激闘のアメリカGP スプリントと予選レビュー:逆襲のフェルスタッペンと完璧なノリス
F1アメリカGPは、スプリントレースと予選の両方で数々のドラマを見せた。マクラーレン、レッドブル、フェラーリ、メルセデスといったトップチームたちが、それぞれの強みと弱みを持ち寄り、競り合いを繰り広げた。コース・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)の週末は、各チームにとって非常に重要な一戦となった。
マクラーレンの挑戦とノリスの活躍
ランド・ノリスはスプリントレースでの素晴らしいスタートにより、4位から2位まで順位を上げ、最初の数周でその位置を守り抜いた。しかし、後半になるとタイヤのグリップが低下し、フェラーリのカルロス・サインツに抜かれてしまい、最終的に3位でフィニッシュした。ノリスは「タイヤが限界に達してしまい、後半は思うようにペースを維持できなかった。それでもチームとして良い結果を残せたと思う」と語った。一方のオスカー・ピアストリは、積極的な走りを見せ、フィールドを駆け上がるも、ガスリーをコース外で追い抜いたためにタイムペナルティを受け、10位となった。
予選では、マクラーレンの両ドライバーがQ3に進出。ノリスはレースエンジニアからの激励を受け、特別なラップを決めて暫定ポールを獲得した。「素晴らしいラップだった。これ以上速く走ることはできなかったと思う。ラップを終えたときに、これを超えるのは難しいなと思ったんだ。すべてをかけて挑んだんだが、それが必要だったんだ。この週末はフェラーリやレッドブルほどのペースがなかったから、特別なラップが必要だった。そしてそれを成し遂げたんだ」とノリスは振り返った。黄色旗の影響で他のドライバーが最終ラップを更新できなかったこともあり、ノリスは見事にポールポジションを手に入れた。ピアストリは5位となり、「難しい予選だった。全セッションを通じて快適に感じられず、これが精一杯だった。もちろん理想的ではないけれど、まだレースで何とかできる位置だと思う」と語った。
マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは、COTAでの予選結果に満足感を示し、「ランドもオスカーも良いラップを刻み、Q1とQ2を余裕で通過し、明日のグリッドでP1とP5を確保した。スプリントでの学びを活かしてマシンの調整を行い、タイヤマネジメントについて今夜さらに研究し、明日のレースに備える」とコメントした。
レッドブルの勢いとフェルスタッペンの不運
レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、スプリントレースでポールからスタートし、6月以来の勝利をポール・トゥ・ウィンで飾った。彼にとって最大の朗報は、ライバルであるノリスとの差を広げ、チャンピオンシップのポイント差をさらに伸ばしたことだった。しかし予選では、イエローフラッグの影響で最終ラップを完了できず、2位に甘んじる結果となった。フェルスタッペンは「Q3の最後のラップを終えられなかったのは残念だった。最初のラップではターン19でミスをして、2回目のラップでは第1セクターでパープルを出していたけど、残念ながらイエローフラッグが出てしまった。レースでは時々こういうことが起きてしまい、コントロールできない」と語った。
セルジオ・ペレスはスプリントで苦戦し、9位に終わった。予選では、Q3での最初のラップをトラックリミット違反で失い、2回目の走行でもタイムを出せず、10位スタートとなった。ペレスは「スプリントではペースが少し足りなかったので、明日のレースに向けて改善できるかを見直すつもりだ。予選ではバランスを改善するために変更を加えたが、結果的にそれは良い方向に向かい、多くのペースとリズムを見つけた」と述べた。チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、「スプリントでの勝利に満足しているが、予選でのイエローフラッグには不運を感じている。まだフロントロウに位置しているので、明日のレースで勝利を狙うつもりだ」と語った。
フェラーリの堅実なパフォーマンス
フェラーリはスプリントレースで速さを見せ、カルロス・サインツがチームメイトのシャルル・ルクレールを抜いて2位に浮上。その後、ラッセルも抜き順位を上げた。ルクレールもサインツに続き、後半にはノリスを追い抜くかに見えたが、ノリスはなんとか持ちこたえた。
予選では、フェラーリは2列目を独占。サインツは3位、ルクレールは4位という結果で、彼らの良好なタイヤマネジメントを考慮すれば、決して悪いスタートポジションではなかった。サインツは「全体的に良い土曜日だった。スプリントではマシンの動きが非常に良く、3つのポジションを上げることができた。予選でもタイヤ準備に多くの時間をかけたが、結果的に満足のいく位置に着けた」と語った。チーム代表のフレデリック・バスールは、「全体として良い結果だと思う。特にロングランではペースが良く、レースではオーバーテイクができるし、タイヤのデグラデーションが大きくなるだろうから、この強みは有利に働くはずだ」と述べ、ロングランでのペースに自信を見せた。
メルセデスの苦戦
メルセデスはスプリントレースで苦戦を強いられた。ジョージ・ラッセルはスタートでノリスに負け、その後はタイヤの摩耗に苦しみ、フェラーリ勢にも抜かれてしまった。ルイス・ハミルトンはマシントラブルに見舞われ、順位を上げたものの、チームメイトに迫ることはできなかった。
予選では、ハミルトンがトラックリミットに苦しみ、Q1で敗退するという波乱があった。ハミルトンは「今日は厳しい一日だった。スプリントは昨日と比べて車がうまく機能していない感じがして、苦しいセッションだった。気温が金曜日よりも高く、僕たちにとってはそれが不利に働いた」と語った。
一方のラッセルもQ3の終盤にクラッシュし、他のドライバーが最後のフライングラップを完了できない状況を作り出してしまった。ラッセルは「昨日はスプリント予選でポールを争えたが、今日は本当に苦戦した。マシンの調子が良いときはポールやレース勝利を争えるけれど、うまくいかないときはトップグループの後方に追いやられてしまうんだ」と述べた。
メルセデスのチーム代表トト・ウォルフは、「金曜日の強さを活かせなかったことに対して失望している。スプリントで明らかになったように、我々には競争相手のペースが足りなかった。結果的にP5とP6で終え、さらに両ドライバーが前日に感じていた良好なハンドリングバランスも失ってしまった」と述べ、明日のレースに向けて最大限の努力を続けると語った。
ピレリタイヤと戦略の影響
マリオ・イゾラ(モータースポーツディレクター)は、「非常に興味深い土曜日となったが、ラッセルのクラッシュにより予選のクライマックスが訪れなかったのは残念だった。ポールポジション争いがどうなっていたかを見るのは興味深かったはずだ。少なくとも4人のドライバーがそのポジションを狙える状態だったからだ。スプリントレースも多くのバトルが繰り広げられ、最後まで結果がどうなるかわからないエキサイティングな展開となった」と述べた。
また、ピレリにとってもスプリントレースはミディアムタイヤの長期使用データを収集する良い機会となり、各チームがどのようにタイヤを活用するかが重要な要素となった。イゾラは、「サーキットではピットストップに要する合計時間がそれほど長くない(20.5秒)ため、2ストップ戦略が最も速いオプションとなることが明確だ。各チームがどのようにタイヤを使い分けるかについては、ほぼ全員がミディアムタイヤでスタートすることを試みると予測している」と述べ、レースにおけるタイヤ戦略の重要性を強調した。
アメリカGPのスプリントと予選は、各チームにとって試練の連続だった。マクラーレンのノリスはポールポジションを獲得し、フェラーリ勢も堅実なパフォーマンスを見せたが、メルセデスとレッドブルは予選での不運に泣かされた。それぞれのチームが抱える課題と強みが浮き彫りになり、日曜日の決勝レースに向けてどのような戦略を取るかが注目される。特に、タイヤマネジメントとセットアップの最適化が勝敗を分ける要因となりそうだ。各チームがどのように修正を加え、接戦を制するのか、非常に興味深いレース展開が期待される。