けタたん ケたトん、 天狗の鳴きごえ 〈上〉
明方、天狗さんがいらっしゃった。
いらっしゃったとは さらりと言ったものの、
天狗さんとはめっぽう初めましてである。
その訪問のしかたは摩訶不思議であった。
天狗さんがいらっしゃったのに気がついて目を覚ました とゆうよりは
その前に 何か 余韻 のようなものがやってきた。
誰かに呼ばれたような 声も 感触も ないのに
まるで 体が磁石で動かされたかのように
力を入れずとも 上半身がすこぉし 起き上がった。
それで、まだ眠うていたい瞼を 重く重ぉく 持ち上げた。…ここは自力。
夢から覚めかけた、のとは少し違う。
例えるなら 夢の中でいつものお布団で目を覚ましたとゆう方がしっくりくる。
脳みそも体もまだ眠っていて 幻想のように景色だけが映る。
そこに いらっしゃった。
待ってました出番です△とでも言うように寝室の天井の上からそれは鳴り響いた。
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