見出し画像

小松礼雄が語る、ベアマンの実力:未来を担う19歳の才能

2025年シーズン、ハースF1チームはオリバー・ベアマンを正式にフルタイムドライバーとして迎え入れる。わずか19歳にして高い評価を受ける彼の実力とはどのようなものなのか。そして、なぜハースのチーム代表である小松礼雄が彼に絶大な信頼を寄せるのか。本記事では、ベアマンのこれまでの軌跡と、小松が語る彼の特筆すべき能力について掘り下げる。

衝撃を与えたFP1デビュー戦

2025年シーズン、ハースF1チームは新たなルーキーとしてオリバー・ベアマンを迎え入れる。この19歳の若き才能は、すでに多くの期待と注目を集めている。その理由の一端を語る人物が、小松礼雄だ。チームの中核を担う小松は、ベアマンのポテンシャルを初めて目の当たりにした時の衝撃を隠そうとしない。

2023年メキシコGPの週末、ベアマンは初めてFP1でF1マシンを走らせた。その瞬間、小松は「彼がハースのフルタイムシートに値するドライバーだ」と確信したという。小松はベアマンの魅力を「全て」と表現し、その完成度の高さに驚嘆した。単なる速さだけでなく、チームが求める役割を理解し、それを実行に移せる成熟さが際立っていたと語る。

「これまで何度も言ったけど、彼は全体として完成度が高い。ただ速いだけじゃないんだ。FP1で速さを見せるルーキーを何人も見てきたけど、多くのドライバーは『自分は速いんだ』と証明しようとフォーカスしている。でも、オリーは全然そんな感じじゃなかった」と小松礼雄は語った。

小松礼雄が語る「特別な資質」

「彼のスピードのポテンシャルは十分すぎるほど見せてもらった。でも一番興味深かったのは、それ以前の話だ。彼はメキシコでのFP1セッションにおいて、自分の役割を本当によく理解していたし、チームがそこから何を得る必要があるのかも把握していた。どうセッションに臨むべきかを理解し、それを実行に移していたんだ」。

FP1セッションでは、彼の速さだけでなく、学習能力の高さ際立った。予選シミュレーション中にミスを犯した後でも、ベアマンは冷静にフィードバックを受け入れ、自らの失敗を次のラップで修正した。その落ち着きと迅速な学習能力は、わずか(当時)18歳の若者とは思えないほどのもので、小松を含むチーム全体を感心させた。

「彼は全力で攻めすぎたわけじゃない。でも予選シミュレーション中にミスをしたんだ」と小松は振り返る。「クールダウンラップ中、チームからのフィードバックを受けて、彼自身が自分のやったことをきちんと整理し、それを次のプッシュラップで修正した」。

「さらにデブリーフでも、彼の落ち着きや物事の説明の仕方、チームとの連携の仕方に感動したよ。18歳だなんて信じられなかった。本当に。彼は性格もいいしね」。

アゼルバイジャンGPの試練

また、ベアマンの精神的な強さが発揮されたのは、順調でない状況下での対応だった。昨年のアゼルバイジャンGPでは、彼の第1スティントのペースは期待外れだった。それは、ハースがタイヤのデグラデーションを過剰に気にして、遅いペースを指示してしまったためだった。

チームの戦略ミスが原因でペースに制約を受けたが、彼は指示に忠実に従いながらも冷静さを失わなかった。その結果、ハースはチームオーダーを発令し、ベアマンにチームメイトのニコ・ヒュルケンベルグを先行させるよう指示した。この決定は、少なからず彼の不満を引き起こした。

しかし、小松礼雄の視点から見ると、その瞬間のベアマンの対応が彼のマインドセットをよく表していた。「オリーの素晴らしいところを挙げるなら、我々が伝えたタイヤ管理の指示をそのまま忠実に守っていたことだ。ただ、その指示が保守的すぎたんだ」と小松は語る。

「ニコはオリーとの差をどんどん縮めていたが、チームとして運用上の問題があった。我々はすぐにオリーに『目標が間違っていた。ニコはもっとプッシュしているがタイヤは問題ない。君ももっとプッシュしていい』と言うべきだった。でも、それをしなかった。

「その結果、第1スティントの終盤でニコとオリーを入れ替える必要が生じた。当然、オリーは不満だった。彼が文句を言ったのは当然だよ。でも、彼はただその指示を実行した。それが正しい行動だった。反論はしなかった」。

レース後も、このチームオーダーの是非を巡る議論は続いたが、ベアマンの対応に小松は感銘を受けた。「我々は話し合ったんだ。何を間違えたのか、どうすればよかったのか。そして前に進む、とね」。

「その時点で彼はすでに19歳だったと思うけど、『今回の件には満足していないけど、チームオーダーだから迷いなく従う』という成熟さを持っていた。そして結局のところ、それが彼に何かを失わせることはなかった」。

ベアマンはその後、レース中にヒュルケンベルグをオーバーテイクし、ポイントを獲得した。チームメイトがイエローフラッグ後にためらった瞬間を見逃さなかったのだ。「彼は本当に落ち着いているんだ」と小松は付け加える。「彼は全体像を理解しているし、それを実行できる。そして、驚くべき速さで学ぶこともできる」。

「彼と一緒にどれだけ成長できるか、本当に楽しみだよ」。

ベアマンの未来

小松が語るエピソードから浮かび上がるのは、ベアマンの学習能力の高さだ。彼は単なる速さだけでなく、全体像を理解し、迅速に適応する能力を持つ。この特性は、F1という過酷な環境で成功するために不可欠なものであり、小松は彼との成長を心から楽しみにしていると述べている。

このような才能が注目されるのは当然だ。フェラーリのジュニアプログラム出身であるベアマンは、将来的にフェラーリのシートを獲得する可能性がある。これらすべての特質が、小松にベアマンのF1での明るい未来を確信させている。そして、数年後、フェラーリがルイス・ハミルトンの後継者を探す際には、ベアマンに注目が集まることは間違いないだろう。

「我々は彼と2年契約を結んでいる。2年プラス1年のオプション付きだ」と小松は語る。「でも、我々がいい仕事をして、オリーもいい仕事をすれば、フェラーリがそれを無視するなんてあり得ないよ」。恐らくこの契約には、フェラーリが希望した場合に解除できる項目が含まれていると推測される。

驚異的なデビューで示した才能

昨年、サウジアラビアでフェラーリのカルロス・サインツが体調不良で欠場した際、ベアマンは急遽代役としてF1デビューを果たした。そのデビュー戦で、彼はプレッシャーのかかる場面でも速さと実力を発揮し、そのポテンシャルを証明した。さらにその後、アゼルバイジャンのバクーでハースのケビン・マグヌッセンの代役を務め、ブラジルGPでは苦しいレース展開の中でもいくつかの印象的なハイライトを見せ、評価をさらに高めた。

ハースのチーム代表である小松礼雄が、19歳のベアマンを迷わず起用したのには理由がある。彼には単なる速さだけでなく、他の多くの若手とは一線を画す要素があるのだ。

ビッグチームへのステップアップの可能性

ハースにとって、ベアマンを獲得したことは大きな意味を持つ。しかし、小松が指摘するように、彼を長く留めておくことは容易ではない。ベアマンの才能がさらに開花すれば、フェラーリをはじめとするビッグチームが彼に注目するのは時間の問題だろう。

オリバー・ベアマンは、単なるルーキーではない。彼はハースが誇る未来のエースであり、F1の次世代を担うスター候補だ。その成長を見守ることは、我々にとっても楽しみの一つになるだろう。そして、彼の名前がフェラーリのシートを巡る議論に登場する日が来るのも、そう遠くはないかもしれない。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集