばかりじゃないか。

自分のなかでは鑑識を腰掛にと安請け合いの二つ返事したのを後悔という、いつものパターン。

さて、徒弟として従事中の昼前、110番通報あり、古い日本家屋風長屋住まいの高齢独居女性がこの一週間、顔を見せないので訪ねてきたら何か異様な臭いがしてハエが飛び回っているという知り合い女性からの110番。


鑑識の師匠、主任さんから「良い初仕事が舞い込んだのう」とニヤリと私を見ながら一言。

ここまででおそらくどういう初仕事かは推定できるはず。

現場の部屋はかぎが閉まっていましたが鼻を突きさす強烈な悪臭が漂い、鍵を開け、部屋に入ると一週間以上経過した仏様がおられました。ハエが飛び回り、ウジ虫がわんさかわんさか湧いていて(本当湧いているという表現がぴったり)こりゃ、大変だ。です。

指示されたのはまず、ウジ虫の除去、ビニール手袋をはめ、多量の幼虫をバケツに掬い取る作業。バケツに何杯かのウジ虫を取りました。

その前後もほかの作業をしたはずですが、この作業をさせられたこと以外他に何をしたかは思い出せないくらい印象に残る作業でした。


ということで新任鑑識係員初仕事の思い出でありました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?