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なぜ人工衛星は落ちないかー放物線運動はウソ?ー
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なぜ人工衛星は落ちないのか?そんなの知ってるよ!という方、ちょっと待ってください。きっと新しい発見があると思います。
どこまでも平らな平面
まずは私たちの日常感覚からスタートしましょう。私たちが普通に暮らして観測する限り、地面はずっと真っ直ぐ、平坦に続く平面です。
皆さんは高校で、ものを投げた時の運動は二次関数になると習いませんでしたか?関数を知らなくても、例えば斜め上にボールを投げたら、上に山なりの放物線を描くことは想像できると思います。
![スクリーンショット 2021-09-19 12.15.05](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62242290/picture_pc_e65a3bb8fd14b5ee76a24a332effe37e.png?width=1200)
同様に、最初に投げる向きを地面に並行にして投げても、放物線を描いて徐々に落ちていきます。そして、最初に投げた時の速度が早ければ早いほど、遠くまで飛ばせます。人間がボールを投げてもせいぜい100 mとかそこらですが、銃弾はもっとはるか遠くまで飛びますよね。
さて、最初に投げる速度をどんどん速くすれば、いくらでも遠くまで、そして限りなく地面に並行にボールを飛ばすことができます。しかし図中の弾丸の軌跡を見たらわかるように、いつかは必ず落ちてしまいます。どんなにボールが速くても、それは横にうんと引き伸ばされた放物線運動には変わりがないからです。
しかし地面は曲がっている
しかしボールの速度を上げて着地点が1000 kmとかになってくると、ボールは異変を感じ始めます。なぜだか予想に反して、なかなか着地しないのです。実は地面も一緒に”落ち始める”のです。平坦だと思っていた地面が、なんと曲がっているのです。下の図で、地面がわずかに曲がっているのが分かるでしょうか?
![スクリーンショット 2021-09-19 12.15.15](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62242330/picture_pc_a55fb6dc7b0e2aeb5f40ffd5c53e7eba.png?width=1200)
どんどん最初のボールの速度を上げて、遠くまで飛ばせるようになると、地面が”落ちる”ペースが、ボールが落ちるペースに追いついてきます。これが完全に釣り合ったとき、ボールは地表と永遠に並行に運動するようになるのです。そして落ち続けた結果、最初にボールを投げた場所に戻ってくるのです。
この時の運動を、曲がった地面からずっと遠く、つまり地球の外から見ると、なんと地球が丸く、その周りでボールが円運動を描いていることに気がつくのです。実は円運動は、放物線運動と全く同列のものだったのです。
Tips: 一般相対性理論
このような道筋で考えると、地球が丸いというのは大変驚くべきことです。普通、2次元というとほとんどの人は、平坦な紙面やパソコンの画面などを思い浮かべると思います。しかし地球は、どうやら地上をずっと真っ直ぐ進むと空間が知らないうちに曲がり、なんともとの場所に後ろから戻ってきてしまうのです。実はこの「空間が曲がる」という考え方は、アインシュタインが作ったことで有名な一般相対性理論でコアとなる概念です。重力を時空の曲がり具合で表すことによって説明する、幾何学の理論なのです。一般相対性理論の場合、時間+3次元空間の曲がり具合を計量gと呼ばれるもので表現します。
ものを投げた時は放物線運動では?
しかしここで疑問が湧きます。ボールの軌道は放物線、すなわち二次関数ではなかったのか、と。一般的な放物線と円運動とでは、だいぶ全体的な形が異なります。いったいどうしてでしょうか?
まず正解を言うと、最初から放物線運動というのは厳密にいうとウソだったのです。そもそも地球のような球体から重力を受ける物体の軌跡の形状(=関数のタイプ)は、無限遠に飛んでいってしまわない場合、楕円に限られます。
![スクリーンショット 2021-09-19 13.11.29](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62242362/picture_pc_3869a94ac73959be23f1c7684efa8c1e.png?width=1200)
それではなぜ私たちは楕円軌道を放物線=二次関数と勘違いしてしまったのでしょうか?実はこれは、ある曲線の形状を見るときに、どういうスケールでものを見るかが関係しています。
実は、一般的な、連続的で急に折れ曲がったりしないようななめらかな曲線は、うんと拡大すると、どんどん二次関数に、そしてしまいには直線になってしまうのです(数学の言葉で言うとテイラー展開)。これは、赤道を遠くから見ると円なのに、近寄りすぎた人間から見ると直線に見えるのと同じです。徐々に拡大すると、関数の形がどんどん単純になり、しまいには直線に見えてしまう、その前段階が二次関数なのです(注)。
応用上は、少なくとも日常生活において、空気の抵抗などによる軌道のずれの方がはるかに大きく、二次関数と楕円の違いを気にする必要は全くありません。あるいは高校では、考えたいスケールでは地面が十分に平坦で、どこでも重力が一定だという仮定を置くため、正しい答えとして二次関数が出てくるのです。放物線運動についてこの仮定が破綻するのは、人工衛星やミサイルのように、地球の曲がり具合が見える場合に限ります。
(注)数学的に確認したい方へ。楕円、(x/a)2 + (y/b)^2 = 1を考えると、y= b*sqrt(1-(x/a)^2)、x<<aの時、y~b(1-(x/a)^2/2)。x=a*cos(π/2 +δ)とすれば、地上付近のボールの座標はx~-aδ (δ<<1)なので、x<<aなのは納得できると思う。
国際宇宙ステーション (ISS)の中は無重力ではない
最後に付け足し。国際宇宙ステーション (ISS)の中でふわふわと人が浮いているのを見て、「宇宙空間では(地球から離れているため)無重力だ」と思っている人が若干ながらいるようですが、これは間違っています。
ISSは地表から400 kmの高さにあります。しかし地球の半径はおよそ6000 kmもあります。なので、地球の大きさを考えたら、ISSは地表スレスレのところを飛んでいるのです。ですから、そこに働く重力は、私たちが感じるそれとそんなに大きくは変わらないです。
それではなぜ宇宙飛行士が(ISSの中を)ふわふわと浮いているのか?それは同じことですが、二つの表現ができます。一つ目は外から見た場合で、宇宙飛行士もISSと一緒にほぼ同期して、地球の周りを回っているからです。従って、宇宙飛行士とISSの位置関係は相対的に変わらず、ふわふわ浮いてるように見える。二つ目は宇宙飛行士から見た場合で、ISSも宇宙飛行士も、重力と遠心力が釣り合っているため、無重力のように感じる、という事です。
いかがだったでしょうか。物理に詳しい人もそうでない人も、それなりに楽しめたとしたら幸いです。
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