僕を取り巻く環境は優しすぎている。大人に手を上げられたことなんて数えるぐらいしかないし、会社に行けばおじさんたちは気を遣いながら接してくる。すぐにパワハラやセクハラが叫ばれるこの時代。僕達はZ世代と呼ばれ、どうやら会ったことのない日本中のそいつらが、そういう世の中にしてしまったらしい。男と漢の区別がよりはっきりしたこの時代に、僕は孤独を感じている。漢なら稼ぐ。漢は涙を見せない。漢は、辛いことがあっても、誰にも頼らずただ黙々と働く。みんなが漢であった時代、実際に言葉は交わさずとも、心で分かり合い、同じ気持ちの仲間がいるから、さぞ安心していたんだろう。でも、男だらけになった令和に、漢なんていないから、僕は孤独を感じる。ちょっぴり怒られたぐらいでナヨナヨする同世代には同情すら起こらない。若造相手におっさんがビクビクするのも情けなくて目も当てられない。でも、人間は社会を形成して生きていく生物だから、こんな世の中にも適応しなければならない。僕なりの「漢の美学」は、この時代において陳腐化している。それでも僕は、何があっても誰にも涙を見せないし、ただ黙々と漢を演じていく。それも僕なりの美学で、僕の人生の美しさになるから。

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