秀作の裏には数えきれない駄作がある
私が初めて振付したのは、名取試験を受ける前の年あたり。
私がいた流派は古典舞踊の他に創作舞踊があり、師範試験には振付がありました。
名取になろうと意識し始めると必然的に振付の勉強もすることになったのです。
まぁ当時は師範になろうというより、純粋に"振付をしてみたい"という気持ちが自然に出てきた、ということではありましたが。
最初は振付すること自体が難しく、教わる振りはすぐ覚えられるのに、いざとなると何も浮かばない。
アウトプットの難しさを思い知りました。
そして当時教わっていた流派は新舞踊を日常的にお稽古していたため、新作は毎月2曲以上ありました。
これは、作る側からすると驚異的なスピードです。
オーダーする長唄や新内などの新曲は年1回ですが、普段は4〜5分の曲を振付していたんです。
似たような振りになりそうですが、全くそんなことはなく、古典と同様女踊り(子供から娘、年増、etc)男踊り(同様に3枚目まで)本当に多彩で、色々な踊り方を短期間にじっくり学べたのは、とても良かったと思います。
その上で新しく工夫された振りなどもあり、勉強する上で創作意欲を掻き立てられました。
この場合はこの振り、みたいなものを何種類思い浮かべられるか。
"こういう感じの女性(男性)だから、あえてこんな仕草、こんな動き、なんてアイデア。
それを全体的な音楽な雰囲気にも合わせ、振りの構成も効果的に考える。
この辺りになると、振付師の感性、センスですが、腕の見せ所でもあります。
感性は勿論あるのが前提ですが、色々な"手"を自由に出せるようになるには、訓練も必要です。
流派の家元として毎月2曲以上振付しなければ、みたいなある意味恵まれた環境でなければ、自分に課して訓練していくしかありません。
私も興味ある曲を見つけた時に振付していたのが、独立して、毎日頭を悩ませるように。
すぐ教えるようになったわけではありませんが、振付をしなければ自分自身も踊れません。
"週に1曲は振付する"と決めて、とにかくひたすら振付する日々を3年は費やしました。
今まで教わった振りも省みつつ、どんな駄作だろうと、とにかく振付。
だんだん全体が見えるようになって、振りも構成によって最適なものを選べたり、新しい動きを入れてみたりできるようになりました。
動きの可能性を増やすために中国舞踊を習ったりもしました。
最初は、作ってから少し"寝かせて"また手直しすると良いものになって、それも嬉しかったのですが、だんだんと1発で良い振りが出来上がるようになりました。
実は振付作品は500曲近くありますが、恐らく3分の1から半分くらいは手直ししないと踊れない、と思います笑
それでも今は曲を聴いて"あゝ、こんな感じの踊り"と思うとほぼイメージ通りの振付ができるようになりました。
曲を聴いてイメージでき、踊って更に気持ちが育って、曲の世界を体験したような気持ちにさせることができるのが良い振付だと思っています。
そんなふうに自在に振付するためには同じくらいの量の駄作が陰にある、ということでしょうか。
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