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きゅー、しんきゅーしん

8:19発の電車が時間通りに来たことはなく、この日も例によって満員で、ツイスターゲームのように足場を確保しドア付近に立つ。ガラスに浮かぶ死相や指紋から気を逸らすべく、目線を横にずらすと、小さな公告が貼られていた。

仕事も家庭も順風満帆!今日も1日頑張ります!

そう言わんばかりのイケおじリーマンがキリリと前を向き、マントのように広げたジャケットには太いゴシック体で『責任世代に救心』と書いてある。怖。責任世代←怖。救心←怖。ゴシック体も真っ直ぐ伝えようとしてくる感じが怖。

服用したおかげで、
・元気になれた
・元気なフリをし続けられた

広告として後者を打ち出した点が、「現代のリアル=皆とっくに参っている」ことの証拠であるようで、ガラスの向こうに無理矢理ピントを合わせるも、今日は傘を持ってきていない。仮面夫婦、経済格差、雇用機会、育児補助、過労死、孤独死、世間知らずの自分でも浮かんでは消えない単語で頭がいっぱいになったところで、線路内の安全の確認のため一時停止だそうです。

皆まともなフリをして生きている。

心を救って手にするor維持する幸せは、それまでの苦悩を吹き飛ばすほどに尊いものでありますようにと思う。出来れば心を救っていることを一人で処理せず、あわよくば服用から卒業できますようにと願う。

なお、責任世代という単語を久しぶりに聞いたため、参っちゃうよねと思いながらググったところ、「家庭や仕事で重要な役割を担う40〜50代を指す」と出てきて、顔から火ぃ吹きそうになりました。何一つ当てはまっていなかった。末端社員だし、今日の客先訪問も私行かんでええやろと思いながら電車に乗っている。

父親が定年後にアルバイトを始め、その仕事の説明をした後「責任なんかありゃしねぇw w w」と笑い飛ばしていたことがある。私も思わず笑ってしまったが、「今まではあったんだな」と感じて、むしろそっちにグッと来てしまったことを覚えています。では!

☁️最近の夏し
雨雲から一転し、漫画雲が現れし

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