48/1,000冊目 アレクサンドラ・ホロウィッツ(著) 『犬から見た世界: その目で耳で鼻で感じていること 』
アレクサンドラ・ホロウィッツ(著) 『犬から見た世界: その目で耳で鼻で感じていること 』
概要
犬はその鼻で何を嗅ぎ、その目でどんな風景を見、その耳で音をどのようにとらえるのだろう?そんな素朴な疑問に応えるべく書かれた本。
感想
翻訳のみならず、おそらく原文も読みにくい。それでもなお、科学という、バイアスをできるだけ排除しようと努めた視点から見る「犬の世界」を知る喜びと驚きを得ることができました。
多くの犬のしつけに関する著名な言説にある、ちょっとした盲点(ときにはクリティカルな)が存在していることを、頭の片隅においてくれる著書で、読みにくさ、冗長さ、翻訳の拙さにも関わらず、犬とともに生きる人々には有益な情報だと思いました。
この本を読んで以降、犬と散歩するときには、よく匂いをかぎ、温度を感じ、音や気配を探るよになりました。また犬が執拗に匂いを嗅ぐ行為を中断させず、好きなだけさせ、そしてその様子をよく観察するようになりました。
本書に何度もでてくる環世界(ウム・ヴェルト:ドイツ語のUmwelt)という言葉は、わたしたちの視点を主観から逸脱させてくれるもので、これは犬と人間の関係のみならず、人間の世界においても有用なものでした。
犬は広く言われているような「群れをなす動物」であるということが間違いであることを強く主張されていました。犬の進化の過程を用いて、その理由を詳らかに説明されています。
それでいながらも、わたしはシーザー・ミランが説く犬が群れで行動することメリットもまたあるように考えています。犬もまた犬と接することで相対的なスタンダードやルール、また自分が世界のどこにいるのか、を認知していくように思えるからです。
この著書では、犬と如何に暮らしていくべきか、という示唆は示されません。しかし犬の世界とはどのようなものか、ということを知ることは、犬と人間の関わり合いを形成する重要な基盤になることでしょう。
読みづらいけれど、良書。
アレクサンドラ・ホロウィッツ(Alexandra Horowitz)
アレクサンドラ・ホロウィッツは犬の観察を生業としています。彼女の研究は20年以上前、犬の遊びを研究することから始まり、現在もバーナード・カレッジのDog Cognition Labで続けられています。著書に ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー第1位となった『Inside of a Dog』(2009年)(本書)のほか、4冊の著書があります。ニューヨークでホモ・サピエンス、イヌ科の動物、ネコ科の動物の家族と暮らしています。
ウェブサイトはこちら: alexandrahorowitz.net