アメリカGP レースレポート:ルクレールがフェラーリを1−2に導き、ノリスはペナルティで4位にダウン
2024年のF1第19戦アメリカGPは、テキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で熱いバトルが繰り広げられました。今年のシーズンも終盤に差し掛かり、各チームがシーズン最後の大規模なアップグレードを披露する中、フェラーリが見事な1-2フィニッシュを達成しました。
シャルル・ルクレールがチームメイトのカルロス・サインツを抑えてフィニッシュラインを越え、今季3勝目、通算8勝目をあげ、スクーデリアにとって87回目の1-2フィニッシュを達成しました。
レースのスタートでは、ポールスタートのランド・ノリス(マクラーレン)が良いスタートを切り、リードを守るように見えましたが、2位スタートのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が強引にイン側から飛び込み、ノリスを押し出しました。その勢いでフェルスタッペンもアウト側に飛び出し、誰もいなくなったコースをシャルル・ルクレール(フェラーリ)が走りトップに立ちました。
サインツもフェルスタッペンを抜こうと試みましたが防がれ、押し出されたノリスは4位に下がりましたが、フェルスタッペンにはペナルティはありませんでした。1周目の終わりにはルクレールは1.6秒のリードを築き、DRSの脅威にさらされる前にフェルスタッペンを退けることに成功しました。
ルクレールのミディアムタイヤでの走りは素晴らしく、フェルスタッペンを寄せ付けず、3周目の中盤に発生したセーフティカー後も、リードを保ち続けました。このセーフティカーは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)がターン18でスピンし、グラベルに飛び込んだことが原因でした。再スタート後、フェルスタッペンはルクレールに迫りましたが、ルクレールは巧みに追撃を防ぎました。
レース中盤、2位のフェルスタッペンが25周目にタイヤ交換すると、ルクレールがそれをカバーするために26周目にピットインし、ピットアウト後にはマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリの後ろで復帰しました。しかし、マクラーレン勢がピットインすると再びトップに立ち、今度はチームメイトのカルロス・サインツとの争いになりました。3位のサインツはアンダーカット狙いで21周目にタイヤ交換し、序盤にパワーの問題を抱えていたものの解決し、フェルスタッペンとの競り合いを制し、アンダーカットを成功させてルクレールに迫ろうとしましたが、ルクレールが余裕を持って、リードを守り切りました。
終盤、最もエキサイティングなバトルは3位争いでした。フェルスタッペンのハードタイヤでの苦戦に対し、ノリスは6周分新しいハードタイヤで素晴らしいペースを見せ、フェルスタッペンに迫りましたが、52周目に外側から抜こうとした際に両者がコースを外れる場面がありました。この結果、ノリスには5秒のペナルティが科され、フェルスタッペンが3位を守る形となりました。
この日は、このようにオーバーテイクを試みるドライバーがアウト側に追いやられながらも、追い抜く場面が多々見られましたが、それに対するペナルティも多く出て、バトルが興ざめする場面もありました。
このレースからリカルドに代わりレーシングブルズをドライブするローソンが最後尾スタートから見事な走りで9位入賞し、強いインパクトを残しました。一方、上位からスタートした角田は、自身のスピンもあり14位が精一杯でした。
最終的に、シャルル・ルクレールが今季3勝目を挙げ、カルロス・サインツが続いてフェラーリの1-2フィニッシュを飾りました。3位にはマックス・フェルスタッペンが入り、ドライバーズチャンピオンシップのリードをランド・ノリス(今日4位)に対して57ポイントに広げました。
コンストラクターズチャンピオンシップの争いはより接戦で、3チームが48ポイント差にひしめいています。マクラーレンが544ポイントでトップに立ち、レッドブルが504ポイント、フェラーリが496ポイントで続いています。5位にはオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が続き、6位にはピットレーンスタートから見事に順位を上げたジョージ・ラッセル(メルセデス)が入りました。
今回のアメリカGPで注目されたのは、各チームのタイヤマネジメントとピット戦略の違いでした。レースでは15人のドライバーがミディアムタイヤでスタートし、ザウバーのボッタスとジョウは使用済みのセットを選択しました。メルセデスのハミルトンとラッセル、アストンマーティンのストロール、ウィリアムズのコラピント、レーシングブルズのローソンの5人はハードタイヤを選びました。
大多数のドライバーにとって1ストップ戦略が主流で、オコン以外では、ジョウとマグヌッセン(ハース)だけが2回の計画的なピットストップを行いました。フェラーリはルクレールとサインツの両名が安定したペースを維持し、タイヤデグラデーションをうまく抑えることでレースを制しました。
ピレリのモータースポーツディレクターであるマリオ・イゾラは、「まず最初に、フェラーリがアメリカで素晴らしい1-2フィニッシュを達成したことを祝福します。タイヤに関して言えば、今日は非常に興味深い展開が見られました。過去のデータや昨日のスプリントで学んだこと、特にミディアムタイヤの摩耗率の高さ、そして昨年のレースから得た知見に基づいて、一見すると1ストップ戦略は不可能に思えました。しかし、それが勝利の鍵となり、ほぼ全員が採用した唯一の戦略でした」
「ミディアムタイヤの挙動については、ハミルトンが序盤にコースアウトした際にセーフティカーが出動し、このコンパウンドでスタートしたドライバーがスティントを延ばすことができたこと、またその時点で車両が重い燃料を積んでいる間にタイヤへのストレスが軽減されたことがポイントでした。さらに、トラックコンディションの進化が著しく、再舗装された部分が多くあったため、昨日のスプリントで見られたグレイニングが大幅に減少しました。そして、チームが昨日の学びをもとにセットアップを変更できたことも要因の一つです」とコメントしています。
今回のレースは、ドライバーたちの技術とチームの戦略が見事に融合した典型的なF1レースであり、シーズン終盤に向けた各チームのアップグレードと戦略の重要性が浮き彫りとなりました。特にルクレールの勝利とフェラーリの1-2フィニッシュは、今シーズンを象徴する重要な成果としてファンの記憶に残ることでしょう。次戦はメキシコGPであり、各チームがどのような戦略で挑むのか、ますます目が離せません。