はらだしかもしれない
「新桃太郎伝説」というロールプレイングゲームがある。スーパーファミコンのタイトルだ。個人的にはリメイクを切望している作品のひとつ。
仲間キャラクターに「はらだし」という人物がいる。人物とは言ったが妖怪だ。黄色い色をしたこんにゃくの化け物みたいなのに手足と顔がついていて、口からは舌が三枚出ている。名前に反して腹は出してない。というか、腹がない。そして、お世辞にもカッコ良い見た目とは言えない。
はらだしはストーリー進行のフラグをひとつ担っている。だから、必ず仲間にしなければいけない。だが、初めて遊ぶときは、必要な場面だけパーティーに入れて、あとはお役御免にする人が大半じゃないだろうか。彼の個人名が里吉であることを覚えている人は少ない。
ところが、このはらだしは、作中で最強クラスの仲間キャラであったりする。
まず、体がこんにゃくみたいだからなのか、物理攻撃が効かない。公式ガイドブックには16分の4で効かないという記述があるが、これは誤りで、実際には16分の16で効かない。つまり絶対に効かない。通常攻撃しか使ってこない敵キャラなら、まず負けることはない。
新桃には「かばう」のコマンドがあるため、はらだしが誰かをかばえば、四人パーティーのうち、二人は通常攻撃に対して無敵になる。攻撃を無効化した時の、なんとも言えないマヌケなSEに反して、とても有用な特性だ。
そして、やたらと強い術(ドラクエでいうところの呪文)を修得する。単純に敵全体に高いダメージを与える術のほか、相手の能力を下げまくった上で味方全体を回復するというチートじみた術まで使える。実際、使った時には異常な効果の高さを指摘するようなテキストも出てくる。
またゲームの進行や攻略には関係ないが、昨今のコンプラに反した遊び専門の術を覚えることもできる。これらの術は、基本的に他のキャラクターには使えない。
なぜこんな妙ちきりんな脇役キャラに最強クラスのステータスが与えられているのかは謎だが、そのあたりがまたこのゲームの魅力なのだ。
はらだしの奇怪さの一つに、レベルアップの仕方がある。
彼は次のレベル(このゲームでは段というが)に上がるまでに、他のキャラクターに比べて膨大な量の経験値を要する。敵をたくさん倒しても、なかなかレベルが上がらないのだ。もともと高いポテンシャルを持っているとはいえ、数値が増えないのはもどかしい。
しかし、いざ次のレベルに上がると、そのまま一気に五つもレベルが上がる。がんばってもがんばっても、ちっとも成長しない凪の時間をひたすら耐え忍び、地道に戦いを繰り返していれば、突然大幅に強くなるのだ。
何かがずっとうまくいかないときは、自分の成長パターンがはらだし方式なんだ、と信じてみることにしてみてはどうですか。