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サインツ圧勝とノリス奮闘、フェルスタッペン苦戦の一日:メキシコGP 総評

メキシコシティの熱狂的なファンが見守る中、F1メキシコGPは劇的な展開を迎え、フェラーリのカルロス・サインツが冷静な走りで今シーズン2勝目を飾りました。フェラーリ、マクラーレン、そしてレッドブルが熾烈な戦いを繰り広げる中、勝利の栄光を手にしたのはスペインのドライバーでした。一方、レッドブルにとっては失望のレースとなり、タイトル争いに新たな緊張感が生まれました。

サインツの冷静な勝利とフェラーリの躍進

スタート直後、カルロス・サインツはターン1で一度リードを失いましたが、巧妙なレース戦略でフェルスタッペンを再び抜き返し、首位を奪還。その後は堅実なペースを保ちながらタイヤ管理に集中し、ゴールラインまで守り抜きました。「信じられないほど嬉しい!オーストラリア以来ずっと勝利を追い求めてきて、ここメキシコで勝てたのは特別だ。ここはメキシコのファンの熱狂的な応援もあり、僕にとって第二のホームのように感じるんだ。今週末は家族も来ているし、これ以上は望めない」とレース後に語ったサインツは、メキシコのファンの声援を受け、特別な勝利を手にしました。家族も見守る中での勝利は、彼にとって忘れられない瞬間となったことでしょう。

シャルル・ルクレールも序盤でノリスとフェルスタッペンの争いを利用して2位に浮上し、チームにとって素晴らしいスタートを切りました。しかし、タイヤの摩耗が激しく、終盤にはノリスに抜かれ、最終的には3位でフィニッシュ。「厳しいレースだったけど、3位が今の僕たちにできるベストだったと思う。週末を通して少し苦戦していたからね」と語ったルクレールは、チームとしてコンストラクターズタイトルに近づいていることを強調しました。「カルロスにとっては良いレースだったし、チームにとっても大きなポイント獲得になった。チームは素晴らしい働きをしてくれていて、僕たちが望むレベルに戻ってきている。それが目に見えるのは素晴らしいことだ」とも付け加えました。

フェラーリのチーム代表フレッド・バスールも「2連勝できたことに非常に満足している。カルロスは完璧な週末を過ごし、FP1からペースが良く、非常に賢いレースを展開した。スタートでリードを失った後、素晴らしい動きでマックスを抜き、そこからレースを支配した。シャルルも良いペースだったが、バックマーカーでいくらか時間を失い、それが2位を逃した原因になった。でも、正直に言っても彼にとっても良い週末だった。彼が最終結果に満足していないのは理解できる」と述べ、メキシコの特異なコンディションに対応したチームの努力を称賛しました。

タイヤ戦略とその影響

オースティンからメキシコシティへ移動しましたが、サーキット上での戦略には大きな変化はありませんでした。今回のレースでは、ピレリの予測通り1ストップ戦略が最適とされ、ほとんどのドライバーがミディアムタイヤでスタートし、その後ハードタイヤに交換する戦略を採用しました。ピレリのモータースポーツディレクター、マリオ・イゾラは「通常、1ストップ戦略ではタイヤ管理が必要だが、今日はデグラデーションが非常に少なく、ミディアムに多少のグレイニングが見られたもののパフォーマンスに大きな影響はなく、ハードは50周近くにわたって良好に機能した」とコメントしました。

カルロス・サインツもタイヤ管理の重要性を強調しており、「ターン1でインを突いて取り戻せたのが鍵だった。その後はタイヤとペースの管理に徹して、チェッカーフラッグまでスムーズな展開だった」と述べています。この冷静なタイヤ管理が、彼にとって勝利への大きな要因となりました。

また、シャルル・ルクレールはミディアムタイヤでのスタート後、終盤でタイヤの摩耗が激しくなり、ノリスに追い抜かれる結果となりました。「第1スティントはタイヤの温度管理がすべてで、難しかった。その後はチームのポイントを最大化するために走り切るだけだった」と彼は語り、フェラーリにとっても重要なポイントを獲得することができたことに満足感を示しています。

一方、オスカー・ピアストリはミディアムタイヤで39周という最長のスティントを見せ、タイヤを最大限に活用しました。「できる限りのことはやったと思う。車も良い状態だったけど、渋滞の中で苦戦した」とピアストリは述べており、後方からのスタートにも関わらずポイント圏内に復帰するという成果を上げました。

マクラーレンのノリス、冷静な走りで2位獲得

ランド・ノリスは、セーフティカー解除後のフェルスタッペンとの激しいバトルに巻き込まれるも、落ち着いた対応で3位を確保。その後、ハードタイヤに履き替えてからはルクレールを追い抜き、2位に浮上しました。「良いレースだったけど、本当に厳しかった。最初の数周はレースに残ることと、クラッシュを避けることに専念していた。フェルスタッペンとのやり取りは予想していた通りで、それを避けるよう努めたよ。結果的に、今日僕たちは最速のマシンだったと思う。チームとしてとても良い仕事をしているから、引き続き集中し、プッシュし続けるよ」と彼は振り返り、チームの進化を感じさせました。

マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、「ランドはアップグレードした車を完璧に使いこなした。ペースは非常に良く、フェラーリの一台を倒した。実際、データから見ると、フェルスタッペンに足止めされる時間がなければランドは優勝を狙えたかもしれない。これは今後のレースに向けて非常に励みになる」と述べ、ブラジルGPでも同様のパフォーマンスを期待しています。

メルセデスの孤独な戦いと改善への道

メルセデスにとっては、孤独なレースとなりました。ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルは、互いに抜きつ抜かれつの戦いを繰り広げましたが、最終的にはハミルトンが4位、ラッセルが5位でフィニッシュしました。ハミルトンは「結果的には順位を上げ、チームのために良いポイントを持ち帰ることができた。第1スティントではフロントウィングが十分に効いていなかったせいで、アンダーステアに悩まされていたんだ。2回目のピットでバランスを改善できて、ペースも良くなった。第1スティントでこのスピードが出せたとしても、表彰台争いをするには足りなかっただろうけどね」と述べ、第1スティントでの苦戦を振り返りました。

一方、ラッセルはフロントウィングのダメージがパフォーマンスに影響を与えたものの、堅実な走りでフィニッシュ。「第1スティントは順調だったが、第2スティントの開始でオスカー・ピアストリのマクラーレンを抜く際にバンプに乗り上げ、フロントウィングを傷めてしまった。これが1周あたり0.2か0.3秒ほどのパフォーマンスを失わせていたのは残念だ。30周以上そのまま走らなければならなかったが、仮にこれがなくても表彰台争いには足りなかっただろう」と次戦に向けた意欲を見せました。

チーム代表のトト・ウォルフは、「全体として今日の4位と5位が今の車のペースだろう。トラクションの求められるサーキットではトップに立つことができないのがもどかしいが、2025年に向けてさらなるパフォーマンス向上と勢いの構築に向けて懸命に取り組んでいる。これからの数レースは、新たなことを試して来年に備える良い機会になる」と冷静に振り返りながらも、シーズン終盤でさらなる改善を目指す姿勢を強調しました。

レッドブルの苦戦と課題

レッドブルにとっては、非常に厳しいレースとなりました。マックス・フェルスタッペンはスタートでリードを奪うも、サインツに抜かれ、その後のノリスとのバトルで20秒のタイムペナルティを受けてしまいました。結果的に6位でのフィニッシュとなり、「厳しい週末だった。スタートは良かったけど、その後はペースがなくて、レース中ずっと両方のタイヤで苦しんでいた。ペナルティのせいでピットストップも長引いたし、その後はできるだけ多くのポイントを取り戻すための走りだったけど、できることは限られていた。今週末の問題点を理解する必要があるけど、今日はこれ以上のことはできなかったね」と振り返るフェルスタッペンにとっては、苦い結果となりました。

地元レースだったチームメイトのセルジオ・ペレスもペナルティやダメージにより、17位でのフィニッシュを余儀なくされました。「とても難しいレースだった。スタートは本当に良く、レースでもリカバリーしていたけれど、残念ながらタイムペナルティがあった。それでも良いポイントを取れる位置にいたと思う。だけど、リアムとのインシデントがあり、彼はハードタイヤで僕たちより遅かったので、イン側を狙った。ターン5でポジションを取ったと思ったら、彼がコース外から戻ってきてそのまま突っ込んできたんだ。僕のサイドポッドとフロアが完全に壊れてしまった。正直、理解できないよ。完全に避けられた接触だったし、おかげで僕たち両方のレースが台無しになった」と悔しさをにじませました。

クリスチャン・ホーナー代表は、「私たちが期待していたレースではなかった。ペナルティやダメージがレースに大きな影響を与えてしまった。今日のペースには問題があり、どこで差をつけられたのかをしっかり検証する必要がある。昨日は良いペースがあったが、今日は不足していたので、ブラジルに向けて多くの準備が必要だ。ペレスにとってはホームレースだったが、大きなダメージを負ってしまい、さらにペナルティもあってレースが崩れてしまった。これは非常に残念なことだ」と述べ、次戦に向けた準備の重要性を強調しました。

次戦ブラジルへの期待

メキシコGPは、サインツの冷静な勝利と、フェラーリ、マクラーレン、レッドブルがそれぞれの立場で全力を尽くしたレースでした。レッドブルにとっては課題の残る週末となりましたが、シーズンはまだ終わっていません。次戦ブラジルGPでは、さらなる激しいバトルが予想され、どのチームが主導権を握るのか注目が集まります。フェラーリの勢いが続くのか、マクラーレンやメルセデスが逆襲に出るのか、それともレッドブルが巻き返すのか。次のステージも目が離せません。


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