教育探究ひろば

教育の研究的探究をコンセプトに、毎週対話会を行なっているコミュニティです。 「教育探究ひろば」公式note。

教育探究ひろば

教育の研究的探究をコンセプトに、毎週対話会を行なっているコミュニティです。 「教育探究ひろば」公式note。

マガジン

  • ファクトと対話で考える教育

    • 54本

    教育探究ひろばが運営するマガジンです。 毎週火曜日の20:30から対話会を行なっています。 詳しくはwebサイトから!senseijuku.online

最近の記事

「教師はどのように授業中の発言機会を分配しているのか」に着目し、その権力性を検討した論文(石野,2020)

この論文では、教師の権力は、教師と生徒が共通の目的を達成するための規範によって秩序立てられた「正当的権威(Weber,1947)」だと予想する。その反対は、罰や恐怖で構築される「強制力」である。 そこで、授業中の発言機会の分配が、教師の強制によるものか、児童の了解に基づく正当的権威かを、複数の授業事例の発話分析によって検討している。 例えば、ある事例では、全員が起立し正解をしたら着席するというルールで授業が進行していた。これにより、発言が少ないと考えられる授業でも(こ

    • 子どもの問いからはじめる文学教材の授業ー問いの質の高さとその方法(内山,2023)

      0 きっかけ(レビュー者)  本論文はタイトルにあるように、子どもの問いからはじめる文学教材の授業の「問いの質の高さ」と質の高い問いをつくることができるための「手立て」について書かれている。  国語の文学教材を扱う際、多くの指導書には、最初に作品を読んだ感想(初発の感想)を書かせるという学習過程がある。では、なんのためにそれをするのだろうか。初発の感想が今後の学習過程にどのように関係するのだろうか。  恥ずかしながらレビュー者は何年も経ってからの意義を実感してきた。レビュー者

      • 文献紹介:研究に基づくADHDに関する208の結論(Faraone et al.,2021)

        「研究に基づくADHDに関する208の結論」(Faraone et al.,2021)という文書があります。こちらは、 ADHD世界連合(The World Federation of ADHD)の声明という形で、これまでの大規模研究のレビューから分かったことをリスト化し、世界の研究者366人がチェックしたものです。 内容は極めて多岐にわたり、ADHDの歴史、原因からはじまり、各研究(脳、遺伝子、神経科学、経済等)の知見を総括しつつ、診断や治療についてなど、本当に208個書

        • 教育大国長野 近代学校の黎明期を知りたい!

          こんにちは! 探究ひろばのみつです。 私は、修学旅行で偶然(雨になってしまい…)旧開智学校に行ったことがあるのですが、行ってみると、とてもきれいな建物と、当時の子どもたちの学習環境が丁寧に保存されており、高校生ながら感動した覚えがあります。 今、改めて調べてみて、長野県は教育に熱心な県として有名なようですね! 旧開智学校を始めとして、長野県には、多くの、明治初期の近代学校建築などを見ることもできます。 今回は、長野県の教育について近代学校の成立期を見た論文をベースに、長

        マガジン

        • ファクトと対話で考える教育
          54本

        記事

          ”子どもたちの遊び場” 学校では見えない放課後の遊びと子どもたちの成長を考える

          みなさんは子どもの頃、放課後どこで、なにをしていましたか? 私は、近くの公園で友達と遊んでいました。サッカーや野球、キックベースなどをしていました。 最近では、外でそうして運動したりして遊ぶことは減って、スイッチなどの家庭用ゲーム機やパソコンでオンラインで遊ぶ時代かもしれません。 子どもが外で遊ぶ文化というものが、かなりマイナーな時代を私たちは見ているのかもしれません。 こうした子どもたちの行動の変化や、その背景にある生活環境、あるいは心理的な変化を探ることで、教育学の

          ”子どもたちの遊び場” 学校では見えない放課後の遊びと子どもたちの成長を考える

          「教職調整額10%増額案」が愚案なのに提案される理由

           萩生田政調会長のもと、2024年春をめどに教職調整額(教師への給料として、残業代の代わりに支払われるもの)を現状の4%から10%に引き上げる提案の取りまとめが行われている。 これは、教師の長時間労働の問題と、教職の採用倍率の低下への対応策として提案されているものと思われる。  しかし給与を増額したからといって教師の長時間労働も、採用倍率低下も改善されるとは思えない。にもかかわらず、なぜこの提案が着々と取りまとめられていくのか、その点について考察してみたい。 問題の背景1.

          「教職調整額10%増額案」が愚案なのに提案される理由

          道徳的判断力を養う道徳授業の見方・考え方ー「再特殊化」の視点で授業を設計してみようー

          0 きっかけ(レビュー者)   道徳科の意義は何でしょうか。私は道徳的価値を通して、自身の考えを広げたり深めたりするものだと考えます。  道徳の授業は「友だちと仲良くしよう」「命は大事」「いじめはだめ」と当たり前のことを言っているだけに見えるかもしれません。そして、そんなことは授業を受ける前から子どもたちはわかっています。しかし、ここで終わりにしてしまっている授業もあるでしょう。  この授業、子どもたちは楽しいでしょうか。何か学びになっているでしょうか。また、教師も楽しく授

          道徳的判断力を養う道徳授業の見方・考え方ー「再特殊化」の視点で授業を設計してみようー

          学級における同調圧力の悪影響とは?井口・河村(2021)をもとにその実態を考える

          1.始めに みなさんは、学生時代、空気を読んでいたでしょうか? 学校現場では、子どもたちが自由に意見を発言できる場になったらいいなーと私は思うこともありますが、実際はそう上手くもいかないケースもたくさんあるようには感じてきました。 しかしながら、ちゃんと論文を読んでみなければ、その実態を確かに確かめることは難しいです。 と言うわけで、今回は、井口, 河村(2021)「学級における同調圧力がもたらす否定的側面とその改善を検討した先行研究の展望」を読んでみたいと思います。

          学級における同調圧力の悪影響とは?井口・河村(2021)をもとにその実態を考える

          対話的な学びの質を見とるには?ーアプロプリエーションという概念ー

           授業では、考えを広げたり深めたりすることを目的に「話し合い(conversation)」「対話(dialogue)」「議論(discussion)」が行われています。  しかし、「対話の質」は盛り上がりや活発さが注目されがちで、ともすれば子ども達の学びが軽視される懸念があります。  そこで今回は、「対話の質」を「子どもの学習」という視点から評価する際に有用だと考えられる「アプロプリエーション」という概念を用いた研究を紹介します。  紹介する論文の概要は以下の通りです。 

          対話的な学びの質を見とるには?ーアプロプリエーションという概念ー

          プログラミング教育「教えたい」「教えたくない」それぞれの教師の心理とは?

          始めに2020年度より小学校段階でプログラミング教育が全面的に開始されている。 「IT社会」「AI」「DX化」「ICT教育」などのワードが世の中を駆け巡る中、現役の教員たちは、そういった新しい技術の礎になるかもしれない「プログラミング教育」をどのようにとらえているのだろうか。 本記事は「プログラミング教育」についてその練度や内容についてではなく、各教員がそもそも「プログラミング教育」に対して積極的か、消極的かをベースにその要因について研究した論文を紹介する。 Web調査で

          プログラミング教育「教えたい」「教えたくない」それぞれの教師の心理とは?

          【研究紹介】ルール定着のために、教師は学級目標をどのように活用しているのか

           今回は、学級づくりにおけるルールや規範をどのように教師が導入し、定着に向けているのかに焦点を当てた研究(岸野・武藤, 2009)を紹介します。  課題設定の背景の一つとして著者らが挙げていたものに、日本特有の学校文化があります。それは、例えば米国と比較したときに、①担任教師が学業面と人間形成面の両面から子どもの成長にかかわっているということ、それから②権力を教師だけが持つのではなく、子どもと「平等的関係」を築こうとしていることだと言います。  こうした特徴は、教師が学級のル

          【研究紹介】ルール定着のために、教師は学級目標をどのように活用しているのか

          研究紹介「理科における問いが生まれる思考プロセスとは?」

          今回は、理科学習における問いが生まれる思考プロセスに関して検討した研究(吉田・川崎,2019)を紹介する。 研究の背景理科の学習において、問いを持つことは極めて重要だ。 なぜなら、問いに対峙し、その問いに答えようとする探究過程が、深い学びを生み出す源泉であると考えられるからである。 しかし、問いは突如として現れるものでも、教師から提示されるものでもない。 むしろ、問いが形成される背後には、学習者が抱く素朴な疑問や、それに対する反芻など、疑問から問いへの思考プロセスが存

          研究紹介「理科における問いが生まれる思考プロセスとは?」

          【埼玉教員超勤訴訟についての私見】

          1. 本裁判の意義は問題提起 本裁判は元埼玉県教員の田中まさおさん(仮名)が埼玉県に対して残業代240万円の支払いを求めて起こした訴訟である。この「240万円」という額にもかかわらず、3人もの弁護士がつき、事務局がメディアで発信し、最高裁まで上告するような裁判となっているのは、まぎれもなくこの裁判の目的が「社会に向けた問題提起」だからである。  その目的に鑑みれば、本訴訟は極めて意義深かったといえる。例えば、一審のさいたま地裁では判決文の最後に以下のような文言が付言されている

          【埼玉教員超勤訴訟についての私見】

          教師の長時間労働は何が原因なのか?―埼玉教員超勤訴訟の判決文から考えるー

          解説youtube :https://youtu.be/NKjS9b9KuBY 今回は、埼玉県教員超勤訴訟の裁判資料を読むことを通して、教員の勤務時間について、残業について司法がどのように判断したかを見てみます。 また、判決後に一層熱を帯びてきた給特法改正の取り組みや、その点に関する識者の考えを紹介し、教員の勤務時間に関して一体何が問題なのかを考えます。 判決文を読むと、裁判所側も教員の超過勤務の実態を認めつつも、それを残業として認めることや残業代を支払うことは難しいとい

          教師の長時間労働は何が原因なのか?―埼玉教員超勤訴訟の判決文から考えるー

          【今夜開催!】データ・資料を読む会 「文科省答申-令和の日本型学校教育の構築を目指して-」

          対話の先生塾の【コミュニティ限定】オンライン対話会 こちらのイベントは、 対話の先生塾のプレミアム会員向けのイベントですが、 ・会員になる前にどんな雰囲気なのかを知りたい ・毎週参加するほどではないけれど、このテーマだけはどうしても参加したい などのニーズにお応えする形で、 どなたでもスポット参加を"何度でも"していただけます。 ◉スポット参加費 500円(税込) (クレジットカード・コンビニ払い等に対応しています。) ◉テーマ 教育データ・資料を読む会 ◉資料 文科

          【今夜開催!】データ・資料を読む会 「文科省答申-令和の日本型学校教育の構築を目指して-」

          再生

          【記念すべき10回目】学校の組織開発を考えよう Vol. 10

          #先生 #オンラインサロン #コミュニティ #対話 #教育 教育を対話でつくるオンラインサロン「対話の先生塾」 22022年7月22日 学校の組織開発を考えよう こちらは、事務局長「にい」が元小学校教員で現在は一般社団法人かたりすとでお仕事をされている 「ハル」さんと一緒に、学校の組織開発について考えていく ラジオのようなコンテンツです。 この動画は ・学校の組織開発について知りたい人 ・学校のミドルリーダーやミドルリーダーを目指している人 ・これからの教育をより良いものに変えていきたい人 におすすめです。 毎週のオンライン対話会にも参加したい たくさんの教育関係者と繋がりたいという方は、 ぜひ会員登録をお願いします。 ▼対話の先生塾HP 毎週火曜日21時から、Zoomを使って、世界中の教員や、教員を目指す学生、教育関係者など、多様で多彩なコミュニティメンバーと対話を続けています。 https://senseijuku.com ▼会員登録をお願いします。 フリー会員になると、毎月最終週のオンライン対話に参加することができます。URLはLINE公式アカウントにてお知らせてしています。 https://lin.ee/dEonyLQ プレミアム会員になると、毎週のオンライン対話に参加できるだけでなく、200名近くのコミュニティメンバーとSlackで繋がることができます。 https://onl.tw/aZ4PxwU ▼その他各リンクはこちら よくご覧になるSNSのフォローをお願いします。 https://linktr.ee/senseijuku

          【記念すべき10回目】学校の組織開発を考えよう Vol. 10

          再生