【女湯事件ボ 01】キメツのヤーバ、見たいおばあちゃん
もう冬至も近くって、まあ寒い夕方の銭湯での出来事。
湯上りホカホカのばあちゃんと、
これから入浴するばあちゃんが、束の間のおしゃべりをしていた。
(入れ違い様に、ちょっとだけ おしゃべり。
銭湯ではよくあるシチュエーションだ)
湯上りばあちゃん :「あなたね、キメツのヤーバ、わかる?」
これからばあちゃん:「うん、わかるわ」
湯上りばあちゃん :「今度、映画館に見に行きたくって・・・」
これからばあちゃん:「そうなんだ?」
湯上りばあちゃん :「●×△でね、やっているみたいで」
これからばあちゃん:「興味ないね。私は若いのには興味ない。」
湯上りばあちゃん :「そっかあ~」
これからのばあちゃんは、
話を打ち切る様にタオルをギュッと体に巻いたっぽい。
帰りの支度の手を止めていたばあちゃんは、
何ごともなかった様に あったかそうな帽子をかぶった。
近くで着替えていた私、勝手に気まずかった。
帰り道、これからばあちゃんの事を思った。
私のばあちゃんより若いとは言え「鬼滅の刃」を見たいなんて、
なんてナウなばあちゃんだろう。
「キメツのヤーバ」って覚えて、せっかく誘おうとしたのにね。
でも、もう片方のばあちゃん、脱衣場で寒かったのかもよ。
私も現に寒かった。
もし今、コロナじゃなかったら
「一緒に行きませんか?」って言ったかも。
せめて「私も見たいんです!」くらい言ったよな。
ごめんよ、ばあちゃん。
最近口数が減った自分を、恨めしく思った。
ばあちゃんがキメツのヤーバ、観れてます様に。
@東京都大田区・某銭湯
やすこ。
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