あなたのための短歌集
『あなたのための短歌集』
木下龍也 (著)
発行:ナナロク社
現代短歌というものに、少し偏見があった私は
短歌集というものにこれまで手が伸びませんでした。
小学校や中学校の教科書に載っている短歌は
当時、私の情緒も経験も不足していたせいか
少しうまいこと言ってる短いポエムくらいの認識。
それが、短歌集を読んで、まさか自分が
涙まで流すとは思いませんでした。
この短歌集は、歌人・木下龍也さんが
「あなたのための短歌1首」という短歌の
個人販売をされていたことから始まります。
依頼者からの想い(お題)をもとに短歌をつくり
封書にして届けるもので、4年間で700首の短歌が
生まれたそうです。
これはその中から依頼者の許可をとり
100首をあつめて掲載したもの。
いわば、えりすぐりの一人百首ですね。
販促用に表に出ているページの歌で
私が心に響いた歌を紹介します。
お題
いま飼っている犬。かつて飼っていた犬。そして、
実家の病気になっている老犬たち。私は犬をすごく
愛していますが、その分、いつかやってくる別れの
ことを思うと、胸がつぶれそうなほど寂しくて
恐ろしくて仕方ないです。そんな私のお守りとなる
短歌をください。
愛された犬は来世で風となりあなたの日々を何度も撫でる
私は犬を飼ったことはないけれど、猫でもインコでも
あるいは人間でも、誰しも大切な存在との別れは怖いもの。
でもこんな風に考えられたら、
少しその怖さが和らぎますね。
じんわり温かい歌です。
その他にも、心を温かくする歌、くすりと笑える歌
ブラックユーモアのきいた歌・・・・。
お題を出す依頼者の想いがあり、その想いに負けない
くらいの熱量の歌が返されている。
短歌は五・七・五・七・七が基本ですが
この短いフォーマットのなかだからこそ
とても自由に、研ぎ澄まされた言葉が歌となり
依頼者のもとに届いています。
そして、それを読ませていただいている
私たちの心までも揺さぶる。
現代短歌すごいな!
と、また新しいジャンルの本に
ハマりかけている私です。
ぜひ、一緒にハマりにいきませんか?