見出し画像

いい時代になったもんだなぁ…(ある特殊性癖の話)


SNSの嫌な話ばかりするのも良くないので、嫌なこともあったけれど結果的にネットあって良かったなと言う思い出話をここで一つ。


巨大娘(Giantess)というジャンル

まず、あらためて説明することでもありませんが、私、瀬尾(瀬尾辰也)は背景グラフィッカーであり、同人屋であります。本業では以下のような絵を描くことを生業としています。

pixivなどで私を知った人は寧ろこういうイメージのほうが強いのではないでしょうか?

さて、本題に入りましょう。

私は女性キャラを巨大化させるのが好きだ。

とどのつまり巨大娘フェチなわけですが…巨大娘(私はSNSでは利便上”巨女”と呼んでいる)とは特殊性癖ジャンルの一つであります
。相対的に女性キャラがでかい。例えば女巨人とか、ヒロインや女幹部が巨大化したり、といったサイズ差を趣味あるいは性趣向とするジャンルです。詳しくはネット検索したほうが早いでしょう。表現や入り口は千差万別で、さらに他の性癖とも相性がいい。足フェチ、ローアングル好き、SM好き、被食、ロボット、戦隊モノ、人外…もうなんでもござれ。ゆえに私は定義にしばられないかなり自由度の高いジャンルと認知しています。近いものに、女性に対してこちらが小さくされる、縮小フェチというものもあります。両方まとめてサイズフェチと呼びます。

さて、この記事は、そうした作品を紹介する場ではないです。ただ自分が、この性癖ともに歩んできたという点を知っていただければと思い書き綴りました。


きっかけ

もともと、小学生時代から巨大娘好きに目覚めるような兆候はありました。レゴで作ったお城の横に着せ替え人形(私には妹がいますので)を立たせ、それを眺めては悦に入ったり、ゴジラ映画や洋画のスペクタクルものが好きだったりと。アニメでキャラクターが巨大化するシーンがあれば、破壊シーンあれば、それが強く記憶に沁みつきました。…時々誤解されるのですが、私はウルトラヒーローには全く縁がないため、そちらが入り口ではないです。

中学になりますと、思春期になり、露骨に異性を意識し始めます。いままで何となく読んでいた漫画や見ていたアニメのキャラクターに興奮を覚えると言いましょうか?オタクあるあるですね。で、ある時、とあるアニメシリーズ(OVA)にて推しキャラが巨大化し、敵を握りつぶそうとするシーンをみて、それが確実に性的興奮へ繋がっていると理解しました。巨大化しないキャラクターの巨大化した姿を小学生のとき以上に妄想するようにもなりました。同時に、怪力女子フェチ、脚フェチ、いろいろ併発しだしたのもその頃です。しかしシャイでむっつりスケベな私が、そんな性癖の歪みを、カミングアウトできるわけもく友人やクラスメイトには内緒にするしかなかったのです。

私は子供の頃から絵を描いていましたが、人物画は苦手でした。描くのは風景画ばかり(だから背景屋やってるんです…)。しかし、それでもなお、女の子が巨大化した姿、その妄想を具現化しようと、周囲に見つからないようにノートに落書し、そして恥ずかしさのあまりそのまま机の引き出しに封印する、を繰り返す日々。それが大学に入学まで続きました。

中学時代描いていたであろう画風の再現

大学時代

今日から大学生!俺は自由だぁぁああ!!性癖カミングアウトしちゃうよ!

ってならないっす…はい


私の通った大学は、その時代および学部の性質上、生徒でさえアニメやゲームとオタク文化を低俗に捉える、とどのつまりパリピーとアカデミックを組み合わせた悪い見本のような校風でした。秋葉原に買い物に行っただけで珍獣扱いです。もっともオタクに人権なんてねーんだよ!というほどではなかったし、変人だらけの学園生活は楽しく、それはそれで美味しい役回りでしたが…。

私の性癖を共有したい!仲間が欲しい!という欲求を救ったのはインターネットでした。年齢がバレますが、時代はブロードバンド回線、つまりADSLが普及し、ネットの敷居が急激に下がった時代。ピーヒョロロ~などというダイヤルアップの接続音とおさらばし24時間毎日定額でつなぎ放題。私は回線契約をし、インタネットの海に飛び込みました。

そしてある日、ふと何かを検索したんです。

「美少女 巨大化」←検索

でた…、求めていたものが。自分だけかと思っていた特殊性癖イラスト。さらに同じ性癖持ちの集い。巨大娘普及委員会…みよしの…神社もどき…G-zone…出てくる出てくる。なんてことだ…女の子が巨大化して、いけない場所に電車を挿入してるぞ!?

私は表向きはRPGツクールシリーズ用のドット絵素材を公開するサイトを運営しながら、裏でこっそり別名義を作り、巨大娘の関連サイトを漁りました。当時は半年ROMれと言われた時代ですから、じっくり慎重に閲覧し、そしてある日、勇気を出してそれらに併設された掲示板に絵を投稿しました。


当時の絵


ニューフェイスが来たと沸き立つ掲示板。私の性癖絵に送られる生まれて初めての感想! これほど嬉しい瞬間はなかったものです。今度は「巨大娘とふたなりって…いいんでしょうか?」と恐る恐る絵を投稿…。すると、「いやいや全然ありですよ!そういうネタで描いてる人もいますから!」とコメントが。私はまたもや嬉しくなりました。それからしばらくは、表にカミングアウトとはできないまでも、そういった場所の入り浸るようになりました。

しかし残念なことに、マイナージャンルですから、それはもう、マイナーあるあるな嫌な思いもしました。これは以前に書いた別の記事にある通りです。結局、対人トラブルで、巨大娘というジャンルからしばらく距離を置きました。狭いジャンルにおける同業同士の足の引っ張り合いや、嫉妬、自身の定義こそ絶対とする面倒なオタク。自身も巻き込まれ、うっかり正論で反応してしまい、結果ありもしないことを吹聴されたりもしました。ただ、それはどこへ行ってもあり得ることです。激情家でありスルースキルがない私は立ち回りが下手でした。それでもなお、一部の方は私とのコミュニケ―ションを継続していただきました。



東方時代

わたしは東方というジャンルに大変恩があります。私のような画力の高くない人間でも、同人即売会に参加し、同人誌を並べ、肯定されている感を与えてくれました。創作を通じてできた仲間もいました。調子付いて失敗したりもしました。時には仲間と一緒に外出し飲んだり食事をしたりとリアルの面でも充実していました。しかしながら、当時の東方は独特な気風があるといいますか、原理主義的な自治厨の発言が幅を利かせるという排他的な気風があり、つまり巨大娘等の特殊性癖といった、原作にない要素を創作に導入するともれなく面倒くさいファンに絡まれ掲示板に晒されるというリスクがあったのです。例えば公式に巨大化するキャラは伊吹萃香くらいでしたから、安易に推しキャラを巨大化させたりはできませんでした。巨大化させたい欲をこらえながら、周りを機嫌を伺うような同人を描いていたと記憶しています。

※実際は一部のコミュニティによるローカルマナーのようなものでした。構わず己の欲に忠実に同人活動をしていたサークルも多く、露骨な原作無視でもない限りは、実は自由度が高いジャンルだったのです。ようはノイジーマイノリティを拾ってしまったんです。

ある日、東方キャラの一人、永江衣玖の巨大化絵を描いたところ、私は掲示板で攻撃されました。愛のない二次創作。そう言われたのを覚えています。しかもその掲示板は東方関係ではなく、巨大娘作品をアップロードできる場所に設置してあった掲示板でした。ショックのあまり巨大娘というジャンルからより距離を置くようになりました。

問題の絵(古いHDDから修復したデータゆえ、破損してます)

Pixiv時代


時代はpixivやニコニコ動画が登場してしばらく経ったころ。かつて排他的だった東方は急速にカジュアルになり、大勢の新規層が流入し、あれこれ口うるさかった人間の声は東方バブルと言わんばかりに肥大化したジャンルと人の波にかき消されたのでした。ざまーみろ。しかし、それでもなお性癖カミングアウトには至らなかったのです。pixivにはランクキングシステムがあり、これが非常に良くなかったのです。サービス開始すぐにpixivを始めた私はランキング常連でした。当時は物珍しかった風景画をアップすればランキング上位に食い込めたのです。ところが、ランキング常連者、通称ランカーを妬み言いがかりをつけて匿名で叩くというムーブがすぐに起きました。当然、私もやり玉にあがりました。匿名掲示板に晒され、その際にpixivにはあげてない、表は一度も出してないはずの古い巨大娘イラストを晒され、「こいつこんなやべーやつだからwwぷげらwww」という感じで馬鹿にされました。気の弱い私は疑心暗鬼になりました。私が別名義で秘密裏に描いた絵を知ってるような人物は誰だ?と様々なものを疑うようになりました(どう考えても身内です)。

あるとき勇気を出して十六夜咲夜が巨大化する同人誌を描きました。しかし、それでもなお、前述のショックから立ち直れず、巨大娘というカテゴリーをさけるように、これはそっちと関係ないから!という態度をとり続けました。

C77頒布「COLLATERAL JUNKIE 2」より



Twitter

そういった流れが変わるのは、あるサークルの東方キャラ巨大化合同に参加した辺りからでしょうか。この流れに乗るしかない!出したもの勝ち!私は悟ったのでした。Twitterが登場してから早数年、参加者の宣伝もあり、巨大化同人誌は認知されました。Twitterはオープンさが売りであり、一度拡散されれば遠くまで届くというメリットがあります。それは私がずっと望んでいた、同類だけの内輪サイクルからの脱却が現実味を帯びてきたという意味でもありました。

当然、残念ながらそんな時代でも私に悪口を言う人間やデマを流す人間はいました。パフォーマンス的に性癖を宣伝する私は一部の人間には目障りだったのでしょう…。しかしそれ以上の恩恵がTwitterにはあったのです。

それからというもの私は自身の創作物に巨大化ネタを躊躇なく挟むようになりました。風景描きだけど不意に女の子巨大化させてくる人。そう認知されてきたと思います

「大島風」
例大祭14「東方巨大化本総集編」



完全カミングアウト

同人即売会へのモチベが下がり、サークル配置も壁から島中へと戻ったころ、艦これブームも落ち着き始めました。その後、新しい2次創作ジャンルへの移行が上手くいかなかった自分は、むしろそのおかげでかなりマイペースに創作をするようになりました。それが良かったのかもしれません。また、かつて苦手だった人物画も、よやく多少の自信をもって世に送り出せるようになったのも大きいかと思います。幾度か巨大化ネタもSNS上でバズるようになり、何かに追いたてられるように創作するのではなく、好きなものを正直に描こうと思うようになりました。ある日、同人即売会の後の打ち上げで、ある女性向けサークル主から質問を受けました。「あなたの巨大な女の子が好きという性癖、ネタですか? 本気ですか?」と…。私は「本気です」と答えました。彼女から返ってきた言葉は意外でした。「良かった!安心しました!」と。理解されたかどうかはともかく、自分の性癖と正直に向き合うことを自身のジャンル以外の人間に肯定されたのは初めてでした。この出来事は私を勇気づけました。

「巨大大和」初出2021年1月

そして現在

もう開き直りです。風景絵描きってことすら忘れられてんじゃないかってくらい巨大な女の子を描く人になっていました。私が非常勤をしているある専門学校では生徒にバレていたりと、もう隠す方がバカバカしい。そんな状況です。その生徒曰く「自分と同じ変人で良かった!背景の先生だから気難しくて、性癖とかカミングアウトしたら嫌われちゃうかと思ってました!」…と。私はまたもや救われた…。

墓から目覚めた古の女王(巨大)

私が特殊性癖に思うこと…嘗て私はカミングアウトできないことに思い悩んでいました。孤独だったし、勇気もなかったんです。私がネット検索で同類を見つけたときに感じたのは「許されている」という感覚でした。とくにSNS、Twitterにはこの点については感謝するしかないです。

あるとき、プロフィールに「中学生」と書かれた人物にフォローされました。私のアカウントは性描写を含む画像も多いため、未成年がフォローするのはまずい!と、ブロックしようと考えましたが、その前に彼の投稿を眺めてみました。彼は、年相応の拙い画力で「ふたなり」の絵を描いていました。ふたなり…中学生でふたなりに目覚めるとは将来有望!私はふたなりも描きますからから、何かの偶然で私を見つけたのでしょう。彼の投稿からはようやく「理解者(私)に出会えた」といった趣旨の投稿とともに、いかに学校で孤独であるかという雰囲気が痛いほど伝わってきました。彼が、中学生であると正直に言わず、エロ本を親に隠れて読むかの如く誤魔化していたらブロックせずに済んだのに!…しかし彼は、確実にネットの片隅で自身の性癖が世界でただ一人でないという救いを得られたのかもしれません。今はネットのどこかでふたなり絵描きとして活躍しているかもしれません。

ですから、私がカミングアウトすることで、「許されている」感をあたえ、カミングアウトできずに思い悩んむ人が一人でも勇気づけられれば…という思いでいます。昨今は巨大娘をテーマにした商業作品も増え、一般認知度も上がり、意外な人が巨大化絵を投稿することも多く見かけるようになりました。いや、もう…なんだこれは!?信じられない!天国じゃないか!(歓喜)

これが本当の「多様性」だよなぁ!


いいなと思ったら応援しよう!