民俗信仰収集 #004
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佐賀県佐賀市の乙文殊宮、「もいっさん」についてです。
文殊菩薩をお祀りする乙文殊宮は下宮と上宮に分かれており、学問の神様として各種受験生などが合格祈願に訪れる神仏習合のお宮であり寺院です。下宮は普通の寺社と何ら変わりないのですが、上宮、通称「落書き堂」はなかなかの情念の塊を体感できる建物です。
とにかく内壁外壁天井関係なく落書きでびっしりと覆われ、どんどん更新されていくというかなりの直接的祈願方法を見ることができます。
いつ誰が何のためにこのお堂に落書きを始めたのかは分かりませんが、少なくとも100年近く前には既に落書きが始まったようです。
最近始まったが起源や理由が定かではない風習というのはよくありますが、この乙文殊宮の場合も「なぜそうするのか」に焦点を当てるよりも「どうしたら願いを叶えられるのか」という極めて実利、機能に着目した祈願方法です。
肥前古跡縁起によれば次のように記されています。
軽い気持ちで下宮でお参りを済ませ上宮に向かったのですが思ったよりも急で険しい道です。
途中巨石がありますが、これはこの辺が江戸時代に石丁場だったことに由来します。多くの矢穴が打ち込まれた石など当時の石丁場の雰囲気をそのまま残しています。
やっとの思いで「落書き堂」にたどり着きましたが遠目で既に落書きが何かの模様に見えてきます。近くに行くと賽銭箱から何から何まで落書きだらけです。思っていた数倍の密度で落書きされており、どんどん上書きされていくさまを見ることができます。今日はまた違った落書きが増えているのでしょう。
本殿裏には御神体とされる巨石と観世音菩薩像、弘法大師像がありますが、巨石や観世音菩薩にもうっすら落書きの跡が見えます。
下宮に戻りいろいろ見ていたらお堂の中の石仏も黄色いペンキの跡がありましたがこれも祈願の落書きでしょうか、真相は分かりません。
今回は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。