角田裕毅がレッドブルに乗れない本当の理由:ホンダのサポートと制約
今年になり、角田裕毅は好調なレースを増やしており、そのパフォーマンスは着実に評価されつつあります。ファンやメディアの間では、彼がレッドブル昇格候補として期待されているという声も少なくありません。しかし、レッドブル内部からは、角田をトップチームに昇格させようとする動きは見られません。むしろ、レッドブルが昇格候補としているのは、ダニエル・リカルドやリアム・ローソンといった他のドライバーたちです。なぜ、角田裕毅はその中に含まれていないのでしょうか?なぜ彼はレッドブルには乗れないのか?その理由を探っていきます。
角田がレッドブルのF1チームに昇格する可能性が低い背景には、複雑な契約状況とチーム内の政治的な力学があります。彼はホンダの強力なバックアップを受けたドライバーであり、レッドブルの直系のドライバーとは異なる立場にあります。この関係が、彼の将来に大きな影響を与えているのです。
まず、角田のF1キャリアはホンダとの深い結びつきによって形成されています。彼がレッドブルのジュニアプログラムに加入し、現在レーシングブルズでレースを続けているのも、ホンダの強力なサポートがあってこそのものです。しかし、レッドブルのドライバーラインアップは、チームの内側で管理されているものであり、ホンダが直接的に影響を及ぼすことは難しいのです。レッドブルにおける昇格は、通常、レッドブルジュニアプログラムからの実力や結果を基にした評価が中心で、ホンダのドライバーとしての角田にはその枠が狭まるのです。
ちょうど1年前、角田が2024年のシートを失いかけた場面がありました。リザーブドライバーのリアム・ローソンが起用される可能性が浮上しましたが、最終的には角田は今年のシートを守ることができました。一度失いかけたシートを彼が獲得できた背景には、ホンダの間接的な影響力がありました。
つまりこの決定は、正式な契約によるものではなく、ホンダとレッドブルの間で交わされた暗黙の了解に基づくものであり、角田のシート確保は、レッドブルの内情における明確な計画によるものではなく、ホンダの影響力に依存しているのです。
そのため、角田がレッドブルに昇格する可能性は、現実的に見て非常に低いと言えます。彼はレッドブルのドライバーとして見なされておらず、ホンダの支援を受けたドライバーです。ホンダとレッドブルの関係が変化し、ホンダがパートナーをアストンマーチンに変更する2026年以降、角田のF1でのキャリアは不確実なものとなるでしょう。
また、ホンダとの強い関係は、角田のキャリア形成においてメリットだけでなく、制約も生んでいます。レッドブルとしては、将来のトップドライバーを育成し、長期的にチームに貢献できるドライバーを選びたいと考えています。しかし、角田がホンダとの強い結びつきを持つ以上、彼を一流ドライバーに育て上げたとしても、いずれホンダが再び角田を引き抜く可能性があるため、レッドブルとしてはリスクが高い選択となります。チームがそのリスクを冒してまで、角田をトップチームに昇格させる意義は薄いのです。
さらに、角田がレッドブルに乗れない理由には、チーム内の他のドライバーとの競争も挙げられます。現在、レッドブルにはマックス・フェルスタッペンという絶対的なエースが存在し、チームは彼を中心に構築されています。セカンドドライバーとしての座を狙うには、パフォーマンスだけでなく、チーム内での政治的な立ち回りやスポンサーシップのバランスも重要です。しかし、角田はこの点においても、他の候補者、例えばセルジオ・ペレスと比べて劣勢に立たされています。
角田の選択肢は、今後2026年に向けて狭まっていくことが予想されます。アストンマーチンとのホンダの提携が進む中で、角田がこのチームでレースをする可能性が浮上していますが、現実的にはアロンソやランス・ストロールといった確固たるラインアップがあるため、角田がレギュラードライバーとして起用される道は険しいものです。したがって、2026年以降はリザーブドライバーとしてのポジションに落ち着く可能性も考えられます。
もちろん、角田自身がこれからも高いパフォーマンスを維持し、他のチームから関心を引きつける可能性は否定できません。しかし、ホンダとの結びつきが続く限り、他チームが角田をリスクを冒して起用することは難しいでしょう。特に、他チームが一流ドライバーに育て上げた後、ホンダがその成果を享受することになるリスクを避けたいと考えるチームが大半です。
角田裕毅がレッドブルに昇格する可能性は限りなく低く、その理由はホンダとの密接な関係にあるというのは、なんとも皮肉な結論です。来シーズンもレーシングブルズで走ることは決まっていますが、2026年に向けて彼のキャリアは大きな岐路に立つことになるでしょう。彼が今後どのようにそのキャリアを切り開いていくのか、ホンダとの関係がどのように影響していくのかが注目されます。