SENSE OF WONDER×のびのび読みオンラインイベント 後編
Q1 翠さんとあいみさんが子どものころに読んで思い出に残っている本や読書体験はありますか?
松尾翠 私が覚えているのは、小さいころからお母さんがずっと読んでくれていた「ノンタン」(キヨノサチコ作・絵)。ボロボロになっても、今でもうちにいるんです。新しいノンタンも買ってるんですけど、これなんかは昔のノンタン。本当は表紙も紫だったんだけどね。
特に、「ノンタンおやすみなさい」と「ノンタンあわぷくぷくぷぷぷう」と「ノンタンサンタクロースだよ!」をお母さんがどんなふうに読んでくれていたかってところまで覚えていて。「ノンタンサンタクロースだよ!」に出てくる歌を、メロディがあってるかはわからないんだけど、お母さんは何100回と歌ってくれていたから、それが私が絵本を読むことを楽しむきっかけになってる気がするかな。やっぱり子どものときに、お母さんは読むのが仕事の人じゃないんだけど、寝る前に毎日絵本を読んでくれてたってことがとにかく一番うれしいことでさ。うまいとか下手とかってことじゃないじゃん。これは実感するかな。私のなかに残っています。
原あいみ 私は、にしまきかやこさんの「わたしのワンピース」(こぐま社)。この絵本を「これ読んで、これ読んで」ってよく持ってきていたというのは、母に聞いていたんですけど、残念ながら、読んでもらっていた記憶がなくて、母がどう読んでいたのかっていうのは鮮明には覚えてないですね。でも、母が絵本大好きだったので、家の中には絵本も図鑑もたくさんありました。好きだった本は本当にたくさん、シーンなんかも覚えてますし、ボロボロになるまで読んだ大好きなページもあって。もしかしたら、それが絵が好きになったきっかけかもしれないなと思います。
松尾翠 どういう残り方をするかって、本当に福袋みたいなものというか、結果がわかって今やることじゃないからわからないんだけど、きっと何か細胞のなかにちっちゃく残るというか、直接的なことじゃなくても残るといいなあって思ったりしますね。
Q2. 2歳の男の子です。寝る前に1冊絵本を読むようにしているのですが、好きなのを持ってきてというと図鑑やクイズの本を持ってきます。ストーリー性のある本も読んでほしいのですが、ストーリーとなると動画になりがちです。絵本を子どもと一緒に楽しむために大切にされていることはありますか?
松尾翠 図鑑とかもいいですよね、本当に。
原あいみ クイズでも全然、本人がそれが楽しいなら、物語のない本でも全く問題ないと思います。うちも最近はレシピ本とか工作の作り方とかそういうのが好きなんですけど、それを読み聞かせしたりしています。たくさん絵が並んでいる図鑑みたいものだったら、「どれが好き~?」ってやったりとか、物語じゃないものでも全然楽しめるので、よいのではないかなと思います。あと、楽しむために大切にしていることは、まあ、わざわざ考えているわけじゃないですけど、本人より自分自身が楽しむこと。ママが楽しそうだと一緒に読んでる子もきっと楽しいと思うので、「ママに見せてよ!」くらいの感じで自分が楽しむようにしています。
松尾翠 でもそれ、わかります。読むにしても、あわてて読むよりも、今日こんな声だしてみようかなとか、自分の聞きたい声を出すというようなことを心がけていて、絵本読むときに怒ることってできないし、読みながらテンポをゆったりにもっていきたいと思ったら、ゆったりめのテンポで読むようにしたりとか、そうすると子どもたちも一緒のテンポでゆったりとしていくのが面白いし、自分自身が読んだ後にホッとしたりするなあと。ほんと、ストーリー的なものを読んでほしいっていう気持ちもめっちゃわかるし、でもそれが写真集で、文字がなくても一緒にそれを見ながらお話したり、その時間を持つことが、たぶん子どもとのふれあいで、うれしいことだと思うから。うん、なんでもいいよ。あっという間に、気づいたら物語のあるものにハマったりするかもしれないし、きっかけはいつどこでくるかはわからないよね。その子のタイミングで来るかもしれないし、ま、来ないかもしれない。それもOK!(笑)くらいで大丈夫だと思います。
Q4 いつも可愛い絵に癒されています。表情や行動がもうすぐ3歳になる息子にそっくりでニヤッとしてしまいます。絵本に出てくるライオンのぬいぐるみはお嬢様のお気に入りだったものですか?
原あいみ うちの娘も0歳の時に初めて私の母、ばあばに買ってもらったぬいぐるみがあって、でもそれは猫のぬいぐるみなんです。そのままじゃないんですけど、なんかあのクタクタってしたフォルムはうちの娘が友達になったそのぬいぐるみを模していて、ちょっとモデルにしています。
松尾翠 出てくるちっちゃいぬいぐるみひとつとっても、なんか親近感があるというか、また魅力ですね。
Q3 にこちゃんシリーズはまだまだ続きますか?
原あいみ はい、最近言っていいよって言われたんですけど、5巻がでることになりました!!
松尾翠 やったああ!熱いねぇ。楽しみですねえ。
原あいみ まだ下書きなんですけど、ダミーの本を作って、こんな絵がいいかな、こんなお話がいいかなっていうのを今まさに作っているところです。
松尾翠 今描いてるのって、ペン?鉛筆ってこと??
原あいみ 全部iPadで描いていて、
松尾翠 iPad!!!??
原あいみ そうなんです。iPadの鉛筆タッチみたいなので描いてます。
松尾翠 そうか、それで描いたものを送って、印刷したのが今のもの(ダミーの本)てことですね。へえええええ。今漫画家さんとかもやっぱりそういうデジタルで描かれる方が多いという情報は入手したのですけど。
原あいみ もう、全然楽です。画面上でちょっと大きくしたり小さくしたりとか、「あ、にこちゃんの目もうちょっと上だったらいい表情になるかな」っていうときも、鉛筆だったら消しゴムで消してもう一回描かなきゃいけないんですけど、iPadだったらちょっと動かせばできるんですよ。
松尾翠 そっか、目だけ動かす下げるっていうことができるんですね。
原あいみ そうなんです。ちょっと目を小さく描きすぎちゃったなと思ったら、チュッと大きくしたりとか。
松尾翠 えええ、すごい!色塗りも、ベタ塗とかをしなくていいってことですよね?
原あいみ そうです。まあ、モノにもよりますけど、筆のタッチをだしたい時は、まさに紙に描いているように、たまたまiPadの上っていうだけで、やってることは一緒だったりするんです。にこちゃんは本当にペタッと塗るので、色はパソコンでつけて仕上げています。
松尾翠 なんか、面白い。未知なる世界。。でも、これからの子どもたちはiPadで絵を描くみたいなことを、私とか以上にどんどんできるようになって、すぐにその職業、例えばイラストレーターになりたいと思った子は、すぐそれで対応していけるんでしょうね。今後はむしろその力が必要になってくるのかな。
原あいみ うちも娘が、私がiPadで描いているのを、それをもう普通のこととして見ているので、貸してってiPadで描いたりするんですけど、小さいころからこういうものがあふれているので、感覚的にわかるみたいで、なんかうまく使うなあって思いますね。
松尾翠 なるほどねぇ。
原あいみ でも、紙とペンはなくならないと思いますけどね、絶対に。
松尾翠 紙とペンの良さもあるし、紙で読む絵本の良さもあるし、でも便利なものを使いながら、進歩していくんですね。なんか、すごい参考になりました。
そっか、それじゃそれで描いていて、新刊はいつに?
原あいみ 2月発売を目標に今頑張って描いています!
松尾翠 でも、こうやって作と絵を分けていると、分業じゃないけど一人で全部ってペースでもないし、これが仕上がって次これってバトンをもらってっていう流れだから。
原あいみ そうなんです。にこちゃんは文章をケロポンズさんが作ってくださっていて、
松尾翠 エビカニクスで有名な!
原あいみ そう!ケロちゃんとポンちゃんが書いてくださっているんです。なので最初は全員で打ち合わせというか、みんなで顔をつきあわせてこんなの作ろうねってやるんですけど、その次はケロちゃんとポンちゃんが、お話を書いてくださって、こんなページでこんなコマ割りにしようっていうところまでを作ってくださり、そのバトンでいただいて、私が簡単な絵を足していきます。「いやあ、こことここは1枚で入れちゃいませんか?」とか、そういう絵の部分を私が描いて、また戻して、みたいなやり取りをしながら、アイディアがどんどん出てきて、最終的に仕上がるっていう感じですね。
松尾翠 へええええ。いつもの絵本以外のお仕事をするときと、また全然違いそうですね。
原あいみ そうですね。こうやって一緒に作っていくっていう感覚が、おにのこにこちゃんは強い気がしています。
松尾翠 そうすると、あいみさんは、できた作品は我が子みたいじゃないですか。
原あいみ 顔も我が子です(笑)
松尾翠 爆笑!ね、顔も我が子だし、作る過程ももう子育てみたいな、我が子だしって。
原あいみ 絵本は結構じっくり時間をかけて作るので、普段やっている、例えば広告の仕事とか、そいういったものはもっとギュッと短時間で作るんですよね。
松尾翠 じゃあ、その時間の流れも違うんだ。
原あいみ 絵本はやっぱり丁寧に時間をかけて作っている印象です。
松尾翠 そっか、だから絵本って、その一瞬通り過ぎるだけじゃない魅力となんかこう、魔法の力みたいなものを持っている気がしてて、30年経っても家にあったりとか、ね、そこには皆さんの想いがかなりのっているんですね。
原あいみ うまくいけば、本当に「ノンタン」みたいに、もしかしたら30年経って、「にこちゃん」が好きでっていう方が出てきてくれるかもしれないじゃないですか。そういう可能性がすごくあるなって思うので、やってても楽しいですし、夢もありますし。そうなったらいいなと思って、普遍的なものを創りたいと思って描いています。
松尾翠 自分の子どもは育っていくけど、新しいにこちゃんが世界に現れて、増殖して、卒業していく、みたいな。
いやあ、すごく貴重な話をありがとうございました。最後にあいみさんからメッセージお願いします。
原あいみ にこちゃんをこんなにたくさん読んでくださっているんだなあっていうのを、目の当たりにできてすごくうれしかったです。ありがとうございます。ママパパが笑顔でいるのが一番幸せだと思うので、できないこと適当に置いておいていいと思うので、自分のお子さんのこととかを面白がって、ぜひ笑顔で過ごしてください!
ひとつ宣伝なんですけど、おにのこにこちゃんはTwitterで漫画もやっていて、@nikomaruke っていうアカウントで、絵本とは違うお話をママパパ向けに描いているので、よかったら検索して読んでみてください。
松尾翠 いろんな角度から、にこちゃんとにこちゃんの家族に会えるすごい素敵な漫画なので、ぜひこっちもチェックしてみてください。
本日のスペシャルゲストは原あいみさんでした。ありがとうございました!
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