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いかなる花の咲くやらん 第6章第2話 時空を越えて

「ありがとうございます。不可解なことばかりで混乱しておりますので、とても心細く思っております。そのように言っていただけると大変頼もしいです」
「 ところでお加減はいかがですか」
「はい。あちこち打ち身のようです。あいたたたた」
「あー、まだ無理はなさらないように。突然、石の上に現れた時、 気を失っておられました。お体もあちこち打っておられるようです。」
「石。石って、これですか」永遠は手の中の石を見せた。
「えーえー。そうです。そうです。その石だと思います。不思議な石で大きさは違いますが、その形はまさしくその石です。お地蔵様にお供えしたおはぎが見る見る大きくなりまして、座布団くらいになりました。もとはおはぎだったものですから、食いしん坊の家長が大きなおはぎだと思って噛り付いたんですよ。おほほほ。ところがおはぎが石になっていたんです。その石の上にあなた様が倒れていらしたのです。そこで夫があなた様を担ぎましてこちらへ運びました。そうですか。また石が小さくなって、あなた様の手の中に。あなた様をお守りしてくださる、神様の御神具なのですかね。それを齧ってしまって、失礼いたしました。まだゆっくりとお休みになっていてください。手拭いがぬくくなりましたね。お取替えいたしましょう」
「ありがとうございます」(そうだわ。崖から落ちそうなところを、石が助けてくれたんだ。そしてここへ運んできてくれたのね。 やっぱりタイムスリップしてしまったのかしら)
「ところで、今は西暦何年ですか」
「 せいれき? せいれきとは何ですか。ただ何年と尋ねられましては 建久元年でございます」
( 建久って何。建久って何年前なのかしら。 どうしよう困ったわ。タイムスリップとか言っても分かってもらえないだろうなあ。前もすぐに戻れたから、今回もすぐに戻れるとは思うけれど・・・)永遠は不安を感じながら石を握りしめた。
 

次回 第6章第3話 「大磯の菊鶴」に続く


大磯町円台寺様に虎碁石が祀られています。


大磯町円台寺様は曽我物語の聖地めぐりに欠かせません。

著者撮影

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