さよならGくん


筆者と姉、自宅前にて。G君と遊んでいた頃。


小学校4年生のクラス替えで、学年で1番の悪ガキのGくんと同じクラスになった。

ケンカが強い、顔が恐い。挨拶がわりに
「山田100円おごれッ!」1番乗りで童貞卒業。 
大長編ドラえもんで、漢気や優しさを見せるジャイアンの方がよほどマシだ。

弱いものイジメは決してしないヤツだったが、いいヤツではなかった。
だけど、目が綺麗だった。茶色に薄紫が少し混ざったような。
そしてGくんと過ごした夏こそが僕にとって最高の夏休みになった。

毎日クワガタを獲りにゆき、ファミコンがオーバーヒートを起こすまでドラクエをやり込み、河川敷でバーベキューの跡に枯れ木をぶち込んで、盛大に燃やして先生にぶん殴られた。
爆音のラジカセで男闘呼組の『TIME ZONE』を何度も何度も一緒に聴いた。

小5になり違うクラスなって彼はどんどん大人になっていった。中学生になってGくんはヤンキー街道まっしぐら。隣町の中学生とケンカしただとか、〜さんとヤッたとか色んな噂だけが耳に入ってきた。僕は子供のままだった。仲が悪くなった訳ではないが僕らはあまり付き合わなくなった。

そんな彼と2年程前に再会したのだ。僕らは39歳になっていた。

両親に結婚の報告をしにお盆に帰省した折だった。

嫁さんを連れて夏の朝に近所を散歩した。

ここは〜君の家だ、ここで〜ちゃんがパン屋をやっているんだ。そしてここが、学年最強の男、いや男闘呼。Gくんの家。。。

あれ、なんか凄く体の大きい人がしゃがんで虫かごをい
じっている。僕は思わず

「おーい、G!」と叫んだ。

チラッとこちら一瞥、無視された。

声か顔か、彼の記憶の片隅に僕は居たのだろうか。
顔を上げて「ん?、山田ァ?」

一度だけ目が合った。かなり太っていて、歯がなかった。が、相変わらず目は美しい薄紫だ。
虫かごに目をやり、

「これな、クワガタ近所のガキ共に分けてやるんよ」
「そっか、よく一緒に獲りに行ったよな」
「山田、今何しとるが?」
「東京で働いとる」
「ふぅん、やるじゃん」

それっきりGくんは下をむいて何も喋らなくなった。

「じゃあ、行くわー」

「おう」

僕は本当は
「お前と過ごした夏休みが1番楽しかったよ」
と言いたかった。

さよならGくん。

君はいつまでも僕のヒーローだ。
君の幸せを願っているよ。

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