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小松礼雄が導くハースの新たな挑戦
2024年のF1シーズン、ハースはVF-24を走らせ、ミッドフィールドの中でその存在感を示した。最終的に目標としたコンストラクターズランキング6位の達成には至らなかったが、数多くのポジティブな成果が見られた年となった。その裏にあったのは、チームプリンシパル小松礼雄の的確なリーダーシップと地道な努力である。
2023年からの反省と進化
2023年、ハースはコンストラクターズランキング最下位の10位に沈んだ。予選では一定の速さを見せたものの、タイヤの摩耗が激しく、決勝での競争力が著しく欠けていた。この苦い経験を経て、小松礼雄はチームプリンシパルに就任した。最初の課題は、チーム内の構造的な欠陥を改善し、特にイタリア・マラネロの空力部門とイギリスの機械・物流部門との間のコミュニケーションを円滑にすることだった。
小松がチーム代表に就任した時点では、すでにチームやマシンの基本構造は出来上がっていた。しかし、彼の貢献によっていくつかの重要なポイントが改善された。シュタイナーや元テクニカルディレクターのシモーネ・レスタ(その後メルセデスへ移籍)との決別後、ハースは特に注目されるような高位の人材を新たに採用することはなかった。人員はほぼそのままで、マクラーレンのアンドレア・ステラの例と同様に、小松は現有のグループから最大限の力を引き出す必要があった。
小松はこの取り組みについて次のように語っている。「正直に言うと、魔法なんてありません。面白い話ができなくて申し訳ないですが、特別なことは何もないんです。基本を非常に、非常に、非常にしっかりやり遂げて、チームとして働くことです。それが全てです」。
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小松礼雄の挑戦:信頼回復とチームの拡大
小松礼雄にとって最も重要だったのは、2023年の満足感の乏しいシーズンと、チームの成長方法をめぐる意見の食い違いの影響で損なわれたジーン・ハースとチーム間の信頼を回復することだった。
チームの好調なパフォーマンスは、士気だけでなく、経済面でも大きな助けとなった。例えば、2023年にウィリアムズがコンストラクターズランキングで7位を獲得したことで、FOMからの賞金が増加し、オーナーであるドリルトン・キャピタルがさらに投資を増やす動機となった。成長するチームは投資家の信頼を得やすく、それがさらなる強化に繋がるという好循環を生む。
そうした意味で、昨シーズンの好調は、ジーン・ハースからのさらなる支援を引き出す原動力となった。
効率化と基盤の強化
ハースが直面していたもう一つの課題は、リソースの制約だった。2023年には従業員数を230人から約250人(ちなみにトップチームは2,000名弱の人員を抱えている)に増やしたが、まだ必要最低限の人員に達していない。小松は、人的資源の拡充を急務としていると述べた。
「現状では、常に限界まで追い込まれています。何かが起きると手が回らなくなり、持続可能な状態ではありません。もっと多くの人材が必要です」。
この背景には、他の中小規模チームと同様、予算やリソースの不足に起因する困難がある。特に大規模チームが圧倒的な人員と資金力で開発を進める中、ハースのような小規模チームは効率的な運営と的確なリソース配分が求められる。
2024年には新たなモーターホームが導入され、効率的なコスト管理が進められた。また、トヨタとのパートナーシップを通じて新たなリソースを確保し、イギリスに新しいシミュレーターを建設中である。このシミュレーターは、これまでマラネロのフェラーリの施設を使用してきた際の制約を解消し、チームの柔軟性を大きく向上させるだろう。
小松はこれについて次のように述べている。「新しいシミュレーターは、我々の作業プロセスに大きな変化をもたらします。フェラーリのシミュレーターでは利用時間が限られていましたが、これからは我々のタイミングで必要なだけ使用できるようになります」。
バジェットキャップへの挑戦
2024年の目標達成には至らなかったが、ハースは2025年に向けてさらなる高みを目指している。その鍵を握るのが、バジェットキャップの上限に到達するための計画だ。
ハースは近年の課題だったサプライヤーとの契約条件の改善や、アップデートが期待通りに機能することを証明することで、ジーン・ハースのプロジェクトへの信頼を取り戻した。この信頼と、2023年のコンストラクターズランキング7位という結果が、2025年にバジェットキャップにほぼ到達する可能性を生み出した。
小松は次のように述べている。「2025年にはバジェットキャップの上限に達することを目指しています。ハースが本当に競争力を持ちたいのであれば、この上限に近づく必要があります」。
これまでバジェットキャップに届かなかったハースにとって、この計画が実現すれば、トップチームと渡り合うための基盤が整うことになる。この目標達成には、スポンサーシップの拡充やFOMからの分配金増加が必要不可欠であり、2024年のパフォーマンスが重要な意味を持ちます。
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チーム文化と人材の育成
小松が注力しているのは、チーム文化の醸成と人材の育成だ。特に大手チームからハースに移籍してくる人材の増加が注目されている。
「小さなチームでは、全体像を理解し、幅広い役割を担うことが求められます。これを魅力的だと感じる人にとって、ハースは非常に良い環境です」。
また、小松は「チームに適した性格の持ち主を引き寄せる」ことの重要性を強調している。これは単なるスキル以上に、ハースの価値観と調和する人材を確保する戦略だ。
さらに、彼はチームの成果が人材獲得にもたらす影響について次のように述べている。「結果を出すことで、我々が真剣に取り組んでいることを示せます。それが新たな人材を引き寄せる一助となります」。
2024年には、新しいモーターホームが導入され、2016年から使用されていた旧型を置き換えた。これは目立つ投資ではないが、ピットウォールの人員削減で輸送コストを削減するなど、コスト管理に努めてきたハースにとって、小規模ながら重要な改善の一環である。労働環境の改善は、優れた人材を引き寄せる要因となる。
2025年への展望
2024年シーズンの進展は、ハースが中長期的な成功を収めるための基盤となるものだ。小松は、現時点での成果を土台に、さらなる成長を目指している。
特に注目すべきは、トヨタとの協力関係やシミュレーターの導入など、インフラ面での強化だ。これらの投資が結実すれば、2025年にはミッドフィールドのリーダーとして名乗りを上げることが現実味を帯びる。
小松は今後について次のように意気込みを語った。「我々はまだ成長の途中です。しかし、正しい方向に進んでいるという自信があります。このチームは、さらに大きなポテンシャルを秘めています」。
小松礼雄のリーダーシップの下、ハースは単なる参加者の枠を超え、競争力を持つチームへと進化を遂げつつある。2025年には、バジェットキャップの上限に達し、さらなる飛躍が期待される。これはハースにとって単なる目標ではなく、持続可能な成長を示す重要な指標だ。小松の言葉を借りれば、「基本をしっかりやり遂げ、チームとして一体となる」ことが、この挑戦を成功に導く鍵となるだろう。