フェラーリ 新フロントウィングの成果：メキシコGPへの期待と不安

フェラーリがオースティンで導入したSF-24のアップデートはどのような成果をもたらしているのだろうか。メキシコGPを目前に控えた現在、フェラーリにとって、そのアップデートがどのようにサーキットでの成果に繋がっているのか、その背景に迫る。

新しいフロントウィングと空力改善

まず、今回のアップデートの中心となったのは、新しいフロントウィングとそれに関連する空力改善である。このフロントウィングは、当初シンガポールGPで基本バージョンとして投入され、その後オースティンではさらに改良が加えられた。オースティンで導入されたフロントウィングは、フレキシブルな構造を持ち、サーキットの高速セクションでの効率を最大限に引き出すためのものであった。複合材料の柔軟性を活かし、形状に変化がないが（だからFIAに申告する義務がない）、内部の構造を調整することでより高い空力効果を実現した。

なぜフレキシブルなフロントウィングが効果的かというと、現ルール下でのF1マシンは低速ではアンダーステア、高速ではオーバーステアになる傾向がある。オーバーステアということは、フロントが強いわけで、高速でフロントウィングをフレキシブルにして、フロント側のダウンフォースを減らすことができれば、高速区間でのオーバーステアが緩和され、より速く走ることができる。

興味深いのは、このフロントウィングのアップデートがレース週末前のピレリテストにおいて既に試されていたことだ。ムジェロでのテストでは、サインツとルクレールの両ドライバーが新しいフロントウィングの可能性を試し、特にサインツはその効果をすぐに感じ取ることができたという。これにより、フェラーリはオースティンに向けて最適化を図り、SF-24をさらに進化させた。

オースティンでの成果と弱点へのアプローチ

実際のレースでは、オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズにおいてSF-24は非常に高いパフォーマンスを発揮した。特に高速セクションではこれまで苦手としていた部分であったにもかかわらず、最速の一角を占めることに成功した。モンツァでのアップデート以降、フェラーリはSF-24の弱点であった長く速いコーナーに対して改善を試みてきた。その結果、オースティンのレースではセクター1で最速のパフォーマンスを示し、レッドブルやマクラーレンに対して優位性を持つことができた。

これまでのフェラーリのアップデートは、弱点の修正というよりも、単にパフォーマンスを追加するアプローチが多かった。しかし、今回のアップデートでは明確に弱点にフォーカスし、それを克服することを目的とした点が大きな違いである。特にフロントウィングの改善は、車両全体のバランスに大きな影響を与える要素であり、これを柔軟にすることで空力的な効率を最大限に引き出すことが狙いだ。

ドライバーからのフィードバックによれば、この変更はポジティブなものであり、即座に効果を感じたという。ルクレールは高速セクションでの新しいバランスに慣れるまで時間がかかったが、最終的にはスプリントと決勝レースの間に調整を加えることでチームメイトを凌駕する走りを見せた。

メキシコGP 標高の影響とフロントウィングの効果

メキシコGPはSF-24に適したサーキットであるはずだが、最近のF1は天気や路面温度等ほんの少しの変化で、勝ったり惨敗したりと、アップダウンが激しい、不確実性が常に付きまとう。フェラーリにとって理想的なシナリオは、予選で最低でも2列目を確保することである。これは、レースペースのいいSF-24の潜在力を活かすための最低条件だとチームは考えている。

特にメキシコのサーキットは標高が高く、空気が薄いためにクーリングと空力の効率も重要になる。そのため、このフロントウィングのアップデートがどれほど効果を発揮するかが注目されるポイントだ。フェラーリはシーズン終了までに追加のパワーユニットを搭載する計画はないとされているが、これもトラブルが発生しない限りはという条件付きである。ここでのペナルティ回避は、残りのレースにおけるチームの戦略に大きな影響を与える可能性がある。

弱点克服とパフォーマンス向上

これまでのシーズンで、フェラーリは度重なるアップデートを通じてSF-24のパフォーマンスを向上させてきた。しかし、それが常に成功したわけではなく、特に長いコーナーでの不安定さが露呈することもあった。今回のアップデートによって、フェラーリはその弱点を克服し、高速セクションでのパフォーマンスを飛躍的に向上させた。これが今後のレースでどのように生かされるのか、そしてレッドブルやマクラーレンといった競合チームに対してどの程度の優位性を築けるのかが焦点となる。

終盤戦に向けたフェラーリの戦略

フェラーリにとって、このアップデートは単なる技術的な改良以上の意味を持つ。シーズン終盤に差し掛かる中で、ライバルとの戦いにおいて重要な武器となり得るからだ。チームの一体感、そしてドライバーたちの信頼を得るためにも、この新しいフロントウィングが成功を収めることが必要不可欠であり、その成果はメキシコGPでの結果に表れることだろう。今後のフェラーリの戦いに注目したい。