喜久の湯「誰もが日常の中に小さな幸せを感じられる場所をつくりたい」
こんにちは、湯どんぶり栄湯のオンラインコミュニティを運営しているふがしさんにお声がけいただき今回記事を担当します「ゆー」です。
この”銭湯と人”は「温浴施設で働く人の想い・ストーリーにスポットをあてたい!」という思いからふがしさんと始めたものです。記事を読んでくれた方が「この銭湯に行ってみたい!」と思ってもらうをコンセプトにしています。
今回は東京都葛飾区の喜久の湯さんの店主にお話しを伺ってきました。常連さんを大切にしながらも、新しく訪れてくれる人にも喜んでもらいたい。そのためにどうしたら良いかを常に考え行動。
その姿の裏には
誰しもに喜んでもらいたい ──
という強い想いがありました。
最後まで読んでいただき、「店主の考えに感銘を受けた!」「この店主が経営する銭湯なら行ってみたい!」そう思っていただいた方は、”スキ”を押していただけると嬉しいです。
「喜久の湯」の紹介
まず今回インタビューをさせていただいた「喜久の湯」についてご紹介します。喜久の湯は昭和39年創業の東京都葛飾区にある銭湯です。最寄り駅は京成立石駅。徒歩8分の場所にある下町情緒あふれる銭湯です。(ホームページはこちら)
銭湯を継ぐという選択
ー開店前のお忙しいところお時間を作っていただきありがとうございます。
こちらこそ暑い中、わざわざお越しいただいてありがとうございます!
ー早速ですがお話を伺わせてください。まず、店主の加島さんがどのような一日を過ごされているのか教えてもらえますか?
一日のスケジュールはこんな感じですね。「喜久の湯」は妻と祖母の力を借りて3人で経営しています。子供が2人(6歳・4歳)いるので、子育てしながらというのが大変ですね。
店主の加島さんは二代目ですが「喜久の湯」を継がれた時の話を聞かせてもらえますか?
祖父から電話がかかってきたことがきっかけですね。
「銭湯やる気あるか?」と。
元々家族の中で銭湯を継ぐ立場にいなかったんですが、中学生の時の職場体験では銭湯を選ぶほど銭湯経営に思い入れはありました。なので、話をもらった時には率直にやろうと思いましたね。当時は浜松で会社員として働いていましたが、辞めて東京に戻ってきました。
銭湯経営を継いた当初、苦労したことは何でしょうか?
先代である祖父との世代間ギャップですね。仕事は背中で教えるというか、わからないことは自分から聞きにこいというスタンス。世代が違うとやはり考え方や価値観が違うんだなということを、この時実感しました。介護に育児が重なったことも時間的に余裕がなくて大変でしたね。
「サウナを無料で」にこだわる理由
ー喜久の湯さんはサウナが無料ですよね。都内では珍しいと思うのですが、料金を取らない理由は何でしょうか?
一番は先代の時からそうだったから。というのが一番大きいですね。
有料化を考えたりはしないのでしょうか?
もちろんありますよ。10名以上の常連さんに有料にしてチラーをつけるのと無料でこのままなのとどっちがいいかと聞いたところ、全員が「このままがいい」と言ってくださいました。常連さんは今の施設が良いから通っているわけで、そこから変えてほしいわけじゃないんですよね。
でも、今のサウナブームで来てくれる新規のお客さんは有料にしたとしても施設が充実した方が嬉しいんだろうなぁとは思いますけどね。
常連さんと新規のお客さんを同時に満足させるということが本当に難しい。
正解がないので、ずっと模索している感じです。
ちなみにサウナを有料にしたら、施設をどう変えたいですか?
チラーを入れたいと思いますね。もう、5年くらい悩んでる(笑)うちの水風呂は地下水掛け流しなのですが、水温が20℃くらい。もう2,3℃下げられると良いかなぁって。
そうそう。夏の期間にお客様に冷たい水風呂に入ってもらいたくて、2ℓの凍らせたペットボトルを水風呂に2本入れてみたんです。そしたら、30分くらいで溶けちゃって。気づけばペットボトルが水風呂に浮いているだけの状態になってた。
お客さんは「?」だったと思いますね(笑)
サウナ室ではマットを一日二回取り替えたりヴィヒタや”ととのい”椅子をおいたりしていますよね?無料なのにそこまでこだわるのはなぜでしょう?
「無料だから」です。無料「だから」手を抜いて良いわけじゃない。無料「だから」こそしっかりやる。そんな気持ちが大事だと思っています。
「誰もが」喜ぶ ─ に日々葛藤
ーお話をしていると銭湯とお客さんに対する愛の強さをすごく感じますが、銭湯を経営する中での悩みや辛いことは何でしょうか。
悩みというか、辛いのは常連さんへの注意ですね。
以前友人が偶然お風呂に入っていた時に「あの人がサウナストーブに水をかけていたよ」と教えてくれた。 その人がいつも番台で話しているお客さんだったんですよ。驚きました。
「常連さんを特別視しない」と言い切っていた銭湯を、テレビで目にしたことがありました。当時自分はそこまでにはなれないかなぁと感じましたが、時にはそうした気持ちをもって対応することも必要なのかなと思っています。
誰もが心地良いを作り出すというのは本当に難しいんですね ──
お客さんのマナー違反に対しての注意も「いいのかな」と日々葛藤しながらやっておます。例えばサウナ室の場所取りや汗を流さないで水風呂に入る人。こうした方も実は話してみると、本人は全然悪気がなかったりするんです。
うちはサウナ無料というのもあって、お風呂のついでにサウナを利用する方も多い。単に知らなかったという面でマナー違反の行動をやっていることもあるので、あまり強く「注意する」というより「教える」感覚でいますね。
でも、今のサウナブームで来てくれる新規のお客さんはきっとマナー違反が気になるんだろうなっていうのもわかります。
銭湯・サウナ室での会話も、銭湯は元々ふれあいの場としての側面があるので常連さんはきっとある程度会話がしたいと思っている。でもサウナーさんは静寂のととのいを求めていたりする。
どっちの気持ちもわかるしどっちにも楽しんでもらいたい。だからバランスを取るのが本当に難しい。でもやりがいはあります。
店主が考える理想の銭湯
最後に加島さんが実現したい理想の銭湯について教えてください!
難しいですね(笑)
自分自身銭湯は日常の中の小さな幸せを感じる場所だと思っています。浴室のお風呂も良いですが、大きな風呂に入るのが好きなんです。皆さん少なからず大きなお風呂でゆったりするのが好きというのはあるかなと。開放的な気分にもなれますよね。
誰もが日常の中に小さな幸せを感じられる場所 ──
そんな銭湯が理想ですかね。
ーお話を伺って、お風呂をいただくのがさらに楽しみになりました!
そう言ってくれると嬉しいです(笑)うちのお風呂のお湯は「地下水掛け流し」なので、ゆっくり楽しんでいってくださいね。ジェットバスの水流、すごいですよ!
ーありがとうございました!
浴室紹介
最後に特別に撮影させていただいた写真をご紹介します。浴室内の写真は全て特別に営業時間前に店主の許可を得て撮影させていただいております。
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