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利用者、他職種に伝わるケアプランの書き方とは?
はじめに
介護サービスの質を高め、利用者の自立した生活を支援するためには、わかりやすく効果的なケアプランの作成が不可欠です。
この原稿では、多職種連携やデータ連携システムの活用など、今後の展望についても触れていきます。
ケアプランとは
ケアプランとは、介護保険サービスを利用するために必要な介護サービス計画書です。
利用者がどのような介護サービスを受ければ自立した生活を送れるかを考え、介護サービスを組み合わせた計画書となります。
要介護者には「ケアプラン」、要支援者には「介護予防ケアプラン」があります。
ケアプランには以下の内容が記載されます:
利用者の希望
解決すべき課題
目標
具体的な介護サービスの内容
1週間のタイムスケジュール
サービス利用表
効率的なケアプラン作成の流れ
1. アセスメントの実施
ケアプラン作成の第一歩は、利用者の状態を正確に把握することです。
ケアマネジャーは利用者と面談し、以下の点を確認します:
身体状況
生活環境
本人・家族の希望
医療情報
アセスメントには、厚生労働省が定める23の課題分析標準項目に沿ったアセスメントシートを活用すると効率的です。
この際に留意すないといけないのは、尋問にならないように留意すること。
ご利用者の生活、ご家族のご支援状況を踏まえて情報を押さえていくこと。
テクニックが必要な点です。
2. 課題の明確化
アセスメント結果から、利用者の抱える課題を明確にします。
課題は具体的かつ解決可能なものにすることが重要です。例えば:
「歩行が不安定で転倒リスクがある」
「入浴動作に介助が必要」
「服薬管理ができていない」
3. ケアプラン原案の作成
課題に基づき、必要な介護サービスを組み合わせてケアプラン原案を作成します。この際、以下の点に注意しましょう:
利用者の自立支援を目指した内容にする
具体的なサービス内容、回数、時間を明記する
利用者の経済状況も考慮する
短期目標と長期目標を設定する
4. サービス担当者会議の開催
ケアプラン原案を確定させるためには、サービス担当者会議の開催が必須です。会議には以下のメンバーが参加します:
利用者と家族
ケアマネジャー
医師
介護関連スタッフ(介護職員、介護福祉士など)
リハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士など)
サービス提供責任者
福祉用具専門相談員
栄養指導員
会議の進行は以下の流れで行います:
開会の挨拶と参加者紹介
会議の目的説明
ケアプラン原案の提示と説明
各担当者からの意見聴取
利用者・家族の確認
内容のまとめと再確認
閉会の挨拶
サービス担当者会議では、多職種の視点からケアプランを検証することで、より質の高いプランに仕上げることができます。
5. ケアプランの確定と共有
会議での意見を反映させ、ケアプランを確定します。確定したケアプランは以下の関係者に共有します:
利用者と家族
サービス提供事業者
主治医
その他関係者
質の高いケアプランを作成するためのポイント
わかりやすい表現の工夫
専門用語を避け、平易な言葉で記載する
具体的な数値や状況を明記する(例:「10m程度の歩行が可能」)
図表やイラストを活用する
利用者中心の視点
利用者の意向を最優先に考える
利用者の強みや残存能力に着目する
自己実現につながるプランを立てる
多職種連携の強化
各専門職の専門性を活かした役割分担を明確にする
情報共有の方法と頻度を決める
定期的なモニタリングと評価の仕組みを構築する
ケアプランデータ連携システムの活用
ケアプランデータ連携システムとは
ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所間でケアプランの情報(予定・実績)をオンラインでやりとりするための共通基盤です。2023年4月から稼働を開始しており、国民健康保険中央会が構築・運用を行っています。
連携可能な書類
居宅サービス計画書(第1表、第2表)
サービス提供票(予定)(第6表、第7表)
サービス提供票(実績)(第6表、第7表)
導入のメリット
業務効率化
送受信時間の短縮
手入力の削減によるミス防止
職員の負担軽減
コスト削減
人件費の削減
印刷費・郵送費・通信費の削減
交通費の削減
情報共有の迅速化
リアルタイムでの情報共有
多職種間の連携強化
サービスの質の向上
導入方法
利用申請(国民健康保険中央会のサイトから)
クライアントソフトのインストール
電子証明書の確認・申請
電子証明書のダウンロード
導入に必要な環境
厚生労働省のケアプラン標準仕様に対応した介護ソフト
介護給付費請求に使用する電子証明書
ケアプランデータ連携クライアント
2027年導入予定の医療情報プラットフォームとの連携
介護情報基盤の構築
政府は、介護情報を多くの介護事業所やケアマネジャー、医療機関、利用者、市町村などの間で共有する「介護情報基盤」を構築する計画を進めています。
これは、医療・介護・健康等の情報を一元的に管理する全国医療情報プラットフォームの一部となります。
目的
利用者の利便性向上
効率的なサービス提供体制の構築
紙ベースのアナログなやりとりのデジタル化
情報共有のスピードアップや職員の負担軽減
共有される情報
要介護認定情報
LIFE情報(科学的介護情報システム)
ケアプラン情報
導入スケジュール
2026年4月から本格運用を目指しており(と言いています)、電子カルテ情報共有サービスは2025年1月から10の地域でモデル事業を開始し、本格版の提供は2027年度に始まる予定です。
介護情報基盤との連携によるメリット
業務の効率化
職員の負担軽減
情報共有の迅速化
多職種連携の強化
本人の状態に合った適切なケアの提供
介護サービスの質の向上
認定審査の効率化
要介護認定の調査票や主治医意見書、審査会書類、審査結果通知などの郵送が不要
認定審査にかかる時間の短縮
効果的なケアプラン作成
LIFEの情報、過去のケアプラン等の情報を活用
予後の可能性を利用者と共有しながら、より効果的なケアプランを立案
LIFEとの連携
LIFE(Long-term care Information system For Evidence)は、科学的介護の推進を目的とした情報システムです。介護サービスの質の評価と科学的介護の取組を推進するため、以下のような連携が期待されています:
データに基づくケアプランの作成
全国の介護データを参照した科学的根拠に基づくケアプラン作成
効果的な介入方法の選択
フィードバックの活用
サービス提供の結果をLIFEに送信
分析結果のフィードバックを次のケアプランに反映
加算算定との連動
LIFEへのデータ提出とフィードバックの活用で加算が算定可能
科学的介護推進体制加算などの取得
今後の課題と展望
課題
システム導入・運用の負担
小規模事業所や高齢介護スタッフにとっての負担
導入コストの問題
セキュリティ対策
個人情報保護の徹底
システムのセキュリティ強化
本人の同意取得
情報共有に関する同意プロセスの確立
利用者への丁寧な説明
展望
段階的な導入
介護の質向上とのバランスを取りながら段階的に進める
現場の負担を考慮した移行期間の設定
人材育成
ICTリテラシーの向上
データ活用能力の育成
制度の整備
財政的支援の拡充
法制度の整備
まとめ
ケアプランは利用者の生活を支える重要な計画書です。効率的かつ質の高いケアプランを作成するためには、アセスメントの充実、多職種連携の強化、ICTの活用が欠かせません。
ケアプランデータ連携システムや2027年に導入予定の医療情報プラットフォーム、LIFEとの連携により、今後の介護現場はさらに効率化され、科学的根拠に基づいたケアの提供が可能になるでしょう。
これらのシステムを有効活用するためには、導入の負担やセキュリティ対策などの課題に対応しながら、段階的に進めていくことが重要です。最終的には、利用者本位のケアを実現し、介護の質の向上につなげることが目標となります。
ケアプランデータ連携システムは、来年度1年間無料キャンペーンを開催予定で、その説明会が、3月14日に開催されます。お時間あるようでしたら参加してみてはいかがでしょうか?
https://www.mhlw.go.jp/content/001420950.pdf