マクラーレンの挑戦:リアウイングがライバルに与えた脅威
マクラーレンはイタリア・モンツァのサーキットで、従来の常識を覆すリアウイングを採用し、その大胆なアプローチが注目を集めています。イタリアグランプリの予選では、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリが見事なワン・ツーフィニッシュを果たし、モンツァのグリッドのフロントローを独占しました。この結果、マクラーレンのMCL38は現時点でF1の中で最も強力なマシンであることが明らかになりました。
オランダグランプリ後には、マクラーレンがどのタイプのトラックでも最速であるか疑問視される声がありましたが、モンツァでの予選結果はその疑念を一掃するものでした。特に注目すべきは、ザントフォールトのような高ダウンフォースが求められるサーキットでの支配力を、モンツァの低ダウンフォースが必要なサーキットでも引き継いだ点です。これは、マクラーレンの空力パッケージの多様性と、その戦略的な柔軟性を証明するものでした。
モンツァでの成功の背後には、3回目のフリー走行後に採用された空力構成が大きく寄与しています。予選では、両方のMCL38がスパ・フランコルシャンで使用されたリアウイングを装備しており、極端な低ダウンフォースバージョンは練習走行のみに使用されました。
この選択は、コーナーでの横滑りを減らし、トラクションを向上させるためにダウンフォースを増やすという目的がありました。特に難易度の高いレズモコーナーでは、後に続く長いストレートでの安定性が重要であり、この選択が功を奏したと考えられます。
このリアウイング選択により、マクラーレンはトップスピードを若干犠牲にしましたが、それでも車の安定性は大きく向上し、立ち上がり加速の改善が見られました。さらに、この選択はタイヤの摩耗を抑える効果も持っていました。モンツァの新しいアスファルトはグリップが低く、タイヤの摩耗が非常に激しいため、このダウンフォースの増加がレース戦略において重要な要素となります。
特に、ワンストップ戦略を選択するチームにとって、タイヤの摩耗を抑えることがレースの結果に直結します。摩耗を抑えたマクラーレンは、ライバルたちよりもタイヤマネジメントに悩まされることなく、レースを完遂できる可能性が高くなります。
この戦略的な調整とMCL38の多様性により、マクラーレンはライバルに強力なメッセージを送りました。彼らは、従来の「モンツァスペシャルのリアウイング」に依存せずにグリッドのフロントローを確保することで、伝統的な成功の方法に頼らない新たなアプローチが可能であることを示しました。この大胆な選択は、パドック全体に警鐘を鳴らし、他チームにとっても大きな脅威となるでしょう。
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