理論の単純性、合意の内容について
普遍言明の受容れ条件は、テストの厳しさであり、理論の単純性そのものではない。また合意は、何らかの基準による普遍言明についての合意ではなく、単称言明である基礎言明についての合意である。それは、直接経験による言明の正当化ではなく、科学的方法の目的に沿った自由な決定としての合意である。(カール・ポパー(1902-1994))
「約束主義者にとっては、普遍言明の受容れは単純性の原理によって支配される。 彼はもっとも単純な体系を選ぶ。反対に私は、考慮されるべき第一の事柄はテストの厳しさで なければならない、と要求する。(私が「単純性」とよぶものとテストの厳しさとのあいだに は密接な結びつきがある。しかし、私の単純性の考えは約束主義者のそれとは非常に異なって いる。第46節を見られたい)。そして私は、理論の運命を最終的に決定するのはテストの結 果、つまり基礎言明についての合意である、と主張する。私は約束主義者とともに、なんらか の特定の理論を選ぶということが行為であり、実践の問題であると主張する。しかし私の場合 には、その選択は理論の応用およびこの応用に結びついた基礎言明の受容れによって決定的に 影響されるものである。これに反して、約束主義者の場合には、審美的動機が決定的である。 こうして私は、合意よって決定される言明が普遍言明でなく単称言明であると主張 する点で、約束主義と異なっている。また私は、基礎言明がわれわれの直接経験によって正当 化されるものではなく、論理的観点からすると行為、自由な決定(心理学的観点からすると、 これはおそらく、目的的なよく適応した反応であろう)によって受容れられるものであると主 張する点で、実証主義者と異なる。」
(カール・ポパー(1902-1994),『科学的発見の論理』,第2部 経験の理論の若干の構成要素, 第5章 経験的基礎の問題,30 理論と実験,pp.136-137,恒星社厚生閣(1972),大内義一 (訳),森博(訳))
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