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角田裕毅がレッドブル昇格を逃した理由:期待と現実の交差点
2025年シーズンを前に、セルジオ・ペレスの後任候補として注目された角田裕毅。しかし、選ばれたのはリアム・ローソンだった。その背景には、実力だけでは覆せない「期待と現実」の溝が存在していた。今回は、その理由を掘り下げる。
角田裕毅が持つ「期待値」とその実績
角田裕毅は、2021年にアルファタウリ(現レーシング・ブルズ)でデビューを果たし、初年度は苦労したが徐々にパフォーマンスをアップして、その実力を証明してきた。2024年シーズンまでの間に彼は複数のチームメイトを圧倒し、特に2023年にはニック・デ・フリースを大きく引き離し、翌年もダニエル・リカルドとの戦いで評価を高めた。
それにもかかわらず、レッドブルのシートを掴むには至らなかった。この決定に、多くのファンや専門家が疑問を投げかけているが、実際のところ、その理由は単純ではない。
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レッドブルがローソンを選んだ理由
リアム・ローソンが昇格を勝ち取った背景には、若さと将来性が鍵となっている。ローソンは22歳という年齢でありながら、限られたF1参戦経験の中で冷静な判断力と鋭いパフォーマンスを披露してきた。
一方で、レッドブルにとって重要なのは「マックス・フェルスタッペンを支えるチームメイト」としての適性だ。ローソンはその点で、チームの期待に応える要素を備えていると評価されたのだろう。
しかしながら、これが角田の不適格を示すものではない。むしろ、レッドブルの判断は戦略的な選択としての側面が強い。角田が「ジュニアカテゴリーを経て成熟したドライバー」として評価を得る一方で、ローソンが「次世代の旗手」として選ばれたのは、純粋なパフォーマンス以上の理由があった。
「プレッシャーへの耐性」という視点
テッド・クラヴィッツが指摘したように、レッドブルが角田に欠けていると見なしたのは「プレッシャーへの耐性」だった。トップチームでは、結果を求められる厳しい環境が常に存在する。フェルスタッペンが絶対的エースとして君臨する中で、チームメイトには「陰で支える役割」も求められる。
角田の気性や感情的な側面はこれまでしばしば話題となってきた。しかし、クラヴィッツ自身が述べたように、それは他のドライバーにも当てはまる部分であり、角田が特別に劣っているわけではない。むしろ、彼の激しい感情はアグレッシブな走りに結びついており、チームメイトを圧倒してきた実績を見れば、プレッシャーに対応できる素質は十分にあると言える。
それでもなお、ホーナーとマルコがローソンを選んだ背景には、角田をトップチームで起用する際のリスクを低く見積もらなかった結果があるのだろう。
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レッドブルでの未来:角田の次なる挑戦
2025年シーズン、角田は引き続きレーシング・ブルズでルーキーのイザック・ハジャーと共に戦う予定だ。しかし、チームリーダーとしての役割を任されたことで、彼のキャリアは次の段階に入ると言える。
一方で、ホーナーが「サポートチームのドライバーには限界がある」と語ったように、角田にとっての時間は限られているかもしれない。新たなシートを模索するか、あるいは再びトップチームへの昇格を目指して再挑戦するか、その選択が問われるタイミングが来るだろう。
しかし、重要なのは、角田がこれまで見せてきたポテンシャルをさらに磨き、結果でレッドブルの判断を覆すことだ。彼がその「期待と現実の溝」を埋める日は、決して遠くないかもしれない。
角田裕毅がレッドブルのシートを逃した背景には、実力だけでは測れない複雑な要因が絡み合っている。しかし、彼がこれまでのキャリアで示してきた成長とパフォーマンスを考えれば、その挑戦はまだ終わりを迎えていない。