2024年富士ヒル DNF雑記(16)
◆脅威の雨
(1)下山バスを待つ参加者さん達
第2関門こと、大沢駐車場を出発したのが12:00頃。
時同じくして、降り出した雨はあっという間に強くなり、
容赦なく、下山中の参加者さん達に降り注ぐ。
更なるバス下山者を回収するため、五合目へ向かった、
私の乗車したバスがようやく目的地に着いた時、
時刻は12:30を過ぎていた。
私みたいに途中でリタイアになってしまった人と違い、
フィニッシュはしたものの、
体力的にしんどい、
はたまた機材的な理由など、
とにかく「自力では下山が難しい人」が、
5合目で回収される算段のようだった。
本来は、自力で駆け上がるはずだった、
もとい、
なんとか登り切るはずだった
ゴール前のラストの登り坂をバスが登り切った。
いざ、下山バスを待つフィニッシャーたちを乗せるべく、
バスが「ぐるり」と道なりに進むと、
目の前には、何とも言えぬ光景が。。。
なんと、
下山バス、及び機材回収トラックを待つ参加者さん達が、
側(かたわら)に自転車を保持し、
雨に打たれたまま列を作って待機しているではないか!
いろんなトラック、バスが入ってくるだろうし、
その動線を塞がぬようになのか(?)
この地点で
バス、及びトラックの到着を今しばらく待って頂くよう、
きっと運営側からの指示なのであろう。
皆、自前の防寒具、
そしてレインウェアをいくらか着込んではいると思われるものの、
弱まる気配のない雨に、
なす術なく、
悲しいかな、さながら濡れ鼠である。
(いや、レインウェアが機能しているか、、、)
大沢駐車場から5合目までの距離は約7km弱。
五合目からの下山組が、
「屋根のあるところで待機」とならなかったのは、
私の乗ったバスが、
もっと早くに到着する想定だったのだろうか。
それとも、物理的に雨宿りできる場所が無かっただけなのだろうか。。。
はっきりいって、ただただ寒そう。
6月上旬の富士山5合目は、
雨が降っていなくてもかなり冷えると思う。
それが、そんな中
雨具、防寒具があったとしても、
約30分もの間、
ただただ雨の中にいたらどうなるものか。
どれだけ下山バスの到着を待ちわびたことだろう。
想像に難くない。
「うわぁ・・・。」
これは、、、
いかんともしがたい状況を、
バスの中から、ただ眺めることしかできなかった。
そんな皆さんの脇をバスは通過し、
一旦、駐車スペースへと停車した。
荷物受け取りエリア2(第二駐車場)だったと思う。
(2)仮設トイレへ走る
駐車場に一旦バスは停車した。
これから五合目からの下山参加者さん達の
自転車を順次トラックに収容した後、
ご本人達がバスに乗車してくることであろう。
しばらくは待機時間となる。
そう察したバスの乗車メンバのお一人が、
「すみません、トイレに行ってきたいのですが・・・」
そう運転手さんに相談していた。
「発車まで、もうしばらくかかると思うのでかまいませんよ。
ただ、このバスに戻ってきてもらう必要があるので、
このバスを覚えておいてくださいね。」
そういって、
バス前面に貼ってある表示を指さした。
「わかりました」
そうして、
弱まる気配のない雨の中、
仮設トイレへと走って出て行った。
「あの、、、私もトイレに行ってきてよろしいでしょうか」
実のところ、限界ではないものの
かくいう私も、多少トイレに行きたいなと思っていたところだった。
このバスの、
五合目まで登ってきたスローペースを考えると、
この後、下山までにいったいどれだけ時間がかかるかわからない。
そう考え、
「これは渡りに船」とばかり、
完全に先人に便乗した形で、運転手さんにトイレ希望を告げた。
「はい、わかりました。
このバスに戻ってきてくださいね」
運転手さんは
そう、私にも同じことを告げた。
まだ出発までには、だいぶ時間があると思われるが、
それでも急ぐに越したことはない。
雨の中、少し走ると
仮設トイレがいくらか並んでいたので、
その中の一つに飛び込んだ。
「ふぅ・・・。」
自分で言うのもなんだが、
今まで濡れることもなく、
ぬくぬくとバスの中に居た私なんかは
まったく呑気なものである。
用を足し終え、
また小走りで元のバスへ戻る。
もちろん傘などない。
わずかな時間とはいえ、その間でもいくらか濡れてしまった。
我々、第二関門リタイア組は、
悲しいかな、
この五合目では下山荷物を受け取れないことになっており、
仕方なく、レース中もバックポケットに入れていた、
ハンカチ大のミニタオルで、表面の水滴を拭った。
急いで戻ってきたものの、
やはり自転車の収容には時間がかかっているようだった。
私が戻ってきた後からも、
同バス内から、トイレ希望者が数人続いていた。
それだけ、自転車の収容作業は
時間のかかる作業のようだった。
13:00になっても、
自転車の収容作業はまだまだ継続中であった。
次から次へと、
トラック内へただ積み込むだけで良いのであれば
話はまた違うのであろうが、
一つ一つ、皆さんの大切な愛車、
そして、お高い自転車につき、
そうはいかないのが実情であろう。
こんな雨さえ降っていなければ、
手放しで有難い話であるのだが、、、。
しかしながら、
外の皆さんは、都合、約1時間もの間、
ただでさえ気温の低い5合目で雨の中にいたことになる。
そうか。
あらためて、こうして時間を調べてみると、
雨が降り出してから1時間近くも経過していた。
正直内心、撮影するのもためらわれたのだが、
野次馬根性というよりは、
「この様子は記録しておかねばならないのでは、、、」
というような気持ちにかられ、
高みの見物状態の中、申し訳なくも撮影させてもらった。
とはいえ、静まり返るバスの中、
これ以上はスマホの撮影音を鳴らすのもためらわれため、
以後、下山完了までの写真はない。
とにかく、
ただただ言葉が出てこない。
そんな光景だった。
(3)外では回収作業継続中も、先行して下山開始
あまりの光景に、
既に頭は「ボーーーっ」としてしまい、
周りの様子について、
逐一観察出来ていなかったのだが、
トラックへの自転車の回収作業が継続されている中、
いよいよ、
一人、また一人と
五合目からの合流組の皆さんが、バスへ乗車してこられた。
乗車するバスについて、
どう割り振りをしたのかはわからないのだが、
(これは私の推測であるが)
おそらく、
先に自転車の回収が済んだ人から、
長らく待機させてしまっている、
この第二関門の収容バスへ先に案内したのではなかろうか。
そんな気がした。
「すみません。
暖房を最強にしてください・・・」
乗り込み際に、
運転手さんへそうお願いする人もいた。
それだけで、
外での待ち時間がいかに過酷であったことかを物語っているようだった。
追加で乗車してこられる方たちは皆、
乗車の際、
「わざわざレインウェアを脱いでから乗車する」
そんな余裕なんてものはあるわけがなく、
バスに乗る際はレインウェアを着たまま乗車して、
各自、
バス内でレインウェアを脱ぐなり、
持参していたタオルで拭くなりしたのだと思うが、
なかなかその対応も難しそうに見えた。
そう考えると、
他のバスのシートが、
事前に雨を想定してビニールがかけられていたのは、
こうして後から結果論的に振り返ると、
雨予報の中、ある意味万全の準備ともいえる。
バス会社さん的にもシートが濡れなくて済むし、
参加者さん的にも、疲労困憊の中シート濡れを気にせずに済む。
是非とも、来年以降は全てのバスが、
雨を想定して準備されていることを願うばかり。
そう思った、バス内の光景だった。
「お隣よろしいでしょうか?」
何人目かの方が、
前の方の席に座っていた私に、
律儀にも一声かけてくれた。
「もちろんです。どうぞどうぞ。
雨の中、大変でしたね。。。」
そう伝えると、
「ありがとうございます。
レインウェアのおかげで濡れてはいないんですが、
とにかく身体が冷えてしまって・・・。」
そんな会話をし始めたかどうかの、
そんな頃、
(具体的な時刻はわからないが)
突如、バスが発車することになった。
外では、まだ自転車の回収作業は継続中のようであった。
「あれ!?いいの?」
そう感じたが、バスは出発した。
現在残っている人は、また別のバスに割り振られるのだろう。
結果的に、私が乗車していたバスに、
5合目から追加で合流した人は
10人もいなかったのではないだろうか。
(正確に数えられてはいないので、感覚ですが)
なにせ、早くに下山出来るのは、
私にとってはありがたい話ではある。
そうか。
出発か。
さらば、五合目。
来年こそは自力で、
そしてブロンズタイム内で到達してやるからな。
そう思いつつ、
いくらか五合目からの下山メンバーを乗せたバスは、
ようやく、ようやく、
来た道を下って行り始めたのだった。
ーーーつづくーーー