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夜なのに太陽

 僕の隣を、君が歩いている。コツコツと鳴る音と、服が擦れる音。それ以外は静寂の帰路、たまにエンジンとエコ・タイヤの音が通り過ぎてゆく。口を開いては下らないことばかりで全く色気のない二人が、少ない街灯を頼りにぐんぐんと歩いてゆく。下を見てはアスファルトが流れ、右を見ては家と目が合い、上を見ては星が煌めいていた。
 目的地の駅に着いて、振り返った君は世界で一番可愛い顔をしていた。駅の灯りはボケて滲み、焦点の鮮明以外は涙目の世界だった。美しく切り取られた君に、僕は絶句した。ローギヤードした心拍数が、「また明日」につっかえた。何度振り返っても、君は後ろ姿だった。蓄光したG-SHOCKが差した時刻は20:45。僕は薄緑に切り替わった横断歩道の鍵盤を大股でまたいだ。

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