【女湯事件ボ10】とある廃湯間際の銭湯で。
東京都内の、とある銭湯での思い出。
その銭湯は、既に廃湯の決断をされていた。
たまたま近くに立ち寄ったので、
おじゃまさせていただいた。
その時の、なんだか胸がしめつけられた景色。
出逢ったお客さん1
先客の女子高生らしき2人組が、
脱衣場まで響く勢いで はしゃぐ声が聞こえた。
彼女たちの風呂道具とおぼしきモノは
脱衣場に置かれていて、何してるんだろ?と思った。
どうやら、湯上ろうとしたものの
最後に水風呂に入っとこう・・・という運びらしい。
「ちょっと!もう来れないからさあ!」
と声が聞こえ、嫌がる女子の腕を水風呂側に引っ張るもう1人。
そっか、ここが廃湯する事を知って来たんだね。
キャハハハー!!!
冷たいいいーーーって!!!!
ムリーーーーーー
う・・・うるさい、かも笑。
コロナ禍だったので、私の頭にいるもう1人の私が
ピリついているのを察した。
まぁ、でもあとは私しかいなかったし、
彼女たちは 彼女たちなりの
最後の入浴を楽しんでいるのだから。
そして、きっとその記憶は
いつかどこかでいきなり蘇るんだよね。
それで、いつか、
「私が水風呂を好きなったのは、高校生の時友達と行った銭湯で。
もう、今はないとこなんですけど・・・」
と口にするかもしれない。
出逢ったお客2
先ほどの水風呂女子JKが去り、
一瞬の貸切にはなったが
すぐにお風呂カゴを持参したご婦人がいらっしゃった。
あたしゃあ、「風呂カゴ」に弱い。
だって、風呂カゴは「常連の証」だもの。
ここに暮らしがあったことがわかるので、
リスペクトを払わずにはいられない。
だから粛々と洗髪し、
ご婦人の時間をじゃましないように
しなくては。と1人あわてた。
私の浸かっていた 浴槽の位置からして、
ご婦人のカランがよく見えていたので、
私は顔マッサージをしつつ
じんわりと目を閉じた。
と、その時。
・・・まつげの隙間から見えちゃった。
ドレッシング容器が。※
(※補足:銭湯では一般的に毛染めを禁止している施設が大半です。
女性は毛染めの際に、ドレッシング容器に入れて行う事が多く、
ドレッシング容器=毛染めの可能性があり、ハッとしました。)
でもね、まさかぁね。
トリートメントとかも入れるかもしれない。
現に私も化粧水入れてたことあるし。
とりあえず、予定より早く入浴を切り上げた。
なんとなく。
けど、、見えちゃったんだ。
脱衣場から、そのドレッシング容器の中が
カラーリングだということがわかった。
(※繰り返しですが、銭湯での毛染めは一般的にタイル等が汚れる等の理由から、「NG」としているケースが大半です。)
最後、ご婦人はシャワーキャップをし、
サウナに姿を消した。
でも・・・浴室には張り紙はなかった。
「毛染めをしないでください」は書いてなかった。
たまにあるじゃん、毛染めがOKなお風呂屋さん。
それに私の友人だって、そのルールを知らない子もいたよ。
だから、、だから、、
毛染めがそのお風呂屋さんのNG行為なのかもわからない。
帰り際に、フロントの女将に聞くということも、もちろんしなかった。
ご婦人は今のカラーリングが落ちた頃、
「ああ、もうあの銭湯には行けないんだよね。」
って今一度思い出すかな。
私はこの銭湯で、何も言えずに黙ってしまった。
何が正しか、何が間違いか、この廃湯間近の銭湯では
明らかな物差しなんてないと思ったから。
誤解を恐れずに言ってみれば。
でも決してそれは無法地帯、という訳じゃない。
そこに通ってきたお客さんにしかわからない、
横入りができない不思議な空間が流れている。
フロントの女将さんから「ありがとうございます」と
心を込めて言われ、
いろいろ考えすぎていた自分の肩の力が抜けた気がした。
やすこ。
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