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フェルスタッペンの逆襲とアルピーヌ 驚異のダブル表彰台:波乱のブラジルGP総評

ブラジルGPの決勝レースは、まさに波乱とドラマに満ちた一日となりました。レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、予選でQ2の赤旗での脱落とエンジン交換のペナルティにより17位スタートを余儀なくされましたが、見事なドライブでトップまで駆け上がり、6月以来のグランプリ勝利を果たしました。一方、セルジオ・ペレスはスタート直後にスピンし、厳しい展開を強いられました。ポイント圏内まで戻ったものの、最後はハミルトンにも抜かれ、11位でフィニッシュしています。

フェルスタッペンは、スタート直後から素晴らしい加速を見せ、1周目でポジションを大きく上げると、その後も圧倒的なペースで走ります。多くのドライバーがリスクを避けて追い抜きができないなか、フェルスタッペンひとりだけが桁違いの速さを見せ、次々とオーバーテイクを見せたのは、まさに彼が世界最高のドライバーであることを全世界に見せつける結果となりました。

さらにVSC(バーチャルセーフティーカー)の間にピットに入らないという判断が功を奏し、その直後に赤旗が出たことでピットレーンで自由なタイヤ交換を得ることができました。この幸運な展開も手伝い、2位まで順位を上げたフェルスタッペンは、その後オンコースでアルピーヌのエステバン・オコンをオーバーテイクし、堂々の勝利を飾りました。

ただこの状況も単なるラッキーでは、ありませんでした。雨が強くなることが予想されていて、そうなれば赤旗が出る可能性があることは予想できました。ただ問題は強くなる雨の中で、長い距離を走っているインターミディエイトで、コースアウトすることなく走り続けるという困難がありました。そしてフェルスタッペンはそれを成し遂げ、ギャンブルを成功させました。

それに加えて赤旗再スタート時に、オコンをターン1でズバッとインを付き抜き去ったことは、お見事としか言い様がなく、まさにワールドチャンピオンの風格を感じさせる別格の走りを見せてくれました。

フェルスタッペンはレース後、「今日は本当に素晴らしかった。ブラジルは特別な場所だからここで勝てて誇らしいし、P17スタートからの勝利だからなおさらだ。まずはチームに大きな感謝を伝えたい。みんな素晴らしい仕事をして、全ての判断が的確だったし、とても冷静だった。スタートも良く、いくつかの良いオーバーテイクを決め、赤旗前にピットに入らないという正しい決断ができた」。

「僕はいつも雨の中での自信があるけど、今日はクルマがその自信を後押ししてくれて、まるで無敵のようだった。正直、こんな結果を期待していなかったから、自分でも驚いている。最高の結果で、誇らしいよ。シンプリー・ラブリー!」とコメントしています。彼の言葉からも、この勝利がいかにチーム全体の努力の賜物であるかが伝わってきます。

一方、アルピーヌの2人は対照的な予選を見せましたが、決勝では見事な結果を出しました。エステバン・オコンはVSC中にピットに入らず、赤旗で一時トップに立つ場面もありました。最終的にはフェルスタッペンに追い抜かれたものの、堂々の2位でフィニッシュし、表彰台を獲得しました。ピエール・ガスリーもリスタート後に3位を守り切り、アルピーヌはダブル表彰台という素晴らしい結果を達成しました。

オコンはレース後、「今日は夢を見ているのか現実なのか分からないくらい嬉しい。チーム全員を本当に誇りに思う。1レースでこれだけ多くのポイントを獲得できるなんて、昨日の時点では想像もしていなかった。レース序盤でトップに立った時は、少しだけ勝利を信じたけれど、マックスが最後のスティントで僕らよりも速かったので、結果に後悔はない」。

「最後のラップでピエールと一緒に表彰台に立つことを考えながら走っていて、カート時代のことを思い出した。今日の表彰台は一生忘れないだろうし、チーム全員に感謝している」と語り、その喜びを隠しきれない様子でした。

ガスリーも「チーム全員にとって本当に素晴らしい日だ。僕たちがダブル表彰台を達成できるなんて誰も想像していなかったけど、やってのけた。この1年、僕たちは苦しい時期もあって、それでも誰も諦めず、集中とモチベーションを保ち続けた。今日は何が起こるか分からないコンディションだったから、準備を万全にして全力でやり切ることが重要だった」。

「エステバンも素晴らしいレースをしたし、彼と表彰台を共有できたことに感謝している。今はチャンピオンシップが接戦だから、残り3戦も貪欲に頑張り続ける」と喜びを表現しています。

アルピーヌのチーム代表であるオリバー・オークスも、「3連戦の締めくくりに素晴らしい結果で終えられたことは本当に嬉しい。雨天による予選の延期や、スタートの遅延で朝早くからバタバタしたけど、難しいコンディションの中、両ドライバーともミスを犯さず、素晴らしいレースをしてくれた。エンストンとヴィリーの全員にとってもこの結果は大きな成果だ。これを勢いに、シーズン最後のレースも強い走りを見せていきたい」とコメントし、チーム全体の努力を称賛しました。

メルセデスは、ジョージ・ラッセルがスタート直後にリードを奪い、第1スティントでは完璧な走りを見せましたが、VSC中にピットインした後、赤旗によりフリーのピットストップの恩恵を受けられず、最終的には4位でフィニッシュしました。ラッセルはレース後、「すごく厳しいレースだったし、学ぶべきことがたくさんあるね。スタートは良く、第1スティントのペースも驚くほど良かった。タイヤの空気圧の設定はあまり良くなかったけど、持ちこたえられてよかったよ」。

「VSC中に雨が強まってきたときは、赤旗が出ると思ってピットに入らずにステイアウトしたかったけど、ピットに入ることを選んでしまった。後からなら簡単だけど、僕たちは一緒にベストを尽くして判断したし、全ての情報をもとに決断しているからね」と振り返り、悔しさをにじませました。

ルイス・ハミルトンも下位からのスタートとなり、なんとかポイント圏内まで順位を上げたものの、トップ争いには絡めませんでした。ハミルトンは「今日のレースは本当に厳しかったし、正直言ってシーズンでも最も難しいレースウィークのひとつだった。クルマは一日中扱いにくく、レースでも全くフィーリングが良くならなかった」。

「それでもファンの存在のおかげで、この結果にもかかわらず不満には思わない。朝早くから列を作ってくれていて、彼らの献身とポジティブさには本当に感動した。今日は特別な瞬間がたくさんあったし、彼らと一緒にレースをできて感謝しているよ」とコメントし、ファンへの感謝を忘れませんでした。

フェラーリ勢は、シャルル・ルクレールが序盤で一時的にフェルスタッペンを抑える場面もありましたが、最終的には5位でレースを終えました。ルクレールは「本当に長くて厳しいレースだった。今日表彰台に上がったドライバーたちは、ミスなく走り切ったからこそ、その結果を手にしたんだと思う。僕たちも良いスタートを切ったが、その後のペースが足りなかった」。

「それでも、マクラーレンの2台の前でフィニッシュできたのはポジティブな驚きだったし、コンストラクターズチャンピオンシップでの争いにとっても良い結果だ。次のトリプルヘッダーに向けて一旦充電して、チームのタイトルを獲得するために全力を尽くしたい」と前向きなコメントを残しています。

カルロス・サインツはスピンアウトし、リタイアという厳しい結果に終わりました。サインツは「間違いなく、今日は忘れたい日だ。こんな長い一日でチームに余計な仕事をさせてしまって申し訳ない。僕は今年、この車でのウェットレースで苦しんでいて、今日もそのフィーリングが掴めなかった」。

「ポジションを上げるためにリスクを取ってプッシュしたが、結果として上手くいかなかった。消化しがたい日曜だけど、ラスベガスに向けて切り替えていく」と語り、悔しさを滲ませつつも次戦に向けて気持ちを切り替えています。

マクラーレンのランド・ノリスは、予選でポールポジションを獲得したものの、決勝ではVSCと赤旗のタイミングが災いし、6位に終わり、彼は次のように述べました。「タフな午後だったよ。VSC下でのピットインが勝負の分かれ目だったけど、ピットに入るタイミングとしては間違っていなかった。でも、直後に赤旗が出たことで損をしてしまったんだ」。

オスカー・ピアストリも接触によるペナルティを受けながらも8位でフィニッシュしています。ピアストリは「難しい午後だったけど、2台揃ってポイントを獲得できたし、チャンピオンシップでもリードを保っている。ペースが足りなかったし、天気が混乱を引き起こして、やれることは限られていた」。

「この後すぐに振り返りをするけど、気持ちを切り替えてラスベガスでまた頑張りたい。シーズン最後の3戦に向けて、まだやるべきことがたくさんあるよ」とコメントし、次戦に向けた意気込みを語りました。

当日のトラック状況は非常に厳しいものでした。前日の悪天候により予選は朝7時半に延期されてスタートし、雨が影響したためドライタイヤは一度も使用されませんでした。レース開始も12時半に変更され、激しい雨により赤旗が出たものの、数回のセーフティカー導入を挟みながら無事に進行しました。インターミディエイトタイヤが主に使用され、全体で33回のタイヤ交換が行われたほか、エクストリームウェットタイヤも一部のドライバーが使用しましたが、その後の赤旗で状況がリセットされ、リスタート時には再びインターミディエイトが最適な選択となりました。

ピレリのモータースポーツディレクターであるマリオ・イゾラは、「今日はまさに大忙しの一日だった!これまでにも予選とレースが同日に行われたことはあるが、こんなに早朝からタイムスケジュールが詰まっているのは初めてで、F1関係者の多くは夜明け前にアラームで起きたに違いない」。

「週末のプログラムが全て完了するように尽力した全ての関係者に拍手を送りたい。昨日の午後から天候が複雑になったにもかかわらず、インテルラゴスには週末を通じて約30万人の観客が集まり、テレビやソーシャルメディアを通して視聴していた人々も、予選とレースの両方で興奮するような内容を楽しめたはずだ」。

「雨が降るとグリップが低下するためドライバーの技量が引き立ち、多くの感情が交錯するのがこのスポーツの魅力だ」と語り、予選とレースの両方が観客にとってエキサイティングなものとなったことを強調しました。

これでドライバーズチャンピオンシップで、フェルスタッペンはノリスとの差を62点に広げ、残り3レースとスプリントレースがあるものの、チャンピオンの行方は大きくフェルスタッペンに傾きました。

それにしてもこの日のフェルスタッペンの走りは別格でした。チャンピオン争いの中、リタイヤが絶対に許されない状況で、インフィールドでオーバーテイクを仕掛ける勇気と、自分の能力に対する絶対的な自信。ライバルに対して、得点差を広げた以上に、メンタル面で大きな打撃を与えた今日のフェルスタッペンでした。

今回のブラジルGPは、波乱の展開が多く、特に天候の変化が各チームの戦略に大きな影響を与えました。フェルスタッペンの見事な復活劇とアルピーヌのダブル表彰台が象徴するように、ドライバーたちの技量とチームの判断が勝敗を分けたレースとなりました。各チームとも、この結果を踏まえてシーズン最後の3戦に向けてさらに準備を進めることでしょう。次のラスベガスGPでも、再び激しいバトルが繰り広げられることが期待されます。

ブラジルGP 最終結果
ドライバーズチャンピオンシップ ランキング
コンストラクターズチャンピオン ランキング

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