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オープニングラップのノリスとピアストリの攻防を詳細解説:そこから見えるマクラーレンの課題—イタリアGP 2024

2024年のイタリアGPでは、フェラーリのルクレールが地元でのワンストップ戦略を成功させ、観客を沸かせましたが、レース展開はそれだけに留まりませんでした。特に注目を集めたのが、マクラーレンのノリスとピアストリがオープニングラップで繰り広げたバトルです。ノリスが失速した理由と、マクラーレンの判断ミスについて詳しく見ていきます。

スタートで1−2体制を気づき理想的な展開だったマクラーレン

ノリスとピアストリのバトル

ノリスがスタートを苦手としているのは周知の事実ですが、このレースでは見事なスタートを決めました。加速も安定しており、ピアストリを抑え込むためにイン側のラインをキープ。一方で前を塞がれたピアストリは、アウト側に動きました。その結果、ピアストリはメルセデスのラッセルをブロックし、マクラーレンは理想的な1-2体制で最初のコーナーに進入しました。

ノリスはイン側を守りつつシケインを無難に通過しましたが、続く左コーナーでは、やや不利なライン取りとなり、立ち上がりで加速が遅れます。ここでアクセルを開けすぎたため、リアがスライドし、結果としてスピードを落としてしまいました。その間に、ピアストリは理想的なラインでコーナーを抜け、トウを利用してノリスに急接近します。

ロッジアシケインに飛び込むノリスとピアストリ

ノリスは加速が鈍っていることを自覚し、イン側をしっかり抑えてピアストリのチャレンジを防ごうとしましたが、ピアストリの加速が思いのほか速く、シケイン手前で一瞬前に出られてしまいます。ノリスはブレーキを早めにかけたことで、ピアストリにアウト側を走るスペースを与えてしまい、さらに接触を避けるために、マシンの体勢を崩し、シケイン立ち上がりの加速も遅れました。この結果、ノリスはルクレールにも抜かれてしまい、3位に後退することとなりました。

もしノリスがロッジアシケインでのブレーキングを遅らせていれば、ピアストリのターンインするスペースを狭め、順位を守ることができたかもしれません。もちろん、そうすれば接触のリスクはありましたが、通常ならばアウト側にスペースがあるので、ピアストリが接触を避ける形で順位を守れた可能性が高いです。

これは他のドライバーも用いる戦術で、通常、ペナルティのリスクは低いと考えられます。

ノリスは最初のシケインにイン側からアプローチする
結果的に二つ目のシケインの立ち上がりきつくなる。アウト側からアプローチしていれば、赤点線の緩いラインで立ち上がれるので加速で有利
立ち上がりでリアが流れて大きなカウンターステアを当てていて、これも立ち上がり加速を鈍らせた
ロッジアシケインの手前でピアストリが前に出ている。そのためノリスは早めにブレーキング。もしこの時、ノリスが赤点線のラインまでブレーキングを遅らせていれば、ピアストリはターンインできなかっただろう
結果的にピアストリにアウト側を走るスペースを与えている
さらに接触を避けるために、フルカウンターステアを当てるノリス
そのためシケインの立ち上がり加速が鈍りルクレールにもパスされて3位に順位を落とした

マクラーレンのドライバー戦略

現在、マクラーレンはノリスとピアストリに自由に競わせていますが、この方針はリスクが伴います。イタリアGPで見られたように、ドライバー同士のバトルがチームに不利な結果をもたらし、ライバルチームにチャンスを与える危険があるのです。特に、フェルスタッペンがリードする今、マクラーレンは無駄にポイントを失う余裕がありません。

現実的に考えると、今シーズンのピアストリがチャンピオンになる可能性は低いです。そのため、チーム内ではノリスを優先するべきだという議論が出てきています。フェルスタッペンに挑むことができる唯一のドライバーとして、ノリスに焦点を当てることが、チームにとって最も合理的な戦略かもしれません。

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過去の事例と今後の展望

F1の歴史を振り返ると、1ポイント差でチャンピオンシップが決まった例は数多く存在します。タイトル争いは、チームの収益や評価に大きな影響を与えるため、極めて重要な要素です。そのため、マクラーレンは今後、ドライバー同士に自由を与えるか、それともノリスを優先する戦略的な判断を下すかという難しい選択を迫られるでしょう。

過去の事例を見ても分かるように、ドライバー間の競争は慎重に管理されるべきです。マクラーレンも、このタイミングでドライバーの扱いに対して明確な方針を定める必要があると言えるでしょう。

今シーズンのマクラーレンは、ドライバーの自由な競争を維持するか、チーム戦略を優先してノリスをサポートするかの岐路に立っています。ノリスの経験とピアストリの成長をどのように活かすかが、今後のチームの成功を左右する要素となるでしょう。今後のレースでは、マクラーレンがどのような決断を下すのか注目されます。

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