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フェラーリの挑戦:SF-24の進化と2025年への布石

フェラーリがシーズン後半に向けて取り組んできた開発戦略には、SF-24の改善と来季の車両に向けた重要なエアロダイナミクスの革新が組み込まれている。特に注目すべきは、フェラーリが新しいフロントウィングを導入し、モンツァでの成功をバネに、その後の2連戦でも勝利を求めたことだ。しかし、バクーやシンガポールといった市街地サーキットでは期待外れに終わった。

モンツァでの勝利とその後の課題

シーズン後半のレースの中で、モンツァ、バクー、シンガポールはおそらくフェラーリの特性に最も合っていた。モンツァでの勝利は、フェラーリにとって地元での重要な勝利であった。ただしイタリアでは、純粋なペースはマクラーレンの方が速く、彼らはピット戦略でマクラーレンを上手く出し抜くことに成功した。シンガポールやバクーのような市街地サーキットでは、マクラーレンに匹敵するパフォーマンスを見せたが、ドライバーとチームの判断ミスにより勝利を逃した。

実力をポイントに換算することができなかったのが、フェラーリの課題として浮かび上がった。バウンシング対策としての改良が功を奏し、マクラーレンに次ぐパフォーマンスを見せたものの、完全にその能力を引き出せなかった。これにより、コンストラクターズポイントを落とし、マクラーレンに対する追撃が難しくなったことは痛恨の極みである。

特にシンガポールGPにおいては、フェラーリは予選でタイヤ温度の管理を間違え、優勝争いができる速さがあったにも関わらず、失速してしまった。マシンのポテンシャルが引き出せない状況では、トップ争いに加わるのは難しい。フェラーリは今後のレースに向けて、特にオースティンでのパフォーマンス向上に取り組む必要がある。

新しいフロントウィングとエアロダイナミクスの進化

シンガポールで、フェラーリは新しいフロントウィングを先行導入した。この新しいフロントウィングは、フェラーリが今後のサーキットでどのようにパフォーマンスを向上させていくかを示す重要な指標となる。このフロントウィングは、前年のモデルに似た設計で、さらなるダウンフォースを提供するために開発されたものだ。特にミディアムからハイダウンフォースが求められるコースで効果を発揮し、オースティンでのさらなるデータ収集と最適化を目指している。

「4週間の準備期間があるので、弱点を理解し、オースティンに向けて改善していくつもりだ」とヴァスールはコメントしている。フェラーリの開発スタッフは、フロントウィングの改良は、イモラでのボディ形状の大幅変更以来、SF-24の課題解決のための重要なステップと位置づけている。

また、このフロントウィングの設計には、ただ単にしなりを増やすということ以上に、フロントエンドの強化が重要視されている。特にオランダGPでの挙動がきっかけとなり、早期に導入された仕様である。これにより、ラスベガスGPでは小さなフラップを追加し、低ダウンフォースサーキットでの対応も視野に入れた改良が進められている。

未来への布石:2025年モデルの開発

フェラーリの開発はSF-24に留まらず、2025年に向けた新たな車両開発にも着手している。シンガポールGPで導入された新しいフロントウィングは、実際には2025年モデルに反映される空力の一端である。2025年モデルは、現行のレギュレーション下で最後の変革をもたらすものであり、フェラーリにとっても重要なマシンとなる。

特に注目すべきは、エアロダイナミクス部門がこの新車プロジェクトを指揮し、プルロッドサスペンションや空力フローの管理を含む新しい技術的な進化を実現する点だ。これにより、フェラーリはさらなる空力的なアドバンテージを得ることを目指している。今後のレースに向けて、オースティンやラスベガスでのパフォーマンスが鍵となるだろう。

リソースの分配と風洞の改修

フェラーリの今後の課題は、現行のSF-24の改良と2025年モデルの開発リソースのバランスをどのように取るかである。ヴァスール代表は、風洞の改修が完了次第、2025年モデルに全力を注ぐとしつつも、現在のマシンにも引き続き改良を施す方針を示している。風洞の使用時間が限られる中で、CFD(計算流体力学)を活用した新しいコンポーネントの導入がどこまで効果を発揮するかが注目される。

また、エンジン部門では2026年の新レギュレーションに向けた準備も進行中であり、これがアドバンテージをもたらす可能性もある。フェラーリが今後どのように技術的な挑戦に応えていくか、特に来季に向けた開発とレースパフォーマンス向上のバランスが焦点となる。


フェラーリは現在、SF-24の改良と来季の車両開発という二つの大きな挑戦に直面している。モンツァでの勝利や市街地サーキットでの速さが示すように、低速と高速サーキットでのパフォーマンスは一定の成功を収めているが、それ以外のサーキットではさらなる改良が必要だ。新しいフロントウィングの導入で、今後のレースでどれだけの成果をもたらすかが試される。一方で、2025年モデルへの移行が進む中、フェラーリの開発体制はますます重要な局面を迎えている。

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