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2024年富士ヒル DNF雑記(14)

2023年初参加時のボロボロ雑記に引き続き、2024年「まさかのDNF」をしてしまった人の、ダラダラ雑記です。

◆下山バスが出発するまで

(1)たこ焼きを食す

リタイアの手続きを済まし、
自転車を預け、
そして計測タグを返却したオイラ。

「出発の時間まで、まだだいぶあるので、
 どうぞ好きに、自由にしてください。
 一応、乗車頂くバスはあちらのバスですので。」

そういって、
わざわざ駐車場の入口付近に停車していたバスへ案内してくれた。

「こちらの方、元気なんだけど、
 自転車が故障しちゃって、リタイアされましたんで」

そういって、
バスの運転手さんにも軽く紹介してくれた。
重ね重ねありがたい。
運転手さんにも、

「どうされますか?もう乗られますか?」

と聞かれたので、

「トイレに行ったり、
 少し休憩してきたいと思うのですが・・・」

そう伝えると、

「そうですか、どうぞどうぞ。」

そんな感じで、
とてもとてもフレンドリーに対応してくださった。


ふぅ。
そういえば、大沢駐車場に来たのは初めてだったな。

昨年も合わせて、
過去に試走2回、本番1回。
大沢駐車場を「通過」したことはあっても、
止まった経験がなかったので、
ひとまずブラブラとしてみようかなと。

まずトイレに行くと、(たしか)暖房がついていた。
流石は高地のトイレ。

そして、ふと気づくと、
意外とトイレを利用している人が多い印象だった。
次から次へと人がくる。
思いのほか、
こんなにも休憩取っている人がいるんだなぁ
と知った。

まあ、そうか。
17.2km地点。
確かに、トイレにも行きたくもなる頃合いかも知れない。


手持無沙汰だし、何か食べるか

次に、少し気になっていたので、
売店を覗いてみることにした。
店内には店員の女性が一人
そして、お客さんが一人いた。

見ると、そのお客さんは参加者で、
なんとアメリカンドッグを頬張っているではないか。

富士ヒルの最中に、
携行してきた補給食じゃなくて、
売店で買ったアメリカンドッグを食す。

「アンビリーバブルや!
 アメイジングや!」

なんて自由なんだ。
富士ヒルのまっ最中に売店で物を買う
って。
想像したこともなかった。

目標タイムをクリアできるかどうか。

誰もが皆、
自分の目標タイムに向けて一分一秒が惜しい
そんなトライをしているはずだ

勝手に思い込んでいた私にとって、
アメリカンドッグ、
なかなかのインパクトであった。

ああ、本当に参加スタイルは
人それぞれなんだなぁ

と感じた。
タイムだけにとらわれない参加スタイル。
楽しみながら、休憩しながら、
最後にゴールに到達出来ればOK。
いいね。
皆それぞれの富士ヒル。
いやはや、素晴らしいじゃないか。


アメリカンドッグ選手に
心揺さぶられつつも、
メニューをちらりと眺める。
よし、決めた。

「えーっと、、、
 とうもろこし を1つください」

そう伝えると、
店員さんは、ワンテンポ置いて
少し申し訳なさそうに
こう言うのだった。

「コレを温める感じになりますけど、
 よろしかったでしょうか・・・?」

と、
真空パックに入った
だいたい半分くらいにカットされたサイズの
トウモロコシを見せてくれた。
価格はたしか500円だっただろうか。

あ、これは、、、
同じようなものを
近所のスーパーで見たことがあるような、、、

似たようにパッケージングされた
トウモロコシ商品に見覚えがあり、直観的にそう思った。

売値が500円で、
既製品をレンチンしただけのトウモロコシだと、
正直な話、がっかり感は確かにある。
高速道路のサービスエリアよろしく、
せめて、
しょうゆの香ばしい匂いのする、
ロースターみたいなので、
焼いたとうもろこしを期待してしまう。

いやいや。
普段の平地と同じように考えてはいけない。
考えてみれば、
富士山の五合目に向かう途中にある売店で、
こうも、いろいろ売っていること自体が
そもそも凄いことなのだろう。

さて、もろこし。
事前に確認してくれるだけ、
なんて親切なんだ。
過去にトラブルでもあったのだろうか、、、
と、またもや邪推してしまう私であった。


トウモロコシを見せてもらって、
「思ったより小さいかな」
と思ったこともあり、

「ああ、、、
  すみません。
 じゃ、じゃぁ
 やっぱり、たこ焼きをください!」

これだな。
うん。
安定のタコ焼き。
これよ。

「あいよ!たこ焼きね!
 たこ焼き一丁!」

店員の女性は、
待ってましたとばかりに、
腰から鉢巻きを取り出し、
これでもかとネジリにねじったかと思えば
景気良くオデコにギュッと絞った!

・・・。

なんてことは無く、
店員さんはまたもや申し訳なさそうに

「たこ焼きも、
 こちらを温める感じになりますが、
 よろしかったでしょうか。。。」

そう言うと、
「たこやき」
という文字がプリントされた
小さな箱を、見せてくれたのだった。

(たしか)8個入りで500円だったと思う。
やっぱり、過去に何かあったのだろうか。
毎度、お客さんが
隠しきれないがっかり顔を見せてしまうのだろうか。
逆に気の毒になってくる。

「大丈夫です。
 それでお願いします」

そう伝え、
前日、両面テープでゼッケンをパリパリに貼り付けてしまった
バックポケットから小銭入れを取り出し、
支払いを済ませた。

「参加されるのは、今年が初めてですか?」

たこ焼きが温まるまでの間、
先ほどの申し訳ない感じの延長か、
はたまた、温まるまでの時間の気まずさからか、
店員さんが話を振ってくれた。

「いえ、今年で二度目です。
 昨年は体中が攣(つ)りまくって大変でした」

「そうでしたか。
 今年は大丈夫そうですか?」

余裕しゃくしゃくで、
今から、たこ焼きを食そうとしているくらいである。
気軽に聞いてくれた質問だったのだが、

「それが、、、
  今年は自転車がぶっ壊れてしまい、
 先ほどリタイアしまして・・・」

予想外の返答に、
かける言葉が見つからないといった様子であった。

「そうでしたか、、
 それは本当に残念ですね・・・」

リタイアしてなお、店員さんにも気を遣わせてしまい
本当、申し訳ねっす。

程なくして、たこ焼きが温まり、
お礼を言って売店を出た。

売店近くのテーブルベンチに座り、
富士ヒル、本番真っただ中の皆さんを
眺めながらたこ焼きを食す!

なんという贅沢。
ってか、なんだこのシチュエーション。
私は今、いったい何をやっているのだ!?

したたり落ちる汗、
苦しい呼吸、疲労した脚。
たかだか数メートル離れた目の前では、
己の努力の成果を結実させるべく、
必死にペダルを回している皆さんが、
次々と通過していく。

かたや、呑気にたこ焼きを食す私
まぶしい。
本流の皆がまぶしいぜ。

「なんだかなぁ。
  ああ、なんだかなぁ。」

そう
つぶやき、つぶやき、
また1つ、
たこ焼きを口に放り込むのであった。


(2)応援してみた

タコ焼きを食し、
ひとまずお腹が満たされた私。
下山バスの出発時刻までは、
まだ1時間以上の時間がある。
さて、どうすんべ。

プラプラしている私とは対照的に、
富士ヒル本番真っ只中の皆が、
必死に通り過ぎていく。

既にリタイアしてしまった私。
だがしかし。

そんな私でも、何か出来ることはないだろうか?

胸に手を当てて、昨年を思い出してみる。
満身創痍、身体中がしんどくて
一旦足つきして悶絶した約16.5km地点。
通りすがりの同志から、かけてもらった声援。
どれだけ嬉しく、そして力をくれたことか。

そうだ。
こんな私にも出来ることはまだある!

そう思った私は
給水所近くの道路沿いまで歩み、
おもむろに両手を前に出した。

「頑張れ!頑張ろう!
 いいよ!いいよー!」

そう、大声で叫びながら、
前に出した手を叩いた。

「・・・。」




 。


本当に、
実際に、そうやってみたのだが、
少ししてすぐ、
私は声を出すのをやめてしまった。
なぜか。

走っているみんなが、思ったより元気そうで、
猛烈に恥ずかしくなってしまったのだ。

通っていく皆は、
私がリタイアしたことなんて知るよしもない。
「ヘルメットも被り、ゼッケンもつけた男」が、
何故か、大沢駐車場で他人の応援をしている。
・・・というこの絵面(えづら)。

そんなとこで他人の応援なんてしてないで、
ゴールに向けて、お前が頑張らんかい

と、
猛烈に、そう思われている気がして、
ブーメランとして自分に飛んできて、
「謎の応援男」は、
急激にいたたまれなくなってしまったのだった。

うーむ。
そもそも「いいよ」って何がやねん。


「なんだか、さむいなぁ・・・。」

突然の謎の応援もさむかったが、
普通に体も冷えてきた。
そうして、身も心も冷えきった私は、
トボトボと下山バスへと向かったのだった。

富士ヒルを終えた今、冷静に思い返してみると、
あの大沢駐車場の地点。
終盤でしんどかった、応援の太鼓に元気づけられた
という人も、やはり結構いたのだと思う。

「あの人、自分が走らずに何をやっているのだろう」

と、仮にそう思われたとしても、
恥ずかしがっている場合ではなかったな、
そうすれば、
リタイアはしてしまったものの、
もう少しの間、
そう、もう少しの間だけ、
自分も富士ヒルに参加していられたのではないかな、
と、若干後悔している今日この頃。
来年以降参加することがあった際には、胸に刻んでおきたい。


(3)一足先にバスへ

バスへ向かうと、運転手さんがいらっしゃったので

「もう乗っていても良いでしょうか?」

と一声かけると

「どうぞどうぞ
 好きなところに座ってください」

と言ってもらえたので、
前の方に座らせてもらった。

車内をパシャリ

座って一息つく。
ふぅー。

「やっぱり、皆さんが乗ってらっしゃる自転車は
 結構なお値段するものですか?」

手持無沙汰な私に気をつかってくれたのか、
運転手さんと、もう一人の方(他の運転手の人?)がきて話しかけてくれた。

「はい。
 ピンキリではあるんですが、
 安い方でも10万円はすると思います。」

「10万円!」

「そう、10万円・・・
 うーん。
 自転車もコロナ禍で激しく値上がりしまして、
 今や10万円ではきかないかも知れません。」

10万円というワードに驚きつつも、
運転手さんは続けてくれた。

「ああ、そう!
 やっぱりねぇ。
 高い方だと、いくらくらいになりますか?」

「一般的感覚からは考えられないと思いますが、
  100万円オーバーも普通にあるようです。」

「ぎょっ!100万!」

流石に、100万円というワードには
目をパチクリさせていた。

「例えば、今通った○○って書いてあるメーカーのやつなんかは
 最低でも50万円近くするみたいです。」

「ああ、あれ。
 さっきからよく通るね」

「そうなんですよ。
 お高いのに、結構みなさん乗られている人多いんですよ。」

「あ!また通った。
 50万。へぇ~~~。
 あの△△っていうのもよく見かけるね。
 あれは外国の自転車なんですか?」

「あれはアメリカです。
 国産メーカーもいくつか有名どころがありますが、
 やはり海外メーカーのものが多いです。」

そんな感じで、本当にきさくに
ただただ、話相手になってくれた。
気がまぎれ、とてもありがたかった。

しばらく話し相手になってくれた後、
「それじゃ、もうしばらくゆっくりしていてください」
といって、
運転手さん達はどこかへ行ってしまった。

こうして、一人になってから
改めてバスの中から外をながめてみると、
先ほど、運転手さん達と話しながら見ていたものとは、
まったく違う景色に見える。

みんな、頑張っているなぁ。
頑張れー。
そうしてしばらくの間
ぼんやりと一人、窓の外を眺めていた。


どのくらい経っただろうか。
しばらくぶりに、
バスの入り口付近から声がした。

「こちらのバスになりますので」

なんと。
私に続く二人目の下山バス乗車者さんだった。
と、いうことは、
既に自転車をトラックに預けたのだろう。
ぼんやりと窓の外を眺めていたはずなのに、
まったく気が付かなかった。
私はいったいどこの世界を眺めていたのだろうか。
今もって謎のままである。

「痛たたた・・・」

昨年の私よろしく、
下山バスに乗車されたややご年配のサイクリストパイセンは、
ややしんどそうな顔をしつつ、
私の近くの席へと座った。

「こんにちは。大丈夫ですか?」

バスに二人きりとなったこともあり、
私の方からお声がけさせて頂いた。
パイセンは、

「こんにちは。。。
  もう全身が痛くて、もう全く進めなくなりました」

と、返してくれた。
どうやらメカトラではないようだ。

「そうでしたか。
  大変でしたね、、、」

自転車暦は長い方なのだろうか?
それとも、お仕事リタイア後に
ロードバイクを始めたクチなのだろうか?

ベテランのパイセンだとしても、
たまには、調子の悪い時もあろう。

聞けば、
三回目だという。

そう、三回目。
思いの外遅咲きのパイセンだったようだ。

「私は今年で二回目なんです。
  昨年は私も身体中が攣ってしまって
  大変だったので
  そのしんどさ、いくらかわかります。」


そう伝えたところ、
パイセンから驚きの情報がもたらされる。

「いや、
  ロードバイクでのライドが3回目なんです」

うげ!
ロードバイクでのライド3回目が富士ヒル!
凄い。
おらーびっくらこいた。

きけば、
他にもスポーツをやっておられる
アスリートパイセンであった。
そうか、ベースの体力はお持ちでしたか。

だかしかし。
ボクたかし。

そのパイセンをもってしても、
やはり、
通算3回目のライドでは厳しかったようだ。
富士ヒル、腐ってもヒルクライムだぜ。

気さくな方で、
お身体がしんどい中、
いくらかお話をさせて頂いた。
そうして、
バス車内、一人ではない時間が過ぎていった。


しばらくして、
バスの外がやや騒がしくなってきた。
バスに新たな人が一人、
また一人と乗り込んでくる。

ん?
なんだなんだ?

「あっ!」

そういうことか。
この大沢駐車場は、
第二関門に設定されている、
関所でもあったのだった。

バスの外からよくよく見ると、
コースには黄色いコーンが置かれ、
これから登ってくる人は皆、
もれなく、
大沢駐車場へ入るように促されていたのであった。

時刻にして、11:30頃の出来事であった。

ーーーつづくーーー




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