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ダニエル・リカルド 未来の模索:キャリアの転機と勝利への渇望

ダニエル・リカルドは、シンガポールグランプリの週末を迎え、これまでのF1キャリアを振り返ると共に、今後の進退について大きな決断の時が迫っている。レッドブルとRBは、シンガポールGP後に2025年のドライバーラインナップを発表するとされており、リザーブドライバーのリアム・ローソンが角田裕毅のチームメイトとして有力視されている。その一方で、リカルドが今シーズンを通じて自身のF1キャリアを延長できるかも不透明な状況にある。

リカルドは、この不確定な未来について率直に語りつつも、もし今シーズンでF1キャリアが終わったとしても、これまでの成果には一定の誇りを感じていると述べている。「もし今日終わったとしても、これまでの成績には誇りを持っているよ」と語ったリカルドだが、同時にF1での目標、すなわち「世界チャンピオン」という大きな目標はまだ達成されていない。彼はその目標を引退する日まで追い続ける意志を明確にしており、現在もその情熱を持ち続けている。

2022年にマクラーレンから放出されたリカルドは、2023年のシーズンを通じて復帰を果たしたものの、順調なスタートを切ることはできなかった。シーズン序盤には思うようなパフォーマンスを発揮できず、自身が設定した目標には到達できなかったことを認めている。しかし、その後は徐々に改善を見せ、彼自身も調子を取り戻しつつあることを感じている。「シーズンの初めは、自分の目標や潜在能力に到達できていなかったけど、それを少しずつ改善することができたんだ」と、リカルドは語る。

リカルドの所属するチームは、2023年シーズンを通じて多くの新メンバーが加わり、新しい目標や機会が生まれた。その中でリカルドの役割は、チームの成長と成功に貢献することだった。「僕の役割は、チームを助けるために貢献することだ」と語り、チームを支える存在としての責任を感じている。

しかし、リカルドは自分のキャリアが「最後の数年」に差し掛かっていることを実感しており、これからのF1生活において安定を求めている。これまで、彼は複数のチームを渡り歩いてきたが、今後は頻繁な移籍を避け、キャリアの終盤において確固たる地位を築きたいと考えている。「今の僕は、もう少し安定したものを求めていて、このキャリアの最後の数年をしっかり固めたい。あまり移籍を繰り返したくないんだ」と語り、キャリアの安定を望む姿勢を示している。

一方で、シンガポールGP後にリカルドが今シーズンの残りを走り続けるかどうかも議論の対象となっている。リカルド自身も、シーズン途中でチームから交代させられる可能性について耳にしており、その点について「このスポーツでは、クレイジーなことが起きるから、何が起こるか分からない」と慎重な態度を示している。F1の世界では、シートの争奪戦が激しく、また予測不可能な事態が常に起こり得るため、リカルドも現時点で自分の将来を完全には見通せない状況にある。

情報筋によると、ローソンの契約には、レッドブルが来シーズンのレースシートを提供しない場合(または他のチームでシートを見つけない場合)、ある期限内に彼が契約から解放されるという条項があるとのことだ。ローソンは2019年からレッドブル・ジュニアチームの一員だ。それが、シンガポールGPがリカルドの最後のレースになるかもしれないという噂に繋がり、ローソンが早期に起用される可能性があるという。

リカルドが、このレースが最後のものになる可能性について尋ねられた際、彼は「そうは思わないけど、弁護士のように話したくはない」と答えた。

「僕はノーだと言うだろうけど、このスポーツの仕組みは知っている。シーズンを最後まで戦い抜けないドライバーもいる。ある意味では珍しいことではない。だから、100%確実だと言って、全部賭けるつもりもない。僕はこの世界に長くいすぎたんだ」

さらに、リカルドは他のカテゴリーでのレース参戦に関しても言及しており、例えばインディカーやNASCARといったシリーズについて考えたこともあるが、F1に対する情熱がまだ残っていることから、そうした選択肢には慎重な姿勢を見せている。特にインディカーについては「まだ怖い」とし、オーバルでのレースに対する恐怖感を率直に述べている。また、他のモータースポーツシリーズに転向した場合、その情熱が完全に満たされるかどうかも不透明だと語り、F1に対する未練を垣間見せている。

もしレッドブルがリカルドを交代させることを決定した場合、彼の他の選択肢は限られている。2025年のグリッドには1つのシートしか残っておらず、それはザウバー(アウディ)で、そこではバルテリ・ボッタスがシートを保持する最有力候補だ。リカルドがザウバーと話をしたという情報はない。

そして、もしレッドブルでうまくいかなかった場合、彼はF1を去る可能性が高いとみられている。たとえ今回の復帰で彼がF1でのレースをどれだけ愛しているかを再確認したとしてもだ。

「僕は確かに2022年の後、再びこのスポーツに恋をしたね」と彼は言った。「そうだね、このシーズンを楽しんできた。全ての週末が完璧だったわけではないけど、レースを楽しんでいるし、競争を楽しんでいる。運転することも楽しんでいる。だから、その点で僕はまだこのスポーツを愛しているけど、自分にこう言い聞かせなきゃいけない、OK、僕が戻ってきた理由は何だ?再びトップに立とうとするためだったんだ。楽しんでいるよ」

「でも、ポイントが取れないときは、確かにそれほど楽しくない。僕はもう35歳で、先頭集団にいたことがある。シャンパンも味わった。それを再び実現する可能性がないかもしれないものに固執したくない。だから、僕はそのことについて頭の中でいろいろ考えたこともあるんだ。だから、そうだね。来年のどんなチャンスにも飛びつくとは言えない。それはないよ。むしろ、平穏に受け入れるだろうね」

今のところ、彼は自分がコントロールできることに集中している。それは今週末の彼のパフォーマンスだ。

「最終的には、自分自身に集中する。それが僕が過去から学んだことでもある。あまり他のことにとらわれないようにすることだ。そういうものは常に存在するし、いつもあるんだ。自分がコントロールできることをコントロールすることだ」

「そして、それは僕がベストを尽くし、今自分がしていることを楽しんでいることを確認することだ。今シーズンは浮き沈みがあったけど、今日ここに立っている今も多くのプレッシャーと憶測がある。でも、まだここにいることを嬉しく思っているし、明日車に乗るのが待ちきれない。そして、その後に何が起こるか見てみよう」

リカルドの言葉からは、これまでのキャリアへの誇りと、未達成の目標に対する焦燥感、そして安定した未来を築きたいという希望が入り混じっていることが伺える。シンガポールグランプリ後の彼の未来がどのような形で決定されるのか、彼が再びF1の舞台に立ち続けるのか、それとも別の道を歩むのか、その決断の瞬間が近づいていることは確かだ。

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