「いかなる花の咲くやらん」第11話第1話「大願成就」
「起きろ、祐経。お前に父を殺された曽我十郎、五郎兄弟が積年の恨みを晴らしに来たぞ」
「よくも何の罪もない父を殺し、母を悲しませてくれたな」
「われら曽我兄弟が、仇討ちもできない腰抜けとお思いか」
「起きろ、起きろ。今こそ自分のしたことを、悔いるがよい」
「さあ、お前の流す赤き血で、地獄の業火で身を焼いている父を、成仏させてくれようぞ」
そう言うと、五郎が祐経の肩を刺した。祐経は肩を刺されて、目を見開き、しばらく兄弟をみつめていたが、そばにあった太刀を取って、起き上がろうとするところを、十郎が躍りかかってはったと打つ。五郎も躍りかかってはっしと打つ。早くも二人で二太刀ずつ切りつけた。
兄弟は「これで良し」と外へ出たが、五郎が立ち戻って、
「そうだ。とどめを刺さなかったぞ」
「どうして。とどめというのは不確かな時に言うものだ」
「いやいや、仇を討った時の決まりだ。後日、『曽我兄弟は慌てて、とどめを刺さなかった』と言われるのは心外だ。そう言って、立ち戻り、刀もこぶしも通れと三度ほど刺した。
部屋を出た二人は「以前は噂に聞いていたであろう。今は目で見よ。曽我の冠者たちがただ今、君のお屋形の内で、親の仇工藤祐経を討ってまかり出た」
参考文献 小学館「曽我物語」新編日本古典文学全集53
次回 第11章第2話 「頼朝、暗殺?このうつけがあ」 に続く
ついに大願成就しました。
幼い頃から15年以上思い続けた、父の仇討ちを果たしました。
あっぱれと、褒めてあげたいです。
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