湯たんぽ
『明日の最低気温は1度。平年と比べて4度から6度ほど低い見込みです。朝晩の冷え込みに注意してください。』
夕食を食べている際、そんな声をテレビ画面越しに届けてくれるローカルニュースのお天気キャスター。
寒がりの父が平日キッチンに立つようになってからというもの、夕方の4時頃から毎日のように石油ストーブが大活躍している。
しかしあのストーブ、何故石油ストーブと呼ばれるようになったのだろう?厳密には灯油じゃないか。そう疑問に思っても調べるまでには至らない。きっとこれは私が死ぬまで分からない。めでたく迷宮入りだ。
そんな石油ストーブの上で、ピューピューと音を立てているやかん。加湿器を兼ねられる先人達の知恵である。
風呂上がり、その熱湯を湯たんぽに詰める。本来は熱湯を注がないでくださいと注意書きがされているのだけれど、今のところひしゃげたり壊れたりする様子はないので、何だかんだ頑丈なのだろう。
詰め終わった湯たんぽをカバーに収納して、それをサッと布団の中へ潜り込ませる。これで明日の朝まで私の足は冷え切ることはなくなる。末端冷え性の私を救ってくれる正に救世主である。
翌朝6時半、目を覚ましてもまだ仄かに温かいそれを茶の間へ持っていき、こたつへ。
母が焼いたベーグルや野菜サラダを盛り付ける。飲み物は決まってデカフェの珈琲に牛乳たっぷりのカフェオレ。
朝はさほど食が進むタイプではないので、野菜サラダは食べない事もしばしば。
ごちそうさまをした後、汚れた食器類を洗う際に、湯たんぽ最期の活躍がある。
水を張る盥の中に食器類を入れ、前日沸騰していたお湯を湯たんぽの注ぎ口から流し込む。
すると40度よりも少し温いお湯が手に入る。その貴重なお湯は、朝食の汚れを取るには充分なほどの質と量を兼ね備えている。
空っぽになった湯たんぽは、また夕方になると熱湯が注がれる。
そんな毎日を繰り返す。私の冬の日常。